支援活動を行う側にも葛藤はつきものです
永澤: そうなんですか。日本人が現地に単身で・・・。想像するにとてもたいへんですよね。相当なストレスにさらされるのではないでしょうか。
堀江さん: 私たちの支援が必要だということは、そこに困難な状況があるからなので、現場に入っていくには苦労はつきものですね。文化や風習の異なる、インフラの整わない、衛生環境の悪い、治安も良いとは言えない現場での活動に伴うストレスはやはり小さくありません。
永澤: しかも、状況はいっぺんに改善できないでしょうから、粘り強く続けていく必要がある・・・。
堀江さん: そうなんです。その国や地域の文化的背景に合わせた、丁寧な対話を続けながら、 根気良く活動を行っていく必要があります。例えば、地域によっては女性スタッフはなかなか村に入っていけない場合もありますし、逆に、男性の医療従事者による妻への医療サービスを、夫が拒む場合もあります。後者のような地域では、女性のヘルスワーカーの育成に力を入れる必要がありますが、一方で、女性は教育を受ける必要がないという考えが根強い場合もあります。いずれも、短期間で理解を得られ、解決できる性質のものではありません。
武内: 根気良く、地道に続けていかなくてはならないですよね。その活動を、寄付でまかなうのだとすると、活動するメンバーだけではなく、継続的に寄付を得られるように後方支援するメンバーも大変そうです。日本には欧米のような寄付文化がないので大変だとも聞きます。
活動を支える寄付。欧米と同じ手法では集まりません
堀江さん: そうですね。欧米では、自分の所得の一定額を寄付する人が多かったり、NGOが市民社会の信頼を得ていて、その活動に関わっていることがステータスになったりという側面もあると思います。あと、日本との違いという点で、キリスト教の「人は誰かを助けるべき」という考え方も影響しているんだと思います。
武内: うーん、何か、深いですね。人は誰かを助けるべきかどうかと問われれば、それは助けるべきなのでしょうが・・・。寄付の集まりやすさも違いますか?
堀江さん: 集まりやすさもですが、集めるための手法も違います。例えば、私たちのような団体が街角で寄付を募ると、欧米ではクレジットカードを差し出したりして寄付に応じる人たちが結構いるんです。経験上、日本では難しい手法です。また、テレビ番組でも寄付が呼びかけられるなど、多くの人にとって寄付が身近で、敷居が低いんです。
永澤: 実は私は、購入金額の一部がセーブ・ザ・チルドレンさんへの寄付になる、ブルガリのシルバーのリングを買ったんです。現在9歳の次男が、20歳になったときの記念にプレゼントしようと、思い切って買いました。ブルガリのリングが敷居が低いかどうかは別にして、私のように、国際協力に対する意識がうんと高いわけではない人の、きっかけとしては良いのかなと思いました。
堀江さん: それはありがとうございます!非常に素敵なプレゼントのアイディアですね。ブルガリの創立125周年を機に始まったグローバルなパートナーシップで、とても大きな支援を生み出していただいています。私たちの活動をご存じない方々に対してのアプローチとしても、インパクトがありました。
武内: 確かに素晴らしいプレゼントですね。永澤さんが素敵なお母さんであることがわかりました(笑)。支援者の裾野を広げるのはとても大事なことですが、まずは知ってもらう、関心を持ってもらう、ということは、簡単そうでなかなか難しいですよね。少しでも関わりを持った一般の人たちの影響力によって、さらにその輪が広がるのが理想的なのではないでしょうか。その輪が広がることで効果が変わってくるのだと思うのです。私たち無印良品の商品がそうですから。自分たちが、「この商品が良い」と発信するのと、使った人が同じことを言うのとでは大きな違いがあります。
堀江さん: おっしゃるとおりですね。私たちも、アプローチをいろいろと工夫してゆきたいと思います。
遠い国の子どもたちの現実を、自分に引き寄せて考える
永澤: 素朴な疑問に近いのですが、例えばアフリカの子どもたちが5歳になれずにたくさん亡くなっているということは、とても辛いことですし、防ぐための活動が重要なことは私にもよくわかります。けれど、身近なところから遠い国まで、たくさんの問題がある中で、どうして、アフリカのための寄付をするのか、というところの理由は、どのように捉えるべきものなのでしょうか。
堀江さん: 同じ疑問をお持ちになっている方は多いと思います。確かに、経済大国といわれる日本でも、昨今は格差や貧困が問題になっています。私たちもこの問題を見過ごすわけにはいかないと考え、国内の子どもたちのための活動に着手しているところです。一方で、どこの国もそうであるように、もはや日本は日本だけで成り立っているのではなく、さまざまな国や地域との相互依存関係にあります。普段の生活の中では、アフリカの子どもたちと何の関わりもないように感じられるかもしれません。しかし実際には、私たちが大好きなチョコレートの原料になるカカオのほとんどがアフリカから来ており、栽培は、貧しくて学校にも行けない大勢の子どもたちが、時に危険にさらされながら、劣悪な労働条件下で行っているかもしれないのです。世界はつながっているという感覚を持っていただけたらな、と思います。
永澤: ・・・すごく、胸に落ちました。堀江さんが、そのように情熱を持って続けられるのには、何が原動力になっているのでしょう。
堀江さん: 子どもの頃海外生活の経験があり、日本を客観視する機会がありました。日本がいかに豊かで恵まれているかを実感できたことが、私をこの仕事に向かわせたのだと思います。さらに、自分が子どもを持ったことで、同じ子どもでも、生まれついた場所によって、享受できることに天と地ほどの差があるという世界の現実が、あまりに不条理で許せないと、自分自身の中で強い憤りとなって迫ってくるようになりました。原動力というなら、その憤りではないかと思います。
対談を終えて
武内: 今日は改めて、わが子は恵まれているんだなぁ、と思いました。その一方で、他の国の子どもたちが想像もつかないような困難にさらされているというギャップを、私たちは、知識としては知っているけれども、なんとなく受け入れてしまい、日ごろ思いをはせることがありません。やっぱりこうしてじかにお話しすると違います。考えさせられました。
永澤: 「人は誰かを助けるべき」という欧米の人の考え方、そして、堀江さんの、「世界はつながっている」という言葉が、印象的でした。私は、こうした活動に縁があるとはいえなかったのですが、寄付などを通して活動に関わることの意義や意味が、わかってきた気がします。とても勉強になりました。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2011年2月24日から5月23日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
674人の方から合計194,600円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。
実施中の募金券はこちら