MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
高島平団地リノベーション完成 ここだけの話 2014

※このレポートは、2014年1月10日に東京エコッツェリアで行われた、パネルディスカッション式のトークイベントを採録しています。

水井
これは、押入れ部分の解体状況です。解体にあたっては、どこまで残すか議論がありました。天鴨居は残しで、中鴨居は途中で撤去しています。ただし、残った中鴨居はそのまま活用するなど、工夫をしました。また、昭和40年代ではコンクリート面がしっかり見えていて、品質的にもきれいに見えるので、良好な住宅ストックであることも再確認できました。
水井
次は天井です。天井も苦労しました。改修前はひる石天井仕上げといって、直径1mm以下の丸い粒状のものを天井に吹き付けて仕上げてあります。色が薄いアンバーであったため、今回の改修では白に着色する必要があったのですが、はじめは、同じ材料の白系のものを吹き付けました。しかし結果はうまく色が出なかったのでボツでした。

次に、直接塗料を塗ろうとしましたが、ひる石天井の状況より上手く施工ができないとのことでした。最終的には、ひる石仕上げの上にボンドを塗り固めてから、その上に塗料を塗る方法で実施しました。これは結果として上手くいきました。ただしちょっと工事費は高めにつきましたが・・・

既存の木部塗装もいろいろ検討しています。敷居、鴨居、長押や、木製仕上げの壁、建具が該当部分となります。若い木材なら、それほど影響はでないのですが、築40年以上経ってますから、木部も日焼けや経年変化をしています。その結果、灰汁やヤニ(樹脂)が表面上にあり、白色塗装をすると浮き出てしまう傾向がありました。それが浮き出て来ないように(きれいな白色になるまで)、何度も重ね塗りを行っています。

また、部分的ですが塗装をしない木部もあることから、どこまで残してどこまで塗装するか、などについては、皆で現場へ行き、実際の状況をみながら、一番良いデザインテイストとなるように数回の調整をしました。

さらに今回は、無印良品さんからの要望もあり、タイルの上に塗装することにもチャレンジしています。タイルの上の塗装はあまり実施しないのですが、今回特に難しい浴室のタイル塗装を実施しました。既存はモザイクタイルで細かい目地ピッチですが、その上に白色で塗装してみると、かなり力のあるデザイン表現となり、ユニットバスでは出せない、味のある浴室空間が創れたのではないかと思っています。
水井
仕上げの細かいところにも気を配っています。木口を見せない留め加工などひと手間加えることで、仕上げを引き締めています。

また、塗装壁の特有のクラックなどを発生させないようなボードのすかし貼りなども実施しています。ハンガーパイプの設置についても、ダクトとのデザイン性を考え、金物を表しで見せるなど、細かいところも気を配って仕上げることで、全体的なイメージの向上をはかりました。
水井
これは、中鴨居を吊っているワイヤーです。建設当時の内装材をそのまま利用していことから、中鴨居などは経年変化で、木のそりなどが発生する場合もあります。

この写真は、中鴨居が下に撓んでしまっていたので、ワイヤーで吊ったものです。アクリル欄間の間に収まるように検討し、試行錯誤して、現状の形状となりました。改修業者さんの努力でイメージ通りの形でできました。

ここからは、内部仕上げのビフォーアフターを紹介します。
水井
左側は、改修前の押入れの状況です。改修後は、見える線が非常にすくなくなり、空間としてのシンプルさをつくり出すことができました。
水井
同じところを後ろの部屋から見たものです。襖を外すと、ゆるい仕切りとなり、一体的な空間として利用することも可能です。
水井
背高の襖をあけはなすと、こんな空間となります。可変性のある、室内空間となっています。住戸の縦方向に天井から吊っている、小天井が連なっており デザインアクセントとなりつつ、奥行き感も感じさせます。
水井
また、こちらは、改修前は襖でしたが、木製引き戸を設置しています。質感の向上と、木によるナチュラル感、無印良品らしさを醸し出しています。襖の溝に、Vレールを設置して、戸車による引き戸とすることで、スムーズな開閉ができるようになりました。
建具の表面は、木材の表し仕上げで、触れれば木の材質感を感じることができます。
水井
こちらは、洗面化粧室の床の仕上げです。改修前はモザイクタイル張りでした。 タイル部分は、クリーニングしてもなかなかきれいにはならず、今回は左官補修により、表面を平滑にし、そのうえからビニール床シートを貼りました。シンプルかつ清潔感があります。また、石のように見えるところは、人造大理石研ぎ出しのところです。こちらも建設当時のものを再利用しています。コントラストが面白いかなと思います。
水井
こちらはトイレです。もともと床はモザイクタイル貼り仕上げでしたが、使い勝手として、廊下とトイレと段差があったので床を上げ、段差解消とともに、床仕上げもビニール床シートとしました。便器の色も白で統一し、ペーパーホルダーとタオルリングをアルミ色でアクセントとすることで、清潔感のある、シンプルながら絞まった空間となったと思います。
豊田
今年度開発した商品をご紹介します。まずは「ダンボールふすま」についてです。
豊田
一般の物件でURさんが使われているのが、このような襖です。ダンボールの表面に紙を貼って、周囲をプラスチックで補強しています。今回のプロジェクトでは貼ってある紙やプラスチックをなくして、ダンボール自体の素材感を出したほうがこの空間に合うと思いますし、コストも抑えることができると考えました。
豊田
それでできたのがこの襖です。左右の側面はダンボールのギザギザをそのまま出しています。上下には金属レールがついて、取手も金属がついていますが、当初はその金属もなしで、ダンボールのみで考えていました。が、URさんの厳しい基準によるご指摘で最低限の金属をつけました。
豊田
これは、URさんが一般物件で使われている欄間です。最近の住宅では欄間もあまり見られなくなってきましたが、魅力的な機能があります。夏はあけることで、風が通り涼しくなります。また、冬は閉めておくことで暖かく過ごせます。目線の高さより上なので、あけても隣から姿を見られません。
豊田
今回はその機能もふまえて、透明なアクリルで欄間をつくりました。そうすることで、隣の部屋と天井が繋がり、視線が広がって、限られた部屋でも広く感じることができます。このように昔から考えられている暮らしの知恵を生かした商品を開発しています。