研究テーマ

社会貢献を知ろう!「良品計画社員と学ぶNGO・NPOの活動」第51回 Nature Saves Cambodia-Japan×良品計画 カンボジアの地雷原を、希望の綿畑に

綿畑の広がりが、笑顔の広がりに

岡本さん:十分な賃金を出すにはまだ時間がかかってしまうかもしれませんが、家族とともに生活ができて、そのうえで安定した収入を提供できれば、それに越したことはないと考えています。畑が増えれば働きたいという方は、まだまだたくさんいらっしゃいますから。

山谷:今は畑のスペースの関係で、働く人をある程度制限している、という状況ですか。

岡本さん:そうですね。種蒔きや草むしり、収穫とかは手伝ってもらうのですけれども、そういった人々全員に安定的に収入を提供するのは、まだ私たちとしては難しいです。それは単純に、畑の広さと収穫量の問題からです。

倉本:畑を広げるというのは、開墾したい土地の地雷を除去してもらうことから始まるのでしょうか。

岡本さん:その前に、まずは土地を買い取る必要があります。土地を確保して初めて、地雷除去を依頼することができる段階に進めます。そのため、畑のスペースを広げて、コットンの収穫量と雇用できる人数を、同時に伸ばしていくことが、私たちの活動における基本的な広がりですね。

山谷:色々なオーガニック・コットン製品をつくられていますが、今後はそちらの広がりも視野に入れているのでしょうか。

岡本さん:おっしゃるとおり、そういったものを生産していくことも大切ですし、生産量が増えていくことで雇用にも繋がっていきます。ただ、工房での製品づくりはオーガニック・コットンの生産そのものとは、持っている役割が少し違います。製品は、私たちの活動を知ってもらうための、手紙のような役割を担っています。

倉本:なるほど。確かに原料の状態だと、なかなか一般の方々には伝わりにくいですものね。実際に製品になって手に取ってもらうことで、現地で紡がれたオーガニック・コットンのストーリーが伝わることを期待しているのですね。

岡本さん:はい。やりたいことは山ほどあるのですけれど、やはり基本的には地雷を除去した土地を広げていって、それに伴って雇用を増やして・・・という広がりを重視しています。それが、結果的にいちばん笑顔を増やすことができる手段だと考えています。

カンボジアを肌で感じられるスタディ・ツアー

山谷:以前からボランティアのツアーに行きたいと考えていたので、スタディ・ツアーのことを知ってからとても興味を持っています。今回、8月のスタディ・ツアーには何名ほどの方が参加されたのですか。

岡本さん:人数は10名前後です。年齢や職業は本当にバラバラですね。途上国に興味のある学生の方や、織物に興味を持って参加したという方もいました。仕事でオーガニック・コットンを扱っている方ももちろんいらっしゃいます。

倉本:8月のカンボジアは、雨期を迎えますね。

岡本さん:はい。そのため、雨期に合わせた種蒔きを行ってきたのですが、これがなかなか大変な肉体労働なんですよ!逆に、乾期の1月は収穫の時期になるので、綿を摘むのですが、これは楽です(笑)。手を添えるだけでポロッと取れます。次々に花が咲き実を結び、白い綿が弾けます。芙蓉に似た綿の花はすごく綺麗なんですよ。

山谷:ぜひ見てみたいです。農作業も含め、現地の人々の実生活を体験できるということですよね。

岡本さん:はい。そのために、糸紡ぎや、布を織ることも体験してもらっています。私たちのスタディ・ツアーでは、最初に必ず全員が、糸紡ぎと、ハンカチを1枚織ることを体験するのですよ。

倉本:小さいハンカチ一枚を織るのに、どれくらいの時間がかかるものなのですか。

岡本さん:だいたい30分ぐらいで、小さいハンカチが1枚出来上がります。糸紡ぎ体験をして、布を織って、畑で農作業をして・・・という一連の流れを体験すると、現地の人の生活とものづくりの繋がりが、実感としてわかっていただけるのではないかと考えています。ものづくりの向こうに人がいると実感してもらうことが、すごく大事なんじゃないかなと。

山谷:今はハンカチなら数百円で買える世の中ですが、そういう体験を通じることで、捨てられないアイテムになりますよね。

岡本さん:そうですね。ボロボロになるまで、取っておくことになると思います。

山谷:ボロボロになっても、フレームに入れて飾りたくなるような。たぶん私は、捨てられないと思います(笑)。

岡本さん:そういう方は、ぜひスタディ・ツアーにいらっしゃってください(笑)。

人々の想いを繋げていく「希望の綿畑」

倉本:今後の活動における展望というのは、いかがでしょうか。

岡本さん:まず、綿から種を取るジニングという行程をオーガニック・コットンに相応しいやり方で機械化し、輸出に結び付けることが直近の目標です。中・長期的な展望としては、もう少し幅を広げて、色々な方に関わってもらうのが目標のひとつですね。スタディ・ツアーなどで、たとえばですが、医療関係の方に地雷被害者の現状を知っていただければ、何かが動く可能性もあるのではないかと、使いづらそうな義足を見ながら思ったりします。色んな人にカンボジアの今を知ってもらうことが、当面のテーマです。

山谷:長く活動を続けられていると、カンボジアの様々な変化も、肌で感じますよね。

岡本さん:大きな変化として、最近ではカンボジアの若い人たちの中に、勉強をがんばってリーダーシップを取っていこうという熱意を持った人が増えてきたように感じているんです。ツアーのガイドを何度かお願いした若い男性がいますが、彼は孤児院で育ちツアー会社で働きながら夜間の大学を卒業して、今は独立の準備を進めています。現地のリーダーが育っていくことは、今後のカンボジアにすごく大切なことです。

倉本:カンボジアを変えたいと思って努力をしている若い方たちが、少しずつ増えてきているように私も思います。彼らのエネルギーは、目を見張るものがありますよね。

岡本さん:ええ。もちろん私たちの活動現場も見てほしいのですが、スタディ・ツアーでは、懸命に努力しているカンボジアの若い人たちとも会ってほしいですね。「地雷除去地の畑に行って、工房に行って、こんな人たちに出会ったよ」という。そういう出会いこそが、カンボジアを知ってもらうためには大切です。

山谷:パンフレットに書かれていた、「綿畑であいましょう」という言葉、素敵ですよね。助けに行くとか、寄付をするということではなく、会いに行くというのが、ご活動にすごくぴったりな言葉のように思いました。

岡本さん:ありがとうございます。私たちはカンボジアを「支援してあげている」という気持ちでは決して活動していません。むしろ、教わる部分の方が多いぐらいです。カンボジアという国には、色んなことを学べる素敵な場所がたくさんあって、そして同時に、そこで地雷や貧困に苦しんでいる人が多く生活しています。そういう人々に出会ったことで、助けたいと思った人が行動を起こし始めているんです。「希望の綿畑」で、そういうたくさんの想いを繋げていくことができれば、関わった人みんながいい方向に向かうことができるのではないかなと考えています。

対談を終えて

倉本:現地の人たちの目線で、「雇用」という必要なものを生み出していくという手段を取られていることを、とても素晴らしく感じました。「自分にも何かできるだろうか」と考えることはあっても、実際に行動を起こすのは、なかなか難しいことです。しかし今日、岡本さんからお話を伺って、カンボジアで暮らす人々の笑顔や優しさの尊さをあらためて考えさせられ、私も行動を起こしたくなりました。気持ちが伝わることで、支援をする人の輪は広がっていくし、寄付をしよう・現地に行ってみよう、という行動の深まりにも繋がるのだなと、教わることができました。

山谷:ホームページを拝見させていただいたときに、地雷を撤去してコットン畑にされているというご活動のイメージはしていましたが、具体的に現地の様子や危機的状況のお話を聞くことで、概要だけではわからないものを教わることができました。とても貴重な機会をいただけたことに感謝しています。「してあげる」という支援ではなく、支援されている岡本さんご自身もカンボジアに求めているものがあって、お互いに「いい暮らし」を守っていきたいという想いに、すごく共感しました。スタディ・ツアーへの参加を、真剣に考えていきたいです。

Nature Saves Cambodia-Japanは、2015年8月25日から2016年2月23日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
115人の方から合計74,660円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。
実施中の募金券はこちら