研究テーマ

成長(後篇)/収穫/調理

5 成長(後篇)/収穫/調理

野菜栽培キットを使ったベランダ菜園づくりについて、モニターレポートの最終回をお届けします。

今回の報告テーマは、収穫と調理です。野菜栽培キットから、どのような野菜が穫れたのか、また、その野菜はどんな味わいだったのか、さまざまな報告が寄せられました。

※ご紹介している写真はすべて、本プロジェクトのモニターのみなさんが撮影しました

ポイント1
収穫前後の反省と気づき

いよいよ実りの季節を迎えたベランダ菜園の野菜栽培キットでしたが、大きくなり、収穫が近づくにつれて、あらたな苦労やアクシデントも見られたようです。

  • 野菜や植物を育てている方にとって、一番の気がかりは長期の不在。こちらのモニターは、「7月に家族で旅行したのですが、湿気がないと猛暑で厳しいかなと思い、その間、お風呂に置いておきました」という試みを報告。
  • 多くのモニターが悩まされた鳥の被害について、ちょっと変わったレポートも。「グリーンレタスが鳥に食べられたので、対策として母親が水をいれたペットボトルを何本もまわりに置いてくれました。猫よけでは? と思ったのですが、それ以来、鳥の被害にあっていないので、意外と効果があるのかも」。ペットボトルの水をそのまま水やりにも利用できて、便利だったという、おまけつき。
  • 順調に大きくなっていた2種類のレタスを、7月上旬に早々と収穫へ踏み切ったモニター。「2回ほど外葉を収穫しても、さらにどんどん大きく成長して元気いっぱいでしたが、いろんな蝶が飛んでくる季節になったので、卵を産みつけられるまえに思い切って収穫しました」。
  • こちらは青虫の被害に遭ってしまったモニターの例。「7月7日に、ひと晩で食べられてしまった」というレタスをよく見ると、10匹以上の青虫が......。「ひと晩のうちに全滅してしまいました。ベランダが2階だから虫よけ対策は必要ないという考えが甘かった ようです。あらためて、野菜を育てる難しさを知りました」。
  • 「サニーレタスは暑かったせいか、あっという間に薹立ちしてしまいました」というモニターからの写真。既に花芽が伸びてきています。「抽台(花芽ができると共に茎が伸びること)が早かったので、大きい葉になったのは下の方だけ。上に伸びるにしたがって、小さい葉になりました」。
  • 「天まで伸び放題」となったグリーンリーフレタス(中央左)の写真。右隣のミニトマトに比べても、とても背が高く伸びてしまいました。「レタスが成長するか心配していましたが、それを超え、収穫時期を大幅に越してしまいました。"これくらいが食べごろ"のような参考資料があればよかったと思いました」。総じて、レタスは収穫のタイミングを見極めるのが難しかったようです。
  • こちらは、春先の寒さの影響などから、生育が遅れ気味になってしまったグリーンリーフレタス。かなりやせっぽっちに育っています。「リーフレタスの茎が長すぎて、支えがないと、葉の重みでポキっと折れてしまいます」という姿は、本当にか細いもの。ですが、「少しずつ収穫ができています」。なにより、ここまであきらめずに育てたモニターの愛情が伝わってきます。
  • 一方、やはり春先の寒さで、「発育が遅めでしたが、7月になると急に成長し始め、プランターの土が見えないぐらいに葉が広がりました」という2種類のレタス。窓が張り出したような小さなベランダでも、お陽さまの光を浴びて、立派に収穫を迎えました。「サニーレタス(奥)、グリーンリーフレタス(手前)ともに成長が遅めでしたが、最終的には大きく育ったと思います」。
  • こちらも、「発育が遅めでしたが、7月になると急に成長し始め、たくさんの花と実をつけ始めました」という、とげなしナス。有機肥料の緩やかな効き目が、じわじわと効きはじめたこともあるようですが、「途中で青虫やてんとう虫だましといった害虫が葉にいましたが、こまめなチェックで駆除できたことも、成功した理由かと思います」と。
  • 5Lキットの株立ちミニトマトが、熟した実と青い実の混在している状態だったため、「ぜんぶ成熟してから収穫しようと思い、赤く熟れるまで待って、一日で全部収穫しました」というモニター。枝の上で完熟させると甘くなるとの説もありますが、「それでよかったのかどうか、熟した実から順に収穫するべきだったのでは? と思いました」。
  • 20Lのミニトマトを立派に成長させていたモニターから寄せられたのは、「実の成長過程で雨に当たって雫がたまっていた一番下の実に多く見られ」たという、底面にできた黒いしみの写真。「なるべく雨に当たらないようにするか、雨あがりには雫を拭き取った方が良いと思いました」という教訓が添えられていました。
  • こちらは、「強風で20Lのミニトマトが株元ごと倒れ、青い実がいくつか落ちてしまった」ため、安定の良いソテツの鉢(写真右)にひもをかけて支えにしたところ。実際、このミニトマトは写真で見えている倍ほどにまで、背が高く伸びていました。隣の鉢を支えにしたことで、鉢が密集したものの、「風通しを良くすることは大切なことですが、ある程度の支えはもっと必要ですね」とのこと。
  • 大きく育ったミニキュウリ(写真左)の「勢いのなくなったつるを剪定した」モニターは、「新しく元気なつるが伸びてきて、さらに実をつけはじめている。また勢いがもどってきた」(写真右)と、剪定の試みに手応えの様子。一方、悩みは、成長の早いミニキュウリが大きく育ち過ぎてしまうこと。「以前、出張で数日家をあけていた時にどれも実が大きくなりすぎたのですが、今回もそうなった実がふたつほど......」。
  • 収穫のタイミングを逃したミニキュウリが大きくなりすぎた例は、多くのモニターから寄せられました。こちらの方は、「葉の影で成長してて、収穫し遅れた」大きなミニキュウリを、通常のミニキュウリと並べて記念撮影。
  • ミニキュウリを大きく育て過ぎてしまう影響は、そのミニキュウリの味だけにはとどまらなかったようです。報告には、「他の実を大きくしすぎたせいか、このように不出来な実もついてしまいました......大味になってしまうだけでなく、他の実の成長を阻害するような影響も出てしまう気がする」という、独自の考察も添えられていました。
  • コンパニオンプランツについては、何人かのモニターから興味深いレポートが届きました。こちらの方は「(虫を引き寄せるといわれる)ミントを近くに置いたので、ミントは虫に食われていますが、その分、今のところ、野菜には虫が付いてないです」と、証拠写真をパチリ。
開発担当者より 収穫を間近に控えたモニターレポートを見ると、順調に大きくなった野菜があった一方で、この時期ならではの失敗や反省もいくつか見られました。葉もののレタスについては、一日で全滅してしまったという、青虫の被害も寄せられています。虫よけにまつわるレポートは前回にも紹介しましたが、家庭菜園づくりにおいてはやはり、虫への気配りが、ひとつの肝になってくるようです。 また、同じキットを使っても、環境や育て方の違いで、ずいぶんと成長具合が変わりました。例えば、お菓子づくりキットのように、誰もが簡単に、同じように育てることのできないところが、野菜づくりのおもしろさであり、難しさとなります。まして今年は異例の寒さとなった春、酷暑と呼ばれた夏と、極端な気候が続き、家庭菜園づくりにも困難が伴いました。
その一方で、レポートにもあるように、困難に対して独自の工夫や気づき、試みを考え、実践する方も増えてきました。野菜の栽培は決して簡単ではありませんが、だからこそ、自然を相手に自ら考え、学び、いろんな工夫を試してみる。そういったプロセスにこそ、野菜づくりの楽しさの一面があるのではないかと、うまくいった方といかなかった方、両者の報告を通じて、考えさせられました。

ポイント2
自家製野菜の調理レシピ

待ちに待った収穫を終えたら、今度はいよいよ野菜を味わう番です。
モニターのみなさんは、どのようなレシピで自家製の野菜を楽しんだのでしょうか。さっそく写真とコメントで紹介します。

  • まずは素のままを
  • しっかり赤くなったミニトマトを収穫。「はじめの1個は、そのままパクリと食べました」という味は、「皮がしっかりしている! 甘い! 味が濃い!」と大絶賛のおいしさ。
  • 「初収穫の一本は、氷で冷やしてスティックで食べました」というモニターの、おいしそうな1枚。このように、最初のひとくちは、"素のまま"の味を楽しんだというレポートが多く寄せられました。
  • ミニキュウリの食べ方で多かったのは、縦に長く切って、塩や味噌、マヨネーズなど、好みの味をつけて食べるというもの。こちらのモニターも、「キュウリの味がダイレクトにわかるように、水で洗ってスティック状にしたものを、味噌を少しつけて食べた」とのこと。ちなみに、「基本おいしかったのですが、収穫が少し遅れると、皮が苦くなりました」という気づきも。
  • ご夫婦で手づくり野菜を味わったモニターからの、すてきな一枚。「野菜の味を引き立てる調味料で食べたらどうか? と思って」、やはりシンプルに味噌をつけたスティックに。やはり、自分たちで育てた野菜の味は格別だったようです。
  • こちらは先にも紹介した、やせっぽっちに育ってしまったグリーンリーフレタスの"その後"。とても彩りの良い、かわいらしくて素敵なサラダになりました。「想像以上に綺麗なグリーンだったので、それを生かして食卓にだしたいな......と。シッカリした食感ですが、やさしい味で、サラダだと、ドレッシングとの相性がとても良いです」。
  • 「せっかくとれたての新鮮な状態で食べられるので、生で食べる料理に」と、サニーレタスを、タコライスやサラダ冷麺(写真)に添えたというモニター。ちょっとした付け合わせだからこそ、ほしい分だけ、ささっと収穫できると、うれしいもの。とはいえ、やはり難しいのは、おいしく食べられる収穫期の見切り方。「レタスが抽台しはじめてからは、葉がかたく、苦みが増してしまいました。抽台する前に食べきっておけばよかったなと思いました」。
  • たくさん獲れたミニトマトが、おいしそうなオードブルになりました。「うちで育てた穫れたてバジルと、市販のモッツァレラチーズをトマトにのせて、ハーブソルトとオリーブオイルをふりかけ」た、シンプルなレシピ。「普通のトマトを輪切りにして時々食べていたメニューですが、いつもとは違う美味しさでした」。
  • 複数の自家製野菜を同時に楽しんだモニターは、意外に少数でした。こちらは、「一緒に楽しみたかった」ということで、ミニトマトが実るまでグリーンリーフレタスの収穫を遅らせてつくったという、手づくりサラダ。「トマトは多少酸味があるものの、味が濃かった。レタスは、収穫時期が遅かったためか、多少エグミというか苦味が出てた」とのこと。
  • 同じく、収穫の時期が一緒だったという別のモニターは、グリーンリーフレタスとミニキュウリを組み合わせて、シンプルな自家製サラダに仕上げています。「ミニキュウリはほんのり甘みがあり、どちらかといえば瓜に近い食感に思いました。レタスは青野菜にあるような苦味が感じられず、しゃきしゃきした食感も良く、おいしくいただきました」と、味わいにも大満足。
  • 「小さくちぎるのがもったいないし、そのままの味を味わいたかったので」、大きなレタスの葉をメインにしたレシピは、韓国風ゆで豚。「レタスに、大葉、白髪ねぎ、ゆでた豚肉、キムチをのせ、コチジャンでつくったたれをつけて食べました。もちろんビールと一緒に!」。そして、気になるレタスの味は、「めちゃくちゃおいしかったです。思ったよりも、しゃきしゃきしてました」。
  • こちらは、自家製のミニキュウリで、お客さまをもてなしたという報告です。「この日はアメリカからお客さんが来ていたので、ミニキュウリを手巻き寿司の一品に」。日本ならではのごちそうレシピと心づくしのおもてなしが、手づくりの野菜を取り入れることで、いっそう気持ちのこもった思い出の味にグレードアップします。
  • 「素材を新鮮なまま食べたかったので」、選んだレシピは、食べやすい大きさのてりやきチキンサンドイッチ。鮮やかなグリーンリーフレタスの緑色と柔らかそうな葉っぱのかたちが、とても食欲をそそります。感想はずばり、「新鮮な味がしました」。
  • 「日常的に使う野菜なので、できるだけ"いつもどおり"の形で食べたかった」というこちらのモニターは、休日の朝に食べるベーコンエッグに獲れたてのレタスを添えて。「スーパーで売っているレタスのシャキシャキとしっかりした歯ごたえがなく、フワフワして頼りない歯ごたえでしたが、はじめて食べる食感で、美味しかったです。ほのかに感じる苦味も、上品な味でした」。ちょっと贅沢な休日の過ごし方です。
  • こちらも色鮮やかなレタスを付け合わせにした一枚。「レタスは収穫時期を逃していましたので、固かったですが、おいしかったです。少し苦みがあったかな」。ちなみに、同じくベランダで育てていたミニトマトは、まだ青い実で、食べるには早すぎたのだとか。「本当はトマトのところに、収穫したものを置きたかったです」とのひとことも。
  • ミニトマトとグリーンリーフレタスを同時に収穫できたこのモニターは、無印良品の炒めごはんの素を使ったタコライス(手前)と、じゃこサラダ(奥)の2品を献立に。「種まきから自分でつくった自家製野菜なので、お皿も自分で絵付けをしたオリジナル野菜プレートを使いました。野菜もお皿も自分でつくった一品ものなので、盛り付けをしたあとニンマリしてしまい、嬉しかったです」。
  • 生のまま楽しむ、ひと手間レシピ
  • 素材のおいしさを味わう、生食のレシピも、ちょっとひと手間を加えるだけで、また違った楽しみ方ができます。こちらのモニターは豊作のミニキュウリを、「たたきキュウリにして、ネギとごま油のたれで冷蔵庫で冷やした。たくさん食べられるし、おいしい」という特製レシピで、涼感あふれる一品を夏の食卓にプラス。
  • 「野菜ぎらいの子ども(小学2年生・男子)ですが、収穫したものをお皿にのせて、なんとおやつでも食べることができました」という、うれしい報告もいただきました。「自分で収穫して、その場で切って、クラッカーにのせるだけ。間にマスカルポーネチーズをぬっています。手軽にそのままの味。野菜の味を知り、『な~んだ、ぼく野菜食べられるじゃないっ』と言っていました」。
  • 「妻と一粒ずつ、生でいただいた後、残った実はマリネに」という写真は、まるで宝石のように美しい仕上がり。「素材の味を生かしつつ、より美味しくしたいなと思って、インターネットでレシピを見つけました。熱湯で茹でた実を、皮をむいて、はちみつ、酢、オリーブオイル(各大さじ1)と塩こしょうを混ぜたものに漬け込み、冷蔵庫で半日ほどねかせる、というものです」。
  • 生で楽しむレシピの一環として、新鮮な野菜ジュースをつくった方もいました。「家庭菜園をやっている友人からたくさん無農薬野菜をいただいたので、うちのキュウリと共に、ミックス野菜ジュースに」。家庭菜園での野菜づくりを通じて、友人同士の新たなコミュニケーションも、より一層深まったことでしょう。
  • こちらは、夏らしい冷製スープをつくったという報告。ガラスの器と淡いグリーン、そして美しい盛り付けが、とても上品かつ涼やかな印象です。「キュウリのレパートリーが切れてきたので、本を見て、『キュウリとディルのスープ』に挑戦。ヨーグルトベースのさっぱりした冷たいスープで、なかなかおいしかった」と、できばえにも満足。
  • 加熱調理で本格ごはん
  • 「獲れたての野菜なので、できれば歯ごたえを残して調理したかった。そして夏なので、さっぱりとしていて冷たいものにしたかった」ということで選んだのは、ナスの南蛮漬け。「皮付きのままレンジで熱したナスを、すりおろしたタマネギ・ショウガと、醤油・お酢・砂糖でつくったタレに漬け込んで冷蔵庫で冷やした」という、油を使わないヘルシーなレシピは、雑誌で紹介されていたものとか。
  • 2種類のレタスを育てたこのモニターは、「今まで食べたことのあるレタス料理にして、スーパーで買ったレタスと食感を比較したかった」という理由から、獲れたてのレタスで、レタスチャーハンとレタスの味噌汁の"レタスづくし"を満喫。「葉一枚の厚みが違うと思いました。味も甘みを感じられるし、食べていて美味しい」と、食感にも味にも満足。
  • 小さなお子さまと野菜栽培に挑戦していたモニターからは、親子で一緒に味わったやさしい献立が届きました。「とげなしナスは、ミートソースの具材として使用しました。子どもの好きなメニューに入れて食べさせやすくしたかったので」。毎日観察していた、とげなしナスを使ったミートソーススパゲッティ、お子さまにとっても、きっと特別おいしかったに違いありません。
  • ミニキュウリやミニトマト、2種類のレタスがおもに生食で楽しまれていたのに対し、とげなしナスのレシピは、加熱調理がメイン。こちらのモニターは、「漬物やその他も考えたが、やはりナス1本で楽しみたかったため」、豪快な焼きナスをチョイス。「思ったよりもやわらかく、おいしかった」と、やはりご満悦。
  • 「素材を生かしたかったのと、ストックがあった素材を使いたかったため」、新鮮なミニキュウリをたっぷりと使い、きくらげと豚肉のごま油炒めをつくったモニター。キュウリの食感を贅沢に楽しめる主菜のお味は、「普通のキュウリよりも実が詰まっていて、おいしかった」。
  • 保存食づくりにも挑戦
  • 大きくし過ぎたり、たくさん獲れて余ったミニキュウリで、ピクルスや漬物をつくったモニターが、ちらほらといました。こちらの方は、「 6月後半は毎日に何本も収穫できたので、人におすそわけしたり、保存がきくようにピクルスにもしました」とのこと。
  • このモニターも、大きくなりすぎたミニキュウリを漬物にしたひとり。生では食べづらいできばえでも、手を加えることで違ったおいしさを楽しめます。「収穫の遅れたデブきゅうりは、大味で固かったので、ぬか漬けと、炒め物にしました」。お茶受けに、ごはんの友に、自分で仕込んだぬか漬けの味は、きっと格別です。
  • 先に収穫したとげなしナスを浅漬けに(右奥)、遅れて収穫したものを揚げナス(左手前)にして、同時に食卓で楽しんだモニター。「浅漬けは日にちがたってしまい、あまりお見せできる状態ではなくなってしまいました......」とのことですが、どちらもとてもおいしそう。「これから実になりそうな残りのナスは、麻婆ナスにしたいです」。
  • ドライトマトづくりに挑戦したモニターもいました。「レンジやオーブンで簡単につくる方法もあるようですが、しっかりと7日間天日干しすることにしました」。画像は干しはじめの一枚。「できあがったらオリーヴオイル漬けにして、炒め物やパスタに使いたいと思います」。
開発担当者より 家庭菜園で収穫した新鮮な有機栽培の野菜を、どう食べるか。集まったレポートを見てみると、やはり、最初は素のままの味を楽しみたい、というのが、ほぼすべてのモニターに共通した行動でした。
一方、調理の例については、ふだんのおかずの彩りに使ったものから、本格的な主菜メニュー、さらには保存食まで、本当にさまざまなレシピが集まりました。
そんな中で目に付いたのは、野菜をいつ収穫すればよかったのか、タイミングに迷ったという報告でした。食べた野菜の味わいを振り返ってみても、収穫期のズレや獲り入れるタイミングの見極めの違いが、モニターそれぞれの感想の違いとなって表れているように感じました。 とはいえ、種から育て、時間をかけ収穫を迎えた手づくりの味は、それだけでもう、誰にとっても、格別なものだったようです。野菜のできばえにかかわらず、どのモニターも最初のひとくちは、その"特別な"味わいに、「おいしい」と口をそろえていました。

ポイント3
ベランダ菜園づくりに挑戦して、よかったこと、ためになったこと

ベランダ菜園プロジェクトでは、ベランダという身近な場所を舞台としながらも、私たちを取り巻く偉大なる自然を相手に、野菜を種から育て、約半年にわたって育てるという、きわめて難易度の高いモニタリングに挑戦していただきました。
もちろん、中には途中で野菜を枯らしてしまったという失敗例も、少なからず含まれています。

今回、プロジェクトからの最後の質問として、「このモニタリングに参加してよかったと感じたこと。ためになったと感じたこと」を、モニター全員に伺いました。
自分の手で野菜の栽培に挑戦したモニターだからこそ、感じ取ることができた経験の数々。それぞれが、どれも重みを持って響く言葉です。

  • はじめて、種から野菜づくりをはじめ、肥料の大切さ、虫除けの大変さなどの経験をし、それとともに、成長が日々とても気になり楽しみでした。 このような経験をさせていただいたことがとても良かったです。

    やはり、何事も自分が経験することで大変さを体感し、困ったことから学ぶことなど、体験のすばらしさをあらためて感じさせていただきました。
    野菜を育てる大変さがわかったことがよかったです。スーパーで野菜を見るときの目が変わりました。
  • 野菜の育ち方、どんな虫がくるのか、住まいの環境を再認識しました。
    4月5月の寒さのために成長が遅くなったり、夏になると一気に成長が加速したり、自然のリズムを気温や風向きなど以外の部分で身近に感じ、その度に植物、そして自然は素晴らしいと感じられた。
    よかったのは、無農薬で野菜が食べられたこと。
    野菜のおいしさ、とれたての香りと味がわかったこと。
  • 実際自分で、育て、食べられるまでの過程、苦労、手間を感じることができたのが、とても貴重な体験だったと思います。
    虫除けの大変さを知り、逆に今まで食べていたきれいな野菜は、どのような過程を経て、できているのか不安を覚えました。
    野菜は適した気候と温度がないと育たないことが、あらためてわかりました。
    スーパーや八百屋で買う野菜を大切にしようと思わせられました。
    よかったのは、レポートを書くための写真を撮ったり、水やりや虫の駆除などの作業のために、自然と早起きをするようになり、生活のリズムを整えることができたこと。
  • 時間の経過を意識しながら観察できた。
    そして、野菜の生長の過程をはじめて見ることができた。トマトがどんな風に花が咲いたあと実をつけるのか。茄子の花を見たのも初めてでした。
    今まで何度か野菜づくりに挑戦したが成功しなかったので、今回の機会で成功して、野菜づくりの楽しさ、大変さを学べたこと。
  • 楽しかったです。
    日々の変化、成長を見守ることが、毎日の楽しみでした。

    私たちは、なんでもすぐに結果を求めてしまうし、どんなことでも「なるべく早く!」と思ってしまいがちだけど、自然というのは、それにみあった時間が必要で、種を植えたら、どんなに急いでも、あせっても、見守ることしかなく、どれが当たりで、どれがはずれかは、やってみないとわからない。
    なんでも自分の力でどうにかなる、という思いあがり?を、見直すきっかけになった気がします。
  • はじめての野菜栽培......。
    モニタリングが、始める良いキッカケとなり、野菜づくりをしている友人と、より深く交流を持つことができたり、農家の方々が、日々、目をかけ、大変な思いをして、育ててらっしゃる......ということを身をもって知ることができ、以前よりも、シッカリ、美味しく食べきろうという気持ちが強くなりました。
    育てたことがない野菜を収穫するところまでできたことは、かなり嬉しかったので、他の野菜にも挑戦したくなりました。
  • 私が小学生のときに、うちの近くで祖父母が仲良く小さな畑をやっていました。ほうれん草やナスやきゅうりなど、野菜ができるとよくうちにも持ってきてくれていたのですが、この齢になって初めて野菜栽培を試みて、祖父母が楽しんでいたことを同じく経験できてよかったです。
    祖父はだいぶ前に亡くなったのですが、祖母は年齢もそこそこになって(93歳くらい)、毎日楽しめるものが限られてきているので、プレゼントしてもよいかなっ、と思いました。
    何事にも愛情を注ぐことの大切さを、あらためて学べたこと。
    スーパーでは毎日レタスが売っているけど、こんなに時間をかけて、手間もかけて、やっとできて、たったこれだけ。
    ありきたりだけど、食べものを大切にする気持ちが芽生えました。
  • 育てたことがない野菜を収穫するところまでできたことは、かなり嬉しかったので、他の野菜にも挑戦したくなりました。
    野菜の育ち方が、目に見えてわかったこと。
    有機栽培について知ることができたことが、とても勉強になりました。
  • 野菜は、草花以上に、毎日、様子を見てあげないといけないんだということを、身をもって知ることができました。
    同じ作物でも、育てる人によって栽培方法や生育状態が違うことを学べたこと。
    意外とキュウリが育てやすいということがわかった。
    あと、土で成長がずいぶん変わることもわかった。
  • 有機肥料を使用する際の注意点を知ったこと。
    ナスの有機肥料が余ってしまったので、ほかの作物に使用したところ、鉢の中が有機肥料の発酵熱で蒸れ、根腐れして枯れてしまいました......。個人的には、コンテナ栽培には化学肥料の方が向いているなと思っています。
    実際に自分で育てた野菜を自分でいただくという行為を通じて、ありがたさを感じることができ、普段スーパーや八百屋さんで買い物をするときにも野菜に対する目線が変わりました。
    それをつくってくれている人への感謝の気持ちも湧いてくるので、大量生産品よりも、つくっている人の顔が見えるような農作物を買いたいと思うようになりました。

ポイント4
ベランダ菜園づくりが、さらに進化しました

最後に、モニターが今回の野菜栽培をきっかけに取り組んだベランダ菜園づくりについて、写真を交えて紹介します。
これらのモニタリングを通じて寄せられたレポートは、緑のある暮らしを楽しむためのヒントとして、ベランダ菜園プロジェクトの新たな商品開発にも、さまざまな影響を与えています。

  • 以前、ご紹介した、床面に植物の鉢を並べていたモニターのベランダが、すっきりと模様替えをしていました。「モニターをはじめて以降、ベランダの植物の数が少しずつ増えた。それに伴って、思い切ってレイアウトの改造を試みた」とのこと。「妻が、使い古しのラックを改造し、植物用の棚を作成。ベランダにそのラックを置くことで、見た目もすっきりし、とても いい感じ」。
  • 「部屋の中にいながら、水やりや収穫をすませたい! というめんどくさがりや根性と、緑を観ながら食事がしたいという願望から」、窓際にグリーンを飾ったシェルフを設置したというモニター。「今はハーブと観葉植物だけですが、いずれは野菜も育ててみたいです」と、より一層の意気込みも。
  • 栽培キットが置ける幅の小さなベランダでも、とげなしナスと2種類のレタスが、無事に立派な収穫を迎えました。日当たりと水はけの良さがあるなら、家庭菜園づくりにおいて、場所の広さ自体は、さほど重要ではないのかもしれません。
  • ベランダの隅で、ちょうど縦の位置にふたつ連なったミニキュウリ。まるで観葉植物のように大きな緑色のつややかな葉っぱと、緩やかに伸びあがるつるが、よく見ると、とてもきれいです。いのちあるグリーンの存在が、無機質な集合住宅のベランダに、緑のある心地よい空間をつくり出します。
  • 植物のある暮らしは、少しずつ成長を続ける生命の営みを、身近に感じる喜びの積み重ねでもあります。こちらのモニターは、「次々にでてくるミニキュウリや、つるが成長を求めてクルクルさまよっている様子に癒されました」と、かわいらしい写真を思わず撮影したのだとか。毎日が、うれしい発見の連続です。
  • 今回のベランダ菜園づくりについては、「野菜がどのようにできるかを、子どもと一緒に楽しんだ」、という報告も寄せられています。毎日少しずつ野菜が大きくなる姿を、部屋から一歩外へ出ただけの身近な場所で観察できるのも、ベランダ菜園づくりの醍醐味です。
  • とげなしナスの収穫をお子さまと楽しんだこちらのモニターは、モニタリングを通じて最もためになったことを、「自分自身もそうですが、子どもにも食べ物をつくることの難しさと大切さを教えることができたこと」だと振り返ってくれました。言葉ではなく、経験だからこそ、伝えることができたのかもしれません。
開発担当者より "住まいに最も身近な屋外スペース=ベランダで家庭菜園をつくる"、という今回のモニタリングを通じて、モニターのみなさんには、ベランダで過ごす時間そのものについても、あらためて考えていただきました。 その結果、ある方は、よりくつろぎやすいベランダへの改装を踏み切り、ある方は現状のベランダに棚を入れて整理整頓に取り組み、ある方は野菜だけでなく、花や植物にあふれた公園のような緑のベランダづくりを目指し、またある方はベランダで楽しんだ野菜や草花をキッチンやリビングにも取り入れたいと考え、......などなど。
ベランダで野菜を育て、家庭菜園づくりに挑戦したことをきっかけに、モニターのみなさんはそれぞれ、さまざまな関心から、ベランダや家で楽しむ緑のある暮らしについて、考えたり、試行錯誤をはじめたりしました。
プロジェクト一同、今回のモニタリングを通じ、あらためてベランダという空間の持つ可能性と、緑のある暮らしがもたらす日々の豊かさについて、思いを深めるに至っています。 さて、この先ベランダ菜園プロジェクトでは、今回のモニタリングから得たレポートを通じ、はじめて家庭菜園づくりに挑戦する方に適した野菜栽培キットを考えるのはもちろんのこと、より広い視点からも、「緑のある暮らし」を楽しむ商品について、考えていきます。 以前のレポートでもお伝えした、3つの視点。「過ごしやすいベランダのしつらえ」、「はじめての方にも失敗の起こりにくい工夫がある野菜栽培キット」、そして、「住まいの中にいても楽しめる、植物や花による癒しの取り入れかた」......これらの視点から、新しい商品開発を進めています。

プロジェクト終了
モニターの声をもとに、緑のある暮らしを楽しむ商品開発がはじまります

ベランダ菜園プロジェクト「野菜栽培キット」モニタリング報告の最終回、いかがでしたか。
ぜひ、来年の春にはみなさんも、ベランダでの野菜づくりに挑戦してみてください。

無印良品ではそのために、来年春の完成を目指して、ベランダ菜園づくりをより楽しんでいただけるような商品の開発を、すでにはじめています。

今回のモニタリングでは、野菜栽培キットの生育レポートと同時に、ベランダを含めた住まいの環境で、緑のある暮らしを楽しむこと全般についても、質問とレポートのやり取りを続けてきました。
そして、浮かび上がった3つの視点......「過ごしやすいベランダのしつらえ」、「はじめての方にも失敗の起こりにくい工夫がある野菜栽培キット」、「住まいの中にいても楽しめる、植物や花による癒しの取り入れかた」を中心に、緑のある暮らしをひろく楽しめるようなモノづくりへ取り組んでいます。

本プロジェクトは、いったんここで終了となりますが、今回のモニタリングを通じて生まれた新しい商品については、すべて、「くらしの良品研究所」でみなさんにお知らせしたいと考えています。どうぞ、楽しみにしていてください。

最後に、約半年もの長きにわたってベランダ菜園づくりに挑戦をいただいた30名のモニターのみなさんへ、心からの感謝を捧げて、本プロジェクトの終了とさせていただきます。

ありがとうございました。