研究テーマ

小池一子氏トークイベント採録(3/5)

2009年11月11日

無印良品はライフスタイルを伝えられる商品群なので、まとめて見せていきたい、と思うようになったんです。

このレポートは、2009年9月23日に池袋西武店で行われたトークイベントを採録しています。

視点を変えるとハッと気づくことがある。自然からも学びます

次は、自然に学ぶ、というテーマです。無印良品というのは結局、自然に学んでいると思うのですね。ブランドは、人間が付けるものなんです。

ぼくは無印だ。(1983年)

このポスターは、イラストレーターの河村要助さんに相談をしてつくったものです。
会社の生活では、部長や課長の印鑑や肩書きが必要になるのよね、というような話をして、働くひとりの人が、自分は無印だ、と言っているようなことを何か表現できないでしょうか、と相談したら、河村さんがこういったイメージを出してくださいました。

自然、当然、無印。(1983年)

自然、当然、無印。
和田誠さんが気づかせてくれたユーモラスな視線。自然って当たりまえのことでしょう、という指摘です。

色のまんま。/まんまの色。(1984年)

それから、自然ということで、こちらのふたつのポスターをご紹介します。
色のまんま。そして、まんまの色。
このコピーは、セーターをつくるときに、動物の色のまんまを受け継ぎたい、ということを伝えています。アルパカ、キャメルなど、動物の"色のまんま"を仕入れて、その"まんまの色"で仕上げている。
無印良品のひとつの基本に自然を受け継ぐという姿勢があります。ですから、生成りの色や、動物素材のそのままの色を、無印良品のアイデンティティを表現するために、意識して使っていました。

広告のポスターに西友のマークがついているのは、ここまでです。
初期の無印良品は、スーパーマーケットの食品売り場におせんべいがあったり、家庭用品の売り場に何があったりということで、ジャンルごとに、商品が散らばって売られていました。それを、無印良品はライフスタイルを伝えられる商品群であるから、まとめて見せていきたい、と思うようになったんです。そこで、路面店をつくりたいと、主にクリエイティブのチームのほうから提案し、できあがったのが、青山の第1号店。1983年のころでした。
青山の第1号店は、大変な反響を呼びました。ファッション・ビジネスの一番盛んなその場所に出たことで、無印良品が何を言おうとしているのかをわかってくれる、意識の高い消費者に対し、きちんとメッセージを送ることができたのです。無印良品は、やがて西友から独立して「良品計画」という会社になり、そうしてポスターからも、西友のマークは消えていきました。

生活の空間を豊かにするクラフトワーク

こちらも、2枚のポスターです。無印良品では、世界のいろんな人たちが手掛けている、クラフトワークとのコラボレーションを進めたいと考え、私が探したメキシコのヒメネスというデザイナーの作品を使いました。

先生です。生徒です。(1988年)

こちらは、自然が先生で、私たちが生徒です、というキャンペーンです。自然志向ということ、そして、先ほどもお話したような、皆さんひとりひとりがそれを受け止めて、楽しんでくださいということ。それらは生活の場面で、私たちの居る生活の空間を豊かにしてくれます。

それ以上。(1987年)

こちらは、スタイリングの冒険です。素のままであったり、最もシンプルで基本的な生活用品を、より楽しんでもらう事を表現しました。たくさんのストール類を使ってスタイリングしています。
手に入れたものを使って、"それ以上"に生活を楽しんでください、という思いを込めています。

目、ニホン。手、インド。(1991年)

また無印良品では初期のころから、ものの素材や仕様などについて、グローバルに目を配り、手にする、ということを進めています。たとえば、タイの藍染めを早くから紹介したこともそうですね。
目、ニホン。手、インド。
このコピーも、ニホンの目が提案して、インドの手でつくられてきたものです、ということを言っています。

20年前の直感。愛は飾らない。(2000年)

これは2000年のコピーです。20年前の直感で、愛は飾らないというコピーを書いたんだけれども、20年経った今、それがこんなに成長しました、というものです。やはり、田中一光さんの依頼で、山下勇三さんが成長した娘のイラストレーションを描いてくださいました。