オルタナティブスクールって何?
もうひとつの学校
いきなりお尋ねしますが、「オルタナティブスクール」という学校があることをご存知ですか? 英語で書くと「Alternative school」、日本語に訳すと「もうひとつの学校」とでもなるのでしょうか。何に対して「もうひとつ」なのかというと、それはいうまでもなく日本にある普通の「学校」です。
実は日本で「学校」と呼べるのは、文部科学省が一定の基準を満たしているとして認可したものだけに限られるのです。「学校教育法」の第一条で規定していることから、「一条校」などともいわれています。そう、「オルタナティブスクール」とは、文部科学省の認可を受けていない、独自の教育方針にのっとった学びを子どもたちに提供している学校のことなのです。
「文科省の認可がない」といっても、決して怪しいものではありません。たとえば、外国人の子女が通っているインターナショナルスクールやアメリカンスクールなどもオルタナティブスクールの一部。また、ドイツから世界に広がった「シュタイナー教育」、オランダで実践されている「イエナ・プラン」、アメリカ発祥の「サドベリー教育」などを提供している教育機関も、オルタナティブスクールです。そして、少数ながらこの日本にも、上記のような教育理念にもとづいて学びを提供している学校があり、そこに通っている子どもたちがいるのです。
オルタナティブスクールへの通い方
さて、ここでひとつ疑問が浮かびませんか? 日本には義務教育の制度があり、小学校・中学校は文科省が認可した「学校」に通わなければならないと決まっているはずです。この日本で、子どもがオルタナティブスクールに通うことは可能なのでしょうか?
結論から言いますと、今の法律でも十分に可能です。国が決めた「一条校」に必ずしも通う義務は子どもにはありません。義務教育に関する法律的な解釈については8月15日公開のブログで書きましたので、そちらを読んでいただくとして、ここではわが家の場合を例に挙げ、具体的な通い方をご説明しましょう。
わが家の場合、息子は小学校2年まで公立小学校に通い、3年の春からオルタナティブスクールに「転校」しました。学校に初めて転校の意志を伝えたとき、当然のごとく「待った」がかかりました。「義務教育違反」になるので認められないというのです。それでも私たちは校長にかけあい、「これこれこういう理由で別の学校に通いたい」と告げました。すると校長は「自分では判断できないので教育委員会に行ってほしい」といい、私たちは地元の教育委員会に出向いていって、転校の許可を仰ぎました。当然ここでもすんなりとは受け入れられませんでしたが、「公立学校に戻れるようになったら戻ります」という条件付で、地元の小学校に「学籍」を置いたまま、オルタナティブスクールに通う許可をいただきました。その後、もちろん公立校に戻ることはありませんでしたが……(笑)。
文部科学省の解釈
ところで、うちの場合は途中からの「転校」でしたが、小学校の最初からオルタナティブスクールに通うことはできるのでしょうか。実はこの件について、私はとあるイベントの席で文部科学省の担当官に尋ねたことがあります。残念ながら、答えは「ノー」でした。小学校の最初から無認可の学校に通うことはまかりならぬと。ところが、この回答にはグレーな部分があって(文科省の人も認めていましたが)、小学校の初めから不登校になっている場合は、オルタナティブスクールへの転校が認められるケースもあるのです。不登校とは30日以上学校に通っていない状態をいいます。つまり、極端な話、いったん小学校に入学して学籍をそこに置いたまま、30日間子どもが学校に通わなければ、自動的に不登校になるのです。そうなれば2016年に成立した「教育機会確保法」で認められたように、学校以外の学びの場に通う可能性が開けてくるのです。そして実際に、このような形で最初からオルタナティブスクールに通っている子どももたくさんいます。原則的には「不可」ですが、実質的には「可」となるケースが多いのです。
多様な学びを選べる時代へ
日本には、いま約2万校の小学校があります。うち99%が公立小学校で、私立小学校はわずか1%ぐらい。で、オルタナティブスクールはというと、全国でも数十校ほどしかないのではないでしょうか。つまり、日本のほとんどの小学校が、文部科学省が決めた学習指導要領に沿って同じ学びを提供しているのです。これだけ世の中で「多様性」の大切さが叫ばれ、社会が「多様な人材」を求めているというのに、人を育てる「学校」がキンタロウ飴のように一律というのは誠におかしな話です。 今後、このブログで少しずつ紹介していきますが、オランダなどでは独自の理念に基づく学校を自由に創ることができ、国民は当たり前のようにそれを選べるようになっています。日本でも一刻も早く、子どもの個性に合った学びの場が選択できるようになればと願うばかりです。
※オルタナティブスクールについては、2015年1月21日公開のコラム「もうひとつの教育」でも紹介しています。
(イラスト:中田晢夫)