地域のゴミ置き場から、川に、海に
橋本:空から?・・・あ、カラスですか!
小島さん:そうなんです。それ以来、気をつけて見ていたら、カラスって、ゴミ置き場からレジ袋ごと持って行っちゃったりするんですよ。プラスチックのゴミ、例えばマヨネーズのチューブとか、スナック菓子の袋とか、そうしたものに付着している油が、カラスの大好物なんですね。地域の人は、ゴミを分別して、定められた曜日も場所も守って捨てるんですが、都内だけで無数にいるカラスが、それを引っ張り出して散らかします。散らかったゴミが、風や雨に運ばれて川に流れ、やがて海に出る。海に出たゴミが、潮に乗ってミッドウェイまでたどり着き、鳥の命を奪っているんです。
依田:まさに巡り巡ってというか。でも、それでは僕らも知らず知らずのうちに加害者ですよね。
橋本:思い出しました!広島県に行ったとき、海辺でバーベキューをしたんですね。きれいなはずのビーチに、明らかにアジアの、ほかの国のゴミがたくさん落ちていました。そのときは、彼らが観光でビーチに遊びに来て散らかして行ったのだと思い、「なんてひどいことをするんだろう」と憤慨したのですが、今思えば、あのゴミも・・・。
小島さん:多くが流れ着いたものでしょうね。橋本さんと同じような光景を目にして、外国のゴミがいっぱいあると言って怒る人がよくいます。無理もないですよね。でも、日本も同じように、ほかの国に迷惑をかけているんです。また、ゴミが大量にあると、そこではポイ捨てしてもいいような気持になってしまい、実際に捨てていく人も出てきます。
橋本:なるほど。確かに、ゴミが山になっていると、さらにちょっとくらい増えても同じだ、という心理が働いちゃいますよね。
依田:JEANさんが「拾うだけじゃ解決しない」と訴えているのが、よくわかってきました。ゴミがどこから来ているのか、どうして海に出たのか、突き止めて、もとを断たないときりがないですもんね。
自然界で分解されない、プラスチックが増えていく
小島さん:昔はゴミの量も少なかったですし、出ても自然界で分解されるようなものでしたが、先進国の私たちのライフスタイルが変わって、大量にプラスチックゴミが出るようになりました。プラスチックの使い捨て商品が出回り始めたのは40年ほど前。同じことが今、いわゆる新興国で起きています。それもすさまじい勢いです。ゴミ拾いの活動に意味がないわけでは決してありませんが、根本的な解決にはなりません。
依田:私たちもモノを売る側として、責任と同時にジレンマを感じることが多々あるのですが、日本はまだ、使い捨てのものが多いですよね。特に、商品そのものというよりは、その容器や包装、レジ袋なんかもそうだと思います。過剰包装で、それを捨てるためにレジ袋が要る、なんてこともあります。
小島さん:そうですね。欧米では、使い捨てのものに高い税金をかけたり、レジ袋を禁止している国もあります。
橋本:私たちも、包装をシンプルに簡略化することにずっと取り組んできていますが、品質を保つこととのバランスにおいては、依田の言うように、ジレンマがつきものですね。一生活者としては、スーパーで支払いを済ませたとたん、かさばるトレーをはずして捨てている様子なんかを目にすると、「あぁ、もったいない」と思いますし、生鮮食品でも、極力トレーなしで買えるものを選びます。一方で、お金を出して買うのだから、見た目もきれいなものを優先して選びたい、という気持ちも理解できます。
依田:僕が担当している家具などは、お届けの際に少しでも傷がついたら大変です。傷がつけば再販することはできませんから、それこそ無駄になってしまいます。いろいろ工夫して、梱包を少なくしたり、お客様のお手元でゴミにならないようにはしていますが、それでも「過剰包装じゃないか」とご指摘いただくこともあります。
子どもたちのためにも、大人の責任として
小島さん:日本人は、たぶん世界一、細かいところにまで厳しいですよね。外国では、ちょっと傷があったり、凹んだりしたものでも店頭に並んでますし、お客さんも気にせず買っていきますもん。そこが影響して、日本はゴミが多くなってしまう側面もありますよね。
依田:うーん、難しいですね。でも、今の子どもたちって、僕らより早くから、環境についての知識を持ちますし、自然と意識が高いですよね。やっぱり教育も大事だなぁ、と思います。日本でも将来は、ゴミを出さない方を優先したいという感覚の人が増えるかもしれない。
小島さん:そうですね。そのためにも、子どもたちに、自然のきれいな姿も見せてあげないと。問題ばかり挙げて、これしちゃダメ、あれしちゃダメではなくて。ゴミがたくさんあることの責任は、子どもにはないですから。私もときどき、子どもたちの前で話す機会があるのですが、プラスチックがなかったころには、海から自然のきれいなもの、不思議なものが流れて来たんだよ、って南の海の大きな貝殻を見せたりしています。みんな、「うわぁっ」って目を輝かせますよ。失望感だけを与えることのないように気をつけています。
橋本:私も母親として、気をつけます。子どものころから、少しずつ身にしみこませていくことって、大事ですもんね。海や山が好きだから、きれいに保ちたい、って、当たり前に思ってもらいたいです。
依田:僕は、人間の出すゴミで動物が苦しんでいることも、子どもに伝えたいです。子どもなりに受け止めてくれると思うからです。ただ、言いっぱなしではいけないですよね。大人の責任として。
小島さん:そう思います。
橋本:大人の責任、重いですね。いろんなことが関係し合ってて、影響も大きくて。私たちがふだん家庭で出しているゴミが、4,000km彼方にある島の生き物の命を奪っているというエピソードが象徴していますよね。足元は大事ですけど、広い視野も持たなければいけませんね。
対談を終えて
依田:知らないことがいっぱいでした。アウトドアが好きでよく出かけるので、ゴミがたくさん集まっているビーチの様子も目にしてきましたが、その先のことにまで考えが及んでいませんでした。世界がつながっていることを痛感しましたし、私たちは自然から、島国であることの恩恵をたくさん受けているのに、仇で返すようなことをしてはいけないと思いました。
橋本:仕事でも、個人としても、もっともっと、環境に対して真剣にならないといけないと反省しました。身近なところから、見直す余地はまだまだあると思います。使い方にしても捨て方にしても、もう一度意識してみようと思います。母親として次世代のことも気になります。小1の息子にはどんな伝え方が良いのか、よく考えることにします。
JEANは、2012年5月24日から8月23日の期間、
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39人の方から合計7,000円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。
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