MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
MUJI×URトークセッション 「10年前の未来と10年後の未来」

※このレポートは、2023年10月1日(日)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

part2:10年間での意識の変化について
豊田
つづいて、アンケート結果です。
MUJI×URでも無印良品のように、お客様の声を拾い上げ、商品化するプロジェクトを行っています。

プロジェクト開始前の2012年にアンケートを実施した際、先ほどご紹介しました団地や団地のリノベーションへの期待をみなさんにお聞きしました。
2023年に、2012年と同じ項目と新しい項目を追加したアンケートを実施しました。今後に向けて10年間のみなさんの意識の変化と、新しい取り組みに対する期待を調査しました。その結果を、ご案内していきたいと思います。
豊田
まず、変わらなかったところです。
間取りを自由にできると良いというのが、2012年、非常に高かったのですが、こちらは10年経っても変わらず高い結果となりました。

もう少し掘り下げて、当時はなかった技術に関してを、2023年に実施したアンケートで取りました。可変性のある住まいの詳しい内容として、URさんとMUJI HOUSEが共同で開発した「共同開発パーツ」についてお聞きしました。
豊田
左から、組み合わせキッチン、麻畳、ダンボールふすま、あと共同開発パーツではないですが、間仕切り家具の4つをお聞きしました。それぞれ、共感度は89%、86%。ダンボールふすまはやや低いですが58%。間仕切り家具が81%ということで、それぞれ高い共感度がありました。こういった可変性のある暮らし方に対する期待・共感が高かったのかなと思っています。

DIYのできる住まいについてのアンケートも行いました。 とても共感できる、やや、共感できる、合わせて、共感度78%ということで高い支持をいただきました。
MUJI×URでもDIYができるプランを展開しています。
豊田
左側が実際のものです。キッチンや水回り、電気などは一通り揃っていていますが、最後の仕上げの塗装は行っていません。塗装は、住んだ方ご自身で行ってもらう企画として商品を作りました。左側のように、住んだ方に好きな色に塗装してもらいます。

一般的には、原状回復が必要ですが、このDIY住戸については、原状回復不要で行いました。
賃貸の物件でもDIYができる暮らしが最近流行り始めて、よく目にするようにもなってきています。
URさんのDIYの住戸はいかがですか?
長谷川
クロスを一部分だけ変えたいとか、ここに棚が欲しいなどお客様のご要望は多いです。そういった方の希望をかなえられたらと常々思っていました。
URの中でも、徐々に原状回復なしでいいというDIY住戸や、少しだけDIYできる「Petit(プチ)DIY」という商品も出しています。
豊田
若手のお2人はDIYに馴染みがあるかもしれませんが、DIYの暮らしというのをどういう風に捉えていますか?
熊谷
ちょうど父親がDIYにハマっています。私自身はあまりDIYとの出会いはないですけれども、やっぱり急にいじりたくなるタイミングってくるのかなっていう風に思っています。 全てDIYって言うとハードルが高いですけども、最後に自分のオリジナリティを出せるのは高いニーズがあるのかなと思いました。
中村
私も、自分自身ではDIYはあまりしないのですが、賃貸住宅のネックなところは自分で手を加えづらい、原状回復をしなくてはいけないところだと思います。そういったことを考えなくていいのは、すごくいいと思いました。あと、MUJI×URは「こわしすぎず、つくりこみすぎない」というコンセプトがありますが、「つくりこみすぎない」というところで、住まれる人によっては、ちょっと収納が足りないといったような部分もあるかなと思うんです。そういったところを、入居者の方がご自身で補っていただくことができるという点で、MUJI×URとDIYは相性がいいと思いました。
豊田
「塗装しましょう」「なにか作りましょう」といきなり言われても、なかなかハードルが高いので、ワークショップを開催するなど、いわゆるソフトの部分がハードルを下げるために大事になるかと思いますね。
無印良品の店舗で、DIYのワークショップもたまにやっているので、ぜひご参加ください。
豊田
それでは次に行きたいと思います。
家具のサブスクリプション(以下サブスク)、月額定額サービスについてのアンケートですが、共感度が72%でした。
また、多拠点生活、一拠点ではなく、2拠点、3拠点で暮らす暮らし方についてのアンケートも実施したところ、共感度62%とそれぞれ、高い数字が得られました。

家具のサブスクサービスというと、無印良品でも月額定額サービスを行っています。数年間必要なものを必要な期間だけご利用いただき、ご利用の期間が終了すると家具をお返しいただく、そんなサービスになっています。無印良品だけではなく、いろんな会社のサービスが展開されていますよね。
豊田
これは提案なのですが、1番左から、無印良品の家の「陽の家」という商品になります。 自然の中で平屋を作って、自然の中で暮らしていただくようなコンセプトで作られた商品です。
左から2番目は無印良品の家の「木の家」です。主に郊外で建てられていることが多いかなと思います。
3番目が「MUJI×UR」です。郊外に作られた団地をリノベーションし、そこにお住みいただきます。 1番右が無印良品のリノベーションの「MUJI INFILL 0」という商品です。大阪でも開始しましたが、都会のマンションの部屋をリノベーションして住んでいただくという商品です。
こういった商品は、自然、郊外、都会と書いていますが、暮らし方の選択肢がたくさんあるかと思います。
テレワークなどが出来るようになり、どこでも働ける状況になってきています。例えば、住まいのサブスクがあってもいいのかなという話をURさんともしていました。例えば、月10万円お支払いいただけると、この「陽の家」でも「木の家」でも、「MUJI×UR」でも「MUJI INFILL 0」でも、どこでも住むことができる。
気分によっても、季節によっても住み替えられます。最初から、家具や家電もついてくる。長谷川さん、こういったサブスクの仕組はURさんとして可能性はありますか?
長谷川
とても面白いなと思います。金額を決めて、いくらでも・どこにでも・いつでも住んでくださいという、家具のサブスクに合わせると、そんなイメージなのかなと思いました。URの賃貸住宅は、1軒1軒ご契約して頂く必要があるので、手間を感じてしまいますよね。その賃貸住宅をずっと選ばれているというのが、住まいのサブスクと相性がいい。そもそも、住まいのサブスクというのは賃貸住宅に当てはまるのではないかと。気分によって、例えば2年ぐらいで住み替えるとかっていうのが、持ち家よりはすごく簡単なので。そうすると、伝え方なり、システムの組み方で、あまりハードル高くなく、今の枠組みの中で、そういうことができるかなって。ついさっきの会話の中で、思いついたのですが、今までと同じようにお話を進めながらできればなと思っています。
豊田
若手の2人は、どうでしょう?
熊谷
学生時代に1年間ぐらい海外に住んでいた時があり、そのうちの3・4か月はずっと安い宿を転々としていました。その時、アルバイトしていたので、近い範囲ではあったのですが、あえて住む場所を転々としていたのは、いろいろな人に出会ってみたいという理由からでした。
同じところに住み、その中で関係性を築きたいという人もいれば、その時のライフスタイルに応じて住む場所・環境を選び、その中で人と出会っていくという考え方もあるのかなと思っています。そういった時に、海外でもこのサブスクみたいな仕組があったら、より過ごしやすかったなと思っています。URの団地は全国に70万戸あるので、本来であればサブスクと親和性が高いと思うのですが、そのままサブスクというのは現状では難しいので、工夫や代替案が必要だと感じていました。
中村
私も、MUJI×URのプロジェクトで全国のURさんの団地に視察に行くのですが、遠方への出張になることが多いので、こういったサブスクがURさんであったら、すごく嬉しいなと個人的に思います。
サブスクの話ですが、今の若い方はミニマリストや断捨離など、「もの」に固執しない、自分が所有することにこだわらない考え方が主流になってきているのかと個人的には思っています。豊田さんから提案のあったように、暮らしや家についてもサブスクの考え方が主流になるのは、当たり前になっていくのかなと思いました。
豊田
ありがとうございます。今はまだ想像の段階ですが、こういうことが実現するかもしれないということでお出ししてみました。

アンケートでは、店舗併用住宅に住むことについてのご意見もお聞きしたのですが、共感度は58%でした。
長谷川
団地の建設当初はそれこそ何もないところに建設しました。住まいだけを作るわけにもいかないため、団地の中に生活必需品を売っていただくお店やスーパー、医療クリニックモールのようなものを一緒に作っていきました。
豊田
URさんの商店街の中には、1階が店舗で2階が住宅になっているものがあります。
1階の店舗は、店舗としても使ってもいいですが、趣味のスペースとして使うなど何か別の活動として使ってもいいのではないかと思いました。1・2階を借り、商店街の中に住む、という暮らし方もあるのではないかと、アンケートでお聞きしたところ、共感度はこちらの通りでした。
豊田
実は、千葉県の花見川団地でMUJI HOUSEのスタッフが、“団地の商店街暮らし始めました”という企画を開始しております。
豊田
こちらの左側の写真の、1番手前の部分ですが、DIYショップをやりたいということで、1階をDIYショップ、2階にはご家族が住まれています。
1階は当初何もない状態でしたが、DIYで右側のスケッチのように店舗をつくり上げ、活動をスタートさせています。
花見川団地の商店街に住んでいるスタッフは、DIYとコミュニティ作りが得意だったため、団地でいろいろな方と話し合いながらコミュニティを作っています。
DIYショップでは、団地に住む方をメインにちょっとした収納用の棚の制作を請け負ったりしています。先日は、「楽譜の譜面台を作ってほしい」というご依頼があり、制作したそうです。団地にお住まいの方とコミュニケーションを取りながら、いろいろな困りごとや要望をお聞きしながら、プロジェクトにも生かしています。