MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
MUJI×URトークセッション 「10年前の未来と10年後の未来」

※このレポートは、2023年10月1日(日)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

part3:団地が担う役割について考える
豊田
共用部についてもアンケートでお聞きしました。
1番左から、公園など広場の活用、共感度68%。集会所の活用、共感度64%。団地内を走る自動運転バス、共感度82%。団地内の防災活動、83%ということで、それぞれ高い数字をいただきました。
まずは、団地の公園広場の活用の詳細について熊谷さんお願いします。
熊谷
先ほどお話にもでました、リノベーションの幅を住戸だけでなく共用部まで広げた、MUJI×UR団地まるごとリノベーションの事例となります。泉北茶山台二丁団地には広々とした広場空間や土俵跡がある特徴的な共用部がある団地です。
居住者の方々や地域の方々と一緒に話し合いをしながら、段階的にハード整備をしていくという取り組みを行っています。この活動を「となりのひろば」と呼んでいます。
第1期のハード整備として、白いサークルはMUJIHOUSEとURで共同し、ハード整備したものになっています。
白いサークルの意図ですが、広場の空間性をより意識してもらえるよう、中心から波紋のように広がっている縁を描きました。また、MUJI×UR共同開発パーツの“つながるベンチ”を設置しています。
熊谷
2枚の写真が実際のベンチの様子です。イベントに参加していただいた方や団地の方が日常的に使用できるだけでなく、可動式となっています。イベント時に、出店者の方がブースとして使用したり、実証実験としてベンチを2段重ねて商品の陳列棚として使用しています。
泉北茶山台二丁団地周辺では地域で活動されている方がたくさんいらっしゃいます。その方々にイベントに出店していただいているのが特徴だと思います。イベント終了後には、出店者の方ともアフターミーティングを実施し、イベントの反省点やどうやったら広場がもっと使いやすくなるかなど意見交換を実施しています。様々な意見をいただくため、しっかり受け止めてやっていきたいと思っています。まさに地域と一体となっている取り組みの一例です。
豊田
ありがとうございます。横浜の港南台かもめ団地で行っている集会所リノベーションの取り組みについての説明を中村さんからお願いします。
中村
港南台かもめ団地では、集会所のリノベーションをメインに行います。左が完成予想イメージですが、団地に住まれている方々や自治会のみなさんと一緒にコミュニケーションを取りながら、どういう集会所にしていきたいか、どういったものを盛り込んでいきたいのかをヒアリングし、計画に落とし込んだものになります。
中村
団地内でちょっとお茶をしたり、休憩できるようなスペースが欲しいというお声をいただき、ホールの部分にはラウンジのような空間のカウンターを作りました。シェアキッチンが欲しいという声もありましたが、シェアキッチンを中央に作ってしまうと、今までは集会室として会合などで使っていた方が使用できなくなってしまいます。それはそれで困るという声もあったので、そういうご意見を反映したゾーニングにしました。
このように、現地の皆さんや、実際に使う方のご意見を参考にしつつプランニングで進めていました。
豊田
ありがとうございます。
豊田
自動運転バスの実証実験も千葉の花見川団地で行いました。
URさんの団地の中には、端から端まで歩くと30分かかる、非常に広くて大きな団地が多くあります。団地にお住まいの方も高齢者の方が増えてきているので、団地の商店街に行くのが大変だという方も中にはいらっしゃいます。
そういった「足」をどうしていくのか。これからの団地にとっては大きな課題であると考えた際に「自動運転バス」という意見が出ました。

こちらのバスはフィンランドの会社が作っているのですが、デザインは無印良品で、「GACHA(ガチャ)」という自動運転バスです。カプセルトイの「ガチャガチャ」からとったネーミングで、角のない丸いデザインとなっています。
内側は右側の写真のようになっていて、10人くらい乗車できるような大きさです。座るとぐるりと囲うような形になっているので、コミュニティが発生するような工夫がされたバスとなっています。 実証実験のため、運転手の方がリモコンのようなもので操作できるような体制にはしていましたが、緊急時以外はルートを決めて自動的に団地内を周りました。いろんな方の協力をいただき、10日ほど実験をおこないました。団地にお住まいの方にも実際に体験していただきました。
まだまだ課題はありますが、こういったことができると面白いのではないかと思っています。
長谷川
「GACHA(ガチャ)」について、ほぼ運転士なしということでしたが、過去にURでは大きい団地でトゥクトゥクの自転車版みたいなものを、行政の補助をいただいて導入しました。その時は高齢の方の足変わりとなっていたのですが、自転車なので当然漕ぎ手が必要になります。漕ぎ手の方はボランティアで、「私、やったるわ」という人を募るしかなかった。そこの担い手がいらないということは、すごくいいことだなと思います。最近のニュースでは、バス、運送屋さん、引っ越し屋さんでも、運転手の担い手がいないことが問題になっていますので、団地の中で自動運転ができたら幸せだと思いますので、この成功事例をうまく活用できたらと思います。
豊田
ありがとうございます。
防災イベントとして「防災キャンプ」を、東京の町田山﨑団地で行っています。大地震が起こり、ライフラインが使えない・家に住めないような状況が発生する可能性があるかもしれないということで、年1回ぐらいイベントとして、団地の大きな広場でテントを張って、一晩過ごしてみるといった企画をやっています。

一方で、地域資源の活用への取り組みへの意識や地域コミュニティに属する、あるいは参加する、参画するということに対する意識については、関心はあるが、具体的に行動していないという方がほとんどです。
コミュニティ作りのきっかけがない、参加するきっかけがないということが多いので、参加はしていないということなのかなという風に思っています。 こういった企画をどんどんやっていくことが、様々な方の参加の可能性を生んでいくのかなと思っています。
そこで、我々が1番活動している簡単な事例をご紹介します。先ほどから何回か出てきています花見川団地について、中村さんから紹介をお願いします。
中村
花見川団地は、その名の通り花見川という川が近くにあり、その川沿いに花見川サイクリングコースがあります。
団地の活性化をするためには、団地の外からも人に来てもらえるような団地にしたいと考えました。そこで、このサイクリングコースに来ているサイクリストの方たちに、団地に寄ってもらうような仕組みができたら、団地の賑わいが生まれるのではないかなと考えました。
こちらが、現地で行っているワークショップの様子です。サイクリングコースに来ているサイクリストの方々や、現地の住民の方、商店街の店舗の方々と一緒に、この団地でどういうものがあれば外から人に来てもらえるのかということを、みんなで一緒に議論するワークショップを定期開催しています。
中村
このワークショップの中で、アイデアとして生まれ、実際に形になったものが2つあります。まず1つ目が、「商店街バーガー」です。まず、パン屋さんでパンをもらい、次にお肉屋さんでハンバーグをもらい、次に青果店に行ってトマトをもらって…と、花見川団地の商店街のお店を1軒1軒回って、オリジナルのハンバーガーを作って行くというものです。外から人が来てもらう時に、特産品やお土産があることって大事だなと思ったのですが、新しく1から作るのではなく、先ほど地域資源というお話が出たのですが、すでにそこにあるものをうまく使って新しいものを作れないかと考えたものがこちらになります。
中村
2つ目が、「サイクルビンゴ」です。サイクリストの方たちに、参加してもらうイベントを企画しました。花見川団地の周辺に実際にある、橋、鏡などのイラストが描かれたビンゴの紙を作り、実際にサイクリストの方に自転車で回ってもらいます。見つけたら写真に撮っていただいて、ビンゴを完成させるというイベントです。実際にこちらの写真のように、多くのサイクリストの方に参加していただき、花見川団地をサイクリストの方に知っていただく良いきっかけになったと思っています。
豊田
このような取り組みですが、花見川団地が賑わうことによって、入居者が増え、そうすることでさらに商店街も賑わい、テナントが入る。テナントが入ることで、また団地が賑わう…そういった上昇スパイラルをどんどん作っていきたいと考えています。

この花見川団地では、商店街の中に無印良品も週1回出張という形で出店しています。洋服が欲しい、化粧品が欲しいなどご希望を聞き、次の週に必要なもの持ってきてくれます。スタッフと団地の方の間でもコミュニティが生まれています。
長谷川
団地にお住まいの方が商店街でパン屋さんやってみたいなど、そういう声も出てきているということで、上昇スパイラルが働いているのかなと思いました。
先ほどの中村さんからもあったのですが、今あるものをうまく活用しながら行うというのは、最初の10年前の住戸、住宅をどうしていこうかという時の考え方と、すごく合っていると思いました。この考え方を軸とするということは、その団地とそこでの暮らしを一緒に考えて行くうえで、すごく大事なことなのかと思い直しています。
豊田
ありがとうございます。
MUJI×URではなく、URさんの取り組み事例につきましてもご紹介いただければと思います。
熊谷
はい。URのCMの影響もあり、団地を建ててそれを賃貸するというイメージがすごく強いのではないかと思いますが、実はURは人と人との繋がりを大切にし、そのための社会課題にハード、ソフトの両面で取り組んでいくということを公団時代からずっと我々の代まで引き継いできました。例えばコミュニティ形成のためのイベントです。大小合わせて年間1,500件以上のイベントを運営しています。
熊谷
一例となりますが、ご紹介させていただきます。 左上は「URふるさと応援プロジェクト」という取り組みです。URは全国でまちづくりの実績がありますので、そういったネットワークを活用し、地域の特産品を団地で販売することで、地域をPRしたいというニーズと、団地にお住まいの方が特産品を買ってみたいというニーズにお応えしています。 右上は健康、医療、介護が体験できるモデルルームとして、森之宮第2団地で開設されました。地域の社会医療福祉法人・大学・行政が連携し、転倒防止の家具配置や、認知症の方が安心して生活できるようなちょっとした工夫を体験できるモデルルームです。左下は、西日本では今年初めて実施したのですが「DANCHIつながるーむ」と称して、夏休みの期間中に団地の集会所を開放し、子供たちが自習できる機会を提供しました。
熊谷
無印良品さんにも協力いただき、楽しく防災コンテンツを学べる、「いつものもしも」という企画を行ったり、団地樹木を使ったリアル団地樹木図鑑を実施してみたりと、自由研究に近いような子供が学べる機会も提供しました。右下にある写真が、武庫川団地の赤胴車です。こちらですが、阪神電車の車両として赤胴車という名称で親しまれたものですが、電車としての役割は一旦終え、その車両の一部を団地に持ってきた事例となります。集会所として改装し、今では集会所として利用いただけます。地域のシンボルを引き継ぎ、地域と一体となってコミュニティの場を提供するという一例となっていると思っています。
豊田
ありがとうございます。
無印良品でも、地域の活性化を非常に大きな課題として挙げています。
URさんのこういういった取り組みと、共同させていただけるのは非常にありがたいことですし、非常に相性がいいというのは、こういったところでも現れているのかなと思います。