研究テーマ

「良品計画社員と学ぶ寄付先団体の活動」第37回 放課後NPOアフタースクール×良品計画 放課後を変えると、子どもたちが変わる

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第37回は、子どもたちが安心して過ごし、楽しく学びを得られる放課後の実現をめざす放課後NPOアフタースクールさんにお話をお聞きしました。

自分らしく生きる力を、放課後に学ぶ。

ゲーム、学習塾や習い事にインターネット。放課後を一人で過ごすことが多くなっていく一方で、犯罪に巻き込まれるニュースが後を絶たないのが、現代の子どもたちを取り巻く状況です。放課後の居場所がないことで、子どもたちはコミュニケーション力や創造力を養ったり、自分を表現する大切な機会を失っています。また、子どもを安心して預ける場所がないため、共働きの親御さんは生活を変えなければならないことも。子どもにも親にも、自分らしく生きる道を開く。そんな理想の放課後とは?

プロフィール

放課後NPOアフタースクール

放課後NPOアフタースクールは、放課後に子どもたちが安心して楽しく参加できる体験プログラムを、企画・運営するNPOです。「社会で子どもを育てる」をコンセプトに、学校や行政、企業と連携して、多様なプログラムを提供しています。2005年に東京都内を中心として活動を開始し、現在は全国に活動が拡大。各分野に精通した「先生」による本物の体験と、安全・安心な場の提供の両立をめざして活動を行っています。

放課後NPOアフタースクールについて詳しくはこちら

  • 秋山千草さん

    放課後NPOアフタースクール
    事務局スタッフ

    1989年東京都練馬区出身。学生時代に海外を訪れたことをきっかけに日本の次世代教育の必要性を感じ、放課後にその可能性を見いだす。2011年、卒論で「放課後の子どもたちの過ごし方」をテーマに活動する中で「放課後NPOアフタースクール」に出会い、ボランティア・インターンとして活動を始める。2012年國學院大学文学部外国語文化学科卒業とともに入職、現在に至る。

  • 田中信孝

    良品計画
    販売部 東京西エリアマネジャー

    1996年入社。横浜や青山、京都など各地の店舗に6年間ほど勤務した後、生活雑貨部の寝具やカーテン、クッション、ラグなどのファブリック関連商品の開発担当者として約8年携わる。その後、再び店長として東京ミッドタウンやルミネ新宿での店舗勤務を経て、九州地域のエリアマネジャーに着任。2014年より現職。無印良品は「発見」がある、そんな店舗を目指しています。

  • 間野弘之

    良品計画
    宣伝販促室 販促課

    1999年入社。店舗業務を経験後、企画室を経て宣伝販促室に配属。主に、店舗の営業展開計画の作成や販促物の制作、さらに日本各地のものづくりや取り組みを発信する「MUJIキャラバン」の活動もサポート。この活動の中で出会った生産者の皆さんが作る品物を、ネットストアでも購入できるしくみ『Found MUJI Market』の立ち上げと運営も担当。

子どもたちの自己肯定感や、チャレンジ意欲を育てたい

アフタースクール、全国で!

田中:放課後NPOアフタースクールさんのサイトにはさまざまな放課後プログラムが掲載されていて、なんだか楽しそうというのが第一印象です。でも、もちろん楽しいだけの取り組みではなく、現代の子どもの抱える問題に真っ向から向き合っていらっしゃいます。

秋山さん:きっかけは、今の子どもたちの「自信がない」「やったことないからやりたくない」といった自己肯定感やチャレンジ意欲の低さに危機感を持ったことと、小学生になると放課後に子どもを預ける場所が少ないということでした。「なんとか解決したい」と代表の地元である、世田谷の小学校で出前授業を行ったのが始まりです。学童保育(以下、学童)については、ご存じですか?

間野:放課後の小学生を預かる施設ですよね。私には息子がいるのですが、学校へ行ったあとに通っています。

秋山さん:私たちの運営するアフタースクールは、"いろいろな体験ができる学童"に近いイメージです。学童のような安全安心な預かり機能を備えつつ、より多様なプログラムを提供しています。学童は年齢制限や保護者の就労条件など、受け入れに規制がある場合も多いのですが、アフタースクールはどんな児童にも門戸を開いています。

田中:学童に比べて、より柔軟なプログラムを提供されていますよね。学童は通常、行政が運営していると思うのですが、それも影響しているのでしょうか。

秋山さん:私たちは、多様なプログラムを実施するのに、学校施設をフル活用しています。これが、通常は結構難しかったりします。また、子どもたちの安全管理の一環として保護者の方と「何時に帰りましたよ」といった連絡をとったり、学校の先生と情報共有して授業中のトラブルを放課後にフォローするなど、各ご家庭や学校との連携を大切にしています。このあたりは私たちならではかもしれません。

間野:それはとても心強いですね。安全面もそうですが、学校での子どもの様子も親としてはやはり気になってしまうので。

「3間(さんま)」が失われた、今の子どもたち

間野:子どもたちのチャレンジ意欲の話がありましたが、何が低下につながったのでしょうか。私の息子は小1なのですが、新しいことに挑戦するとき、確かにハードルの高さを少し感じているようです。

秋山さん:以前の日本は、子どもたちが地域の大人からほめられたり、教わったりすることがふつうにありました。でも今は、なにか失敗したり、家族や学校の先生に怒られたときに、フォローする大人がほかにいないため、どうしても逃げ場がなくなってしまう。それが自己肯定感の低下につながっているのではないでしょうか。だから、私たちのコンセプトの一つに「社会で子どもを育てる」というものがあります。私たちが「市民先生」と呼んでいるプログラムの講師を始め、多様な大人と触れ合うことで子どもたちの成長が豊かになると考えているからです。

田中:地域のコミュニケーションが希薄になっていることを改めて実感します。

秋山さん:子どもの連れ去り事件もニュースで度々耳にしますし、地域の安全性に不安をもつ保護者が多くなっていますね。

間野:確かに子どもだけで遊ぶということは、今は少ないんじゃないでしょうか。週末も、子どもが一人で友達のところに遊びに行くなんてことはほとんどないです。

田中:え! 「○○くん、遊びましょ」って家に呼びに来るとかないんですか?

間野:めったにないですね。

秋山さん:そうなんですよね。あまり聞きません。

間野:だから学童があれば、友達と遊ぶ機会がようやくできる。逆に言えば、友達と遊ぶ機会が失われてしまうと、家で一人でゲームをするしかないですから。

秋山さん:子どもたちを取り巻く環境から「3間(さんま)」が失われたと、よく指摘されます。「時間」「空間」「仲間」の3つの「間」です。塾に追われて時間がない。数少ない公園は「ボール遊び禁止」などのルールに縛られ、自由に遊ぶ空間として機能しない。少子化で兄弟がいなかったり、友達がみんな忙しかったりと、遊ぶ仲間がいない。こういった環境をどう変えていくかは社会全体で考える必要があります。

放課後のプログラムを、忘れられない経験に

間野:放課後NPOさんが運営するアフタースクールの一番の特徴は何でしょうか。

秋山さん:市民先生による多彩なプログラムです。アフタースクールの先生は、地域の方もしくは一流のプロの方にお願いしており、ジャンルは問いません。料理人や建築家、アーティストといった方々を市民先生によび、各分野に合わせた内容を企画して、いろいろな体験を子どもたちに提供しています。やっぱり、プロに対する子どもたちの目の輝きは全然違いますね。

田中:サイトを見ると、大人でも受講したいようなプログラムがたくさん並んでいますよね。どうやって先生になってくれる方を探されているのですか。

秋山さん:決まった方法はないんです。スタッフの知り合いや、知り合いの知り合いといった、人のつながりで依頼することも多くあります。意外にそれでも見つかるんですよ。ほかの方法ですと、直接お店へ出向いてお願いすることもあります。お支払いできる謝礼は些少なのですが、ありがたいことに、「子どもたちのために」と引き受けてくださることがほとんどです。

間野:企業が先生になることもあるんですよね。

秋山さん:はい。製菓会社さんがお菓子開発のことを話されたり、金融関連企業の方が模擬商店を子どもたちと出店したり。それぞれの企業の特徴を活かすことを意識して、プログラムを開発しています。

田中:無印良品だとモノづくりの先生になれるかな?

秋山さん:ぜひお願いしたいです。「モノづくり」は子どもたちの発想力がすごく発揮されるプログラムです。子どもたちは、いつもプロの先生も驚き、参考にしたくなるような発想をするんです。プログラムでは、まず子どもたちが興味を持ち、体験を通じた学びに夢中になる。その後、「ぼくはこんなものをつくったんだ」と自己表現することで喜びにつながり、忘れられない経験になれば、といつも願って活動しているんです。もっと言うと、そこから将来の夢が見つかれば最高ですね。