「手洗い・洗面・着替え・トイレ」を考える
「生活動線から『くらし』を見直す」プロジェクトの第2回は、「手洗い・洗面・着替え・トイレ」を考えます。
[一般的な住まいのかたち]
※今回は、75m2(22.7坪)のモデルプランを想定しています
前回同様、まず最も一般的と思われるモデルプランについて考察してみます。
洗濯機を設置した洗面と脱衣室が1室になって、浴室(ユニットバス)とつながっています。この「洗面脱衣室」では、家族が手を洗う、顔を洗う、歯を磨く、着替える、洗濯する、場合によっては洗濯物を干すなどの行為が集約されています。
「トイレ」は独立して廊下に面しており、洗面脱衣室のすぐ近くにあります。とても合理的にできていると言えます。
しかし来客が来た際にちょっと問題が起きます。客人はリビングなどの部屋以外にトイレと洗面脱衣室の両方を使うことになります。洗面脱衣室にある洗濯機のまわりには洗剤や洗濯物などの物があふれがちで、雑然としたところを見られてしまうからです。
「着替え」について考えてみます。
着衣には大きく分けて寝間着・部屋着・外出着の3つがあり、着衣なし(裸)と合わせて4つになります。その変換が着替えという行為です。
入浴するためには裸になりますので、洗面脱衣室で着替えを行います。
裸になる以外の着替えは個室で行うことになるため、各寝室にはクローゼットが設けられることになり、家族の洋服が分けられて収納されます。プライベート性は高くなりますが、家族のコミュニケーションは少なくなりそうです。
また、寝間着や下着は寝室に収納することになり、お風呂に入るときは毎回持っていかなければなりません。
タオルの収納場所も重要です。脱衣室にしっかりと収納スペースを確保しておくと便利です。
「トイレ」は一般的にリビング・ダイニングといった団らんの空間に面していることは少なく、音や匂いの気になりにくい廊下にあります。
以前いただいたご意見では、「お風呂や洗面脱衣室から出て、すぐにトイレを使いたい」という意見もありました。この間取りですと、いったん廊下に出ないと行き来はできないことになります。
このように考えてみると、一般的な間取りでも暮らすのに不便だと感じることがあります。
今回は「手洗い・洗面・着替え・トイレ」の行為をテーマに、「洗面所・脱衣室・トイレ・寝室(収納)」について4つの間取りを作ってみました。
これらは共通して、客人に洗濯機まわりを見せない工夫と、脱衣室に寝間着・下着・タオルを入れる収納を確保しています。
それぞれの提案について、ぜひみなさんのご意見をお聞かせください。
[提案1] 洗面所とトイレをまとめたタイプ
客人も使うスペースとして洗面所とトイレを1つにまとめ、家人だけが使用する脱衣室に洗濯機を置いて別室にしました。客人に雑然としがちな洗濯機まわりを見られなくてすみます。
また、脱衣室から直接、洗面・トイレに行けるように引き戸を設置しました。
[提案2] 洗面所と脱衣室とトイレを独立させたタイプ
[提案1]と同様に、客人に雑然としがちな洗濯機まわりを見られなくてすむよう、脱衣室に洗濯機を置いて別室にしました。
客人も使う洗面所とトイレは隣り合わせており、それぞれ独立して使用できます。
家人の使う脱衣室とトイレの間に洗面所を配置することで、とても効率の良い動線となりました。
[提案3] トイレに洗面を設置しファミリークローゼットにしたタイプ
各寝室からクローゼットをなくし、ファミリークローゼットとして洗面脱衣室の横にまとめました。全ての着替えを洗面脱衣室とファミリークローゼットで行うことができます。前回の間取りでもご提案しましたファミリークローゼットは、服の収納が1つに集中することで効率良くなるだけでなく、家族間で服の共有がしやすいことで子供の様子や成長がわかり、家族のコミュニケーションのきっかけにもなります。また、寝室から独立することで、帰りの遅い夫が帰ってきても妻の睡眠を邪魔することなく着替えることができます。
客人が使う洗面をトイレ内に設けることで、洗面脱衣室は家人のみが使う部屋とすることができます。
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[提案3]がよいと思う。現在、現実に住んでいる部屋の間取りもこれに近い。我が家では私が洗濯物をたたむ。パンツとタオルのみ洗面室のリネン庫にしまい、残りをクローゼットにまとめて運べば、あとは各自で引き出しなどにしまう約束になっている。夫や伸び盛りの子の洋服の管理もしやすく、何が不足していて何を買い足せばよいのかも一目瞭然。子どもが成長すれば事情が変わるかもしれないが、現時点では我が家にとってこれが一番便利。
(女性・40代前半・既婚・子ども1人) -
[提案3]がいいと思います。[提案2]でもいいと思うのですが、やはり洗面所は歯ブラシ・化粧品など細々としたものがあり、ごちゃごちゃしてしまいがちなのでできるならば客人には見られたくありません。客としてお邪魔した際にも手を洗いたいけど入ってよいものか許可をもらっていても躊躇います。トイレ内に洗面があれば気を遣わず、気を遣わせずに使用できると思います。
(女性) -
4つの提案の中では[提案3]がいいと思います。我が家の場合、洗面所で化粧をしたり、髪を整えたりもしますので、[提案1]のように洗面所とトイレがまとまっていると朝などは非常に使いづらいことになります。
では[提案2]のように別になっていればいいかというと、これも朝など洗面所で誰かが顔を洗ったり歯を磨いたりしているすぐ横で、トイレを使用するのはちょっと落ち着きません。また空間をあまり細かく分けたくないので、その考えにも合いません。[提案3]のようにトイレ内に手洗い場を設置するのには大賛成です。特に子どもはトイレの後に別室の洗面所へ行って手を洗うのは面倒なため洗わないことが多く、トイレタンクの上に手洗いがついていても届きにくいので使いません。お客様に使っていただくという理由以上に、トイレ内の手洗い場は家族にとって必要です。
ファミリークローゼットの案は利点が多いと思いますので賛成ですが、どのくらいの容量があれば家族全員の服が入るのかすぐには見当がつきません。取り入れたいけれど、要検討といったところです。[提案4]のようにファミリークローゼットと子供部屋をつなげる案は、洗面所と子供部屋を2方向につなげるという点と、子どもが3人いるという点において、我が家にとっては現実的ではないように思いました。(女性・40代前半・既婚・子ども3人)
[提案4] ファミリークローゼットと寝室がつながったタイプ
ファミリークローゼットを洗面所と寝室の2方向につなげ、洗面所と脱衣室をそれぞれに分けました。客人はトイレと洗面所を使い脱衣室には通りません。
寝室と繋がっていることで動線が短くなるだけでなく、年頃の女の子が自分の部屋で着替えることができます。
前回の間取りで「子供部屋が玄関のすぐ脇にあるのはいかがなものか」というご意見もありましたが、子供部屋がリビングルームに接することで、帰宅・外出時に必ず家人と顔を合わせ、自然に言葉を交わすという効果も期待できます。
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[提案4]が理想に近い形だと思いました。今住み替えを検討していて、50代になった夫と8歳の娘、45歳の私の3人家族ですが、現在の家は3人家族には広すぎ、光熱費維持費など、今後年金収入になったときにとても維持できない家です。いつも片付いていてせまくてもすっきりすめる家が快適だなというのが私のコンセプト。水まわりの配置も、水まわりを単体で考えないで、浴室、脱衣(洗濯作業)、洗面、クローゼットの関係した作業のあつまりで考えると、自分が仕事のしやすい動線が見えてきました。
朝身支度をするとき、洗面にいって顔をあらい、クローゼットで着替え、食事、トイレという感じで家族は出ていきます。クローゼットで着替える習慣をつければ、衣類のすべてをここで集中管理するようになるので、洗濯ものもここに片付けることができます。洗濯ものを取りこんでしまう作業でありがちな、収納場所がすべて異なるために、しまう作業を後回しにして一次置き場のようにソファの上にという散らかるファクターができてしまいます。
なので、身支度はクローゼットの続きで、洗面という風に動線が流れるのはとてもいい案だと思いました。トイレの位置が、玄関のすぐ横というのが、ちょっといただけないです。プライベートな場所だけに、リビングと壁を隔てるのはいいかと思います。子供部屋からトイレが遠いのもちょっと気になります。小学生のうちは、夜中に起きることもあるのでは、クローゼットはもう少しせまくてもいいので、トイレをクローゼットのほうへ移すことができればベストです。(女性・40代前半・既婚・子ども1人) -
私の理想に一番近いのは[提案4]のタイプです。但し、2点ほど私の理想とは違う部分がありました。1つは、玄関から直接トイレの入り口が見えない事。これは玄関先での来客がある場合など、直接トイレに入るという所を客人にみられてしまうという所が気になります。もう1つは、トイレと洗面の位置関係。これについては、提案2の形がほぼ理想通りで使いやすいと思います。実際、我が家のトイレと洗面はこの[提案2]のパターンですが、その部分は暮らしてみて、とても良いと感じています。よそのお宅へ伺った時、一般的なマンションだと、やはりトイレだけ独立しており、手を洗う場合は脱衣所を兼ねた洗面台をお借りする事が多いのですが、やはりそこは雑然としていて、お借りするのが申し訳ないような気がします、あまり親しくない方のお宅だったりすると結構気が引けるものです。
[提案4]の素晴らしいと思う所は、ファミリースペースの設置位置と子ども部屋の位置関係、それにプライベートスペースとパブリックスペースの棲み分けを効率良く考えてある点だと思います。子どもが小さいうち、または思春期を迎える時期は、なるべく家族との関わりを多く持ちたいものです。それには、かねてより玄関から直接子ども部屋に入る間取りではなく一度はパブリックスペースである、リビングを通る形にする事が良いとずっと思っていました。しかも、この[提案4]の間取りは、各プライベートルームからリビングを通る事なく、直接ファミリースペースに行く事もできる所が素晴らしい。たとえば、来客がある時などはプライベートスペースから直接ファミリースペースに行く事ができるので、お客様がいらしても、他の家族はお風呂へ入る事も可能ですね。この動線はとても考えられていて住みやすいのではないかと思います。
[提案4]の間取りで、洗面の位置にトイレを配置し、そこと隣接する場所に洗面がある形であれば、私が理想とする間取りに一番近いです。個室という考え方にも色々とあるとは思いますが、私は個室は寝るだけのスペースとしてで充分ではないかと思っています。ファミリースペースは今回クローゼットの意味が大きいようですが書籍やCDやDVDなども家族みんなが使えるファミリースペースの様な場所を設置するだけで、家族それぞれの趣味趣向も理解できるし普段は興味のない物への感心も深まったりする事もあるのでは?と思います。(女性・30代後半・既婚・子ども1人)
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1
- 2010年2月10日 「洗う・干す・アイロン・しまう」を考える
- 2010年2月10日 みなさんのご意見からもう1案
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2
- 2010年3月24日 「手洗い・洗面・着替え・トイレ」を考える
- 2010年3月24日 みなさんのご意見からもう1案
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3
- 2010年4月21日 「料理・食事・片付け・団らん」を考える
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間取り投票
いつも、メールで頂く内容がとても参考になっています。家族で「これはどう?あーでもないこーでもない」と色々意見しながら楽しませてもらっています。提示の中では、[提案2]に賛成です。現在、冬に完成予定の我が家の間取りを考える過程が大詰めにきており、この提案に興味をもちました。
[提案1]ではトイレと洗面が同室となっています。最近このような間取りの提案が多くされるようで、建築雑誌等でもよく目にしますね。私は、実際の生活を考えたとき、これはどうなんだろう、と思ってしまうのです。というのは、お客様がいらっしゃるときより、家族で使用するときのほうが圧倒的に多い、ということを考えたとき、提案1では、トイレと洗面を同時に使いづらいのでは、と思うからです。我が家は共働きと言うこともあり、特に朝の時間は、主人私息子2人がほぼ同時に朝食をとり身支度に入ります。トイレを使うタイミングも、洗面を使うタイミングも一緒です。トイレを出るまで洗面台を使うのを待つ...なんて悠長なことはいってられません。仲良し家族なら、横で排泄していても気にならないだろう、と言う方もいますが、はたして本当にそうでしょうか?変な話、小便時なら全く気になりません。でも、大便時は別です。家族間にもある程度のプライバシーは必要と考えます。
[提案3][提案4]に関しては、家事効率で見ると魅力的だな、と感じます。毎朝着る洋服がぱっと決められる人なら問題なさそうです。でも、迷う人が多い家族だったりすると、着たり脱いだりでクローゼットの中が手狭に感じられたり、結局めぼしい服を数着持って自分の部屋へ...ということにはなるかもしれませんね。これは、私が3人姉妹で育ち、幼い頃からずっと姉妹3人して衣服を選ぶのに時間がかかったり、服をたくさん広げて悩んだり、鏡の前で1人ファッションショーをしてみたり、という状況を当たり前のようにしてきたから、そう思えるのかもしれません。考えようによっては、クローゼットが一緒なら、共有の服をもちやすくなり、(どっちの部屋に置くとかどこにいった?とかのささいなケンカがなくなりそうですよね)プラスの面も多そうですね。
結局は、どれも、使う家族の生活に合っているかどうか、で便利さが決まる、ということなんですね。ちなみに我が家では間取りの制約があって、当初トイレ、お風呂、洗面台、洗濯機が一まとめになっていたプランを変更し、トイレだけ切り離し、別に手洗い水栓をつけることで決定しそうです。お客さんにはトイレや手洗いを使ってもらうことはあるけど、よほどの仲良し等でないと、洗面台やお風呂を使ってもらうことはないな、と思うとこれでよかったかな、と思っています。
今回は手洗い・トイレ・洗面所とのことですが、今まで考えたことがあるようでなかったのでハッとしました。確かに、洗面所とトイレの距離関係って大切ですね。[提案1]は使い勝手はよさそうですが、最近の居酒屋風でトイレを開放的にできるのはよいのですが、何分収納とトイレが同じ場所にあること、水まわりが同じ場所にあるので掃除がかえって大変になるんじゃないかと思いました。あとちょっと恥ずかしいお話、日本人の習性か、トイレは小さな個人空間という一種のくつろぎ場(?)にもなることもあるので、広いと落ち着かない気も...。お風呂に入る前って、冬なんか特に服を脱いだとたん、トイレに行きたくなるということもあるので[提案2]が個人的には嬉しい間取りです!
でも、[提案3]のトイレで手洗いができるのも捨てがたいですね...。客として友人宅に招かれたとき、トイレと洗面所が離れていて、汚い手でドアノブを触れることに申し訳なさを感じたことがあったので、招かれ側としても嬉しい配慮だと思います!ファミリークローゼットですが、部屋で膨大な場所をとるタンスがなくなるという点ではいいなぁ。とも思うのですが、個人的なものを置く場所として、小さなクローゼットは各部屋にある方がいいかなと思います。カバンに物を詰め込むのは部屋ですし、ちょっと寒いなと思ったとき、冷えた廊下を歩いてクローゼットまで服を取りに行くのは辛いかな?と。意見を出しつつも、こう考えさせてくれる無印さんの提案は毎回素敵だと思います!提案を元に、自分の家も素敵にできるよう頑張りますね!!