乾物を考える
冬の初め、新聞に「白いカーテン」と題した写真が載っていました。沢庵漬けにするための大根を何十本も竿にかけて干している風景。ちょうど同じ時季、家の軒先に吊るされた干し柿は「オレンジ色の玉すだれ」のようにも見えます。以前のコラムでご紹介した「緑のシェード」は日陰をつくるための知恵でしたが、干し大根や干し柿は、他の乾物同様、お天道様の恵みをいただくための知恵と言えそうです。
「干す」という知恵
もともとは長期保存のために水分を抜いたのが乾物ですが、食べてみると、生のもの以上の旨みや滋味(じみ)に気付きます。食べ物を干すことで太陽と風のチカラが加わり、そのもの本来の旨みが濃縮されるのでしょう。いま話題の「干し野菜」も、そのひとつ。干し柿などはその最たるもので、干すことによって渋が抜け、深くやわらかな甘みが出てきます。面白いもので、吊るし柿が渋い間は野鳥も近寄りませんが、甘くなると、ちゃっかりつまみ食いに来たりするそうです。
乾物活用がもたらすもの
コラム「保存食は非常食?」で乾物のことを取り上げたら、たくさんの声をいただきました。乾物愛好者は予想以上に多く、「自然のインスタント食品」ととらえて、普段の生活の中で上手に使いこなしていらっしゃるようです。
乾物を使っている方の共通した感想は、「使う前は面倒かと思っていたが、使ってみると意外と簡単」「おいしい」「楽しい」というもの。手づくりのおいしさ、無添加の安心、手仕事の喜び、つくる過程での楽しみなどなど。乾物を使うことによって得られる幸福感を語る方が多いのが印象的でした。食に心をかけ、ちょっとした手間をかけることで、日々の暮らしが豊かになっていくようです。
乾物を使いこなす
投稿では、ダシをとったり煮たりという伝統的な使い方のほか、皆さんがさまざまに工夫して乾物ライフを楽しんでいらっしゃる様子がわかりました。
その中から、いくつかご紹介すると......切干し大根をサラダに、ひじきをスパゲッティや味噌汁の具に、高野豆腐を肉代わりに、鰹節を粉末にして自家製ダシの素に、ダシをとった後の昆布で佃煮を、などなど知恵のあるアイデアがいっぱい。日々の食事を考えるということは、その人の生き方にもつながってくるのかもしれませんね。
一方、乾物は好きで使っているけど、保存や収納が小さなストレスになっているという声もありました。取り出しやすく片付けやすく、すっきり並べられる容器が見つからないとのこと。また、前回コラムの「目につく場所に置きましょう」という提案に対して、「変質が怖いから目に付くところには置けない」というご意見もありました。
みなさんは、どんな風に乾物を使いこなし、どんな風に保存・収納していらっしゃいますか? 一緒に考えていきたいと思います。