研究テーマ

「良品計画社員と学ぶ寄付先団体の活動」第40回 オイスカ「子供の森」計画×良品計画 子どもたちの育む森が、地域を変える

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第40回は、子どもによる学校や地域での植林活動を通じて、地球緑化と環境教育を推進するオイスカ「子供の森」計画さんにお話をお聞きしました。

共に成長していく、森林と子どもたちの心

大規模な森林伐採や開発により、途上国では森林が減少し続けています。多くの地域で水源の枯渇、農業の衰退や、洪水、干ばつなどの自然災害が深刻化の一途をたどっています。生活のため、開発を進めたいと思う気持ちは否定できません。けれど、子どもたちの「緑を大切にする心」を育むことで、自然と共存する未来につながる道もあるのではないでしょうか。子どもたちによる森づくりが生み出す効果を、地域で活動するNPOといっしょに考えてみましょう。

プロフィール

「子供の森」計画

「子供の森」計画は、子どもたちの手で行う植林活動を進めることで、環境保全対策に取り組むとともに、子どもたちの「自然を愛する気持ち」を育てるプログラムです。公益財団法人オイスカを運営母体とし、1991年に始まったこのプログラムは、今ではアジア・太平洋地域を中心に、世界33の国と地域に広がっています。

「子供の森」計画について詳しくはこちら

  • 藤井啓介さん

    公益財団法人 オイスカ
    海外事業部 海外開発協力担当

    東京農業大学卒業後、1999年からオイスカ四国研修センターにて海外からの研修生に対する農業指導を担当。2006年からはミャンマー農林業研修センターへ駐在員として派遣され、2008年より現地駐在代表としてミャンマー事業全体の統括業務を担当後、帰国。2013年9月より現職。

  • 前田潤一郎

    良品計画
    生活雑貨部 ステーショナリー担当

    1991年に良品計画入社。海外事業部にて商品輸出業務を担当後、店舗スタッフを経て店長を経験後、1999年再び海外事業部となる。その後、生活雑貨部ステーショナリーD.B担当では、文庫本ノート、6色ボールペンなどの開発に携わる。約2年、ハウスウエア担当での商品開発を担当後、現職。

  • 加藤晃

    良品計画
    生活雑貨部 企画デザイン室デザイナー

    2011年に良品計画入社。宮城県出身。千葉工業大学デザイン科学科、同大学院卒業。生活雑貨のデザイナーとして入社し、文房具や理美容品の商品企画、デザイン担当を経て、現在は家具、収納用品の商品企画やデザインを担当。「18-8ステンレスワイヤーバスケット」は担当後最初の商品。

農業支援から発展し、植林活動へ

子どもたちは樹木とのふれあいを通じて
自然の恵みを学ぶ(マレーシアにて)

前田:長年、アジアの途上国で植林をしてきたオイスカさんですが、その活動の中でも特にこの「子供の森」計画は夢があっていいなと思っています。まず団体のことから教えてもらえますか。

藤井さん:はい。オイスカは1961年に設立され、今年で53年目を迎えます。当初は途上国の農業支援が中心だったので、活動は農村開発から始まりました。

加藤:53年とは長いですね。活動を始められた背景はどういうことだったのですか。

藤井さん:1960年代にインドで大規模な干ばつが起きた際に、現地から、産業の基幹となる農業支援をしてほしいという要請を受けました。そこで日本の農家に呼びかけまして、応じてくれた人たちに支援を手伝ってもらいながら活動を広めていきました。

前田:思ったより規模の大きいお話です!その方たちは、ずっと現地で活動を続けられたのですか?

藤井さん:移住したわけではないので、そのうち日本に帰国せざるを得ませんでした。そこで現地で活動を担う人材を育てるため、研修センターを各地に設置しました。この農業を通じた人材育成は、現在までオイスカの活動基盤となっています。

加藤:もともと農業支援だったのに、どうして植林まで広がったのでしょうか。

藤井さん:フィリピンやインドネシア、タイなど様々な国で、木がほとんどない山が点在しています。これは元々そうだったわけではなく、開発や非伝統的な焼き畑農業の増加、燃料や輸出材としての大規模採取により、多くの木を伐採してしまったことが原因です。しかも伐採した後も植林をしないので、雨が降っても保水できない山になってしまいます。畑でも田んぼでも、農業には水が必要不可欠ですよね。その水が不足するので、結果として農業ができなくなってしまうという悪循環に陥っています。そこで、もう一度山を元の姿に戻すことが、長い目で見た農業支援につながっていくと考え、70年代後半から植林を始めました。

前田:お話を聞いていると、長期的な視点で考える必要のある活動だということが伝わってきます。支援を継続するのも大変ですよね。オイスカさんから各地域へ、長期的に専門の方を派遣なさっているのですか。

藤井さん:はじめは日本から駐在員等が派遣された地域でも、今は現地のスタッフが中心となり、研修センターや各事業を運営しているところが増えてきていますね。現地で採用されたスタッフはまず研修センターでオイスカの理念や考え方を学びます。意欲や素質があるスタッフはさらに日本に呼んで、国内の研修センターで教育を受けることもあります。

前田:現地の方が運営されているんですか。長期的な支援ですと、確かにその方が合理的ですよね。いつまでも駐在するのには限度があるでしょうし。

藤井さん:私たちはあくまでサポートで、主役はやはり現地の方々ですから。現地の文化と「オイスカ流」のやり方、両方が身についているリーダーを育て、次はその人たちが現地で植林等の事業を地域の人たちと協力して実施する。それぞれの国の文化を分かっているからこそ、新たな習慣や考え方をスムーズに根付かせ、植林地を広げていきます。

「ふるさとづくり」を目指す「子供の森」計画

加藤:「子供の森」計画は、その名のとおり子どもが森を育てる事業ですよね。学校や身近な地域での活動というのがユニークですね。

藤井さん:オイスカの研修は主に20~30代の青年が対象ですが、もっと小さなころから緑を愛する心を育みたいという考えがありました。そこで91年に、子どもたちを対象にした「子供の森」計画が始まりました。現在では33の国と地域で、累計4650校が参加しています。

前田:学校で子どもたち自身が植樹するんですよね。たしかに、緑を大切に思うようになりそうです。海外でも日本のように校庭があるのですか。

藤井さん:必ずしも校庭があるとは限りませんね。学校や地域の敷地が狭く、植林に適さないというのも珍しくはないです。そういったときは、学校の周りや自分たちが住んでいる地域に植樹します。植林が難しい場合は、ゴミのリサイクル活動や環境セミナーなど環境教育に力を入れています。

加藤:植林という手段は、ほかの環境教育とどういった違いがありますか。

藤井さん:植林って、植えて終わりじゃないですよね。植えた後にも草とりをしたり、肥料を与えたり・・・手入れや管理などの世話も、子どもたちがしています。その全工程に自分が関わることで、自然に対する意識が少しずつ芽生えてくるところが大きな違いではないでしょうか。

加藤:手間がかかるからこそ、環境教育に活きてくるのですね。

藤井さん:そうですね。年月が経ちある程度育った木は収穫し、切った後に新たに植えることもあります。育った木を使って校舎を建てる場合もあるんですよ。

前田:自分たちで育てた木でつくった校舎は、思い入れが強いでしょうね。大切な場所になると思います。

藤井さん:私たちは「子供の森」計画を「ふるさとづくり」につながる活動だと考えています。自然環境の維持に関わることで、自然と共に生きる暮らしの豊かさに気づき、ふるさとを守る大切さを学んでほしいんです。参加した子どもたちが成長したとき、その考え方を村づくりに反映できるだろうと思います。