


MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
トークイベント「築200年の団地の未来を考える」
※このレポートは、2019年1月20日に無印良品のリノベーション 青山店で行われたトークイベントの模様を採録しています。
- 豊田
- ここからは無印良品のWEBサイトで展開している企画「築200年団地」について、ご説明します。
日本に団地が誕生して、約70年が経ちます。100年にとどまらず200年の存続を目指し、これからの団地の未来はどうなっていくべきかをみなさんと一緒に考えていこうという企画です。
最初に、鉄筋コンクリート造の集合住宅の歴史を振り返ってみましょう。現存する最古の集合住宅だといわれているのは、1932年、大阪に登場した2階建てのトヨクニハウスです。坂田さんは実際見に行かれたとのことですが、いかがでしたか? - 坂田
- 外観は歴史を感じさせますが、お部屋の中は綺麗にリノベーションされています。1階にトヨクニコーヒーというカフェが入っており、近隣の方々や親子連れで賑わっていて、とても良い雰囲気でした。わたしたちの団地でも、このような素敵な空間をつくることができたらいいなと思いました。
また、日本の集合住宅の歴史をお話する前に、日本の住宅について少しご紹介させてください。
現存する国内最古の住宅は、約700年前・室町時代に現在の神戸に建てられた民家・箱木家住宅だといわれています。さらに、現存する国内最古の鉄筋コンクリート造の住宅は、約100年前に建てられた長崎県の軍艦島の建築です。エレベーターはありませんが、当時の技術で7階まで建設できたことを証明しています。ただし、これらは、いまは遺産であり、住居として利用できません。
そして、主題の集合住宅に関して。以前まで、1923年に建てられた同潤会アパートが現存する日本最古の集合住宅だといわれていました。しかし残念ながら、2013年に取り壊されたため、残存する中ではトヨクニハウスが現在の最古となっています。
「築200年団地」という、わたしたちの企画は、一見無謀なスパンに感じられるかもしれませんが、このように日本の歴史を振り返ると、見据えるべき未来なのではないでしょうか。 - 豊田
- 坂田さんは実際にトヨクニハウスを訪れ、これほど古い建物が残存し、さらいまも集合住宅として活用されている理由は何だと感じましたか?
- 坂田
- 建物のディテールが面白いことが、要因の1つだと思います。
トヨクニハウスをよく見てみると、円窓や鉄枠など、愛着の湧くデザインが施されています。また、住棟と住棟の間がとても狭く、まるで路地裏をくぐっているような雰囲気を味わうことができます。これらの「良いな」と思わせるデザインがしっかり残されていることが、長く大事にされる理由のように感じました。 - 豊田
- トヨクニハウスの住戸内の写真を見ても、柱や欄間といった古いものを大切に残そうという思いが伝わってきますよね。MUJI×URも同じ思いで運営しているので、とても共感できます。
さらに、海外にも目を向けてみましょう。
1853年、世界初の国主導型の社会住宅として、フランスのパリにシテ・ナポレオンが誕生しました。現在も賃貸住宅として稼働しています。実際に訪れてみましたが、最上階には綺麗な共用廊下があり、天窓のおかげで陽が差して明るく、各所に椅子やテーブルが並べられていました。こういった素敵な場所でご近所さん同士が交流されているのかもしれません。坂田さんもシテ・ナポレオンを訪れたことがあるそうですが、いかがでしたか? - 坂田
- そうですね。おっしゃる通り、とくに共用部は少しずつ生活感がありながらも、美しさを保ち、かつコミュニティの発展の役割をなしていて、とても素晴らしかったです。ぜひ具体的な運用ルールを学んでみたいですね。また、160年以上前の建物ですが、オートロックになっていることに驚きました。鉄骨階段など、建物全体にわたって丁寧なつくり込みがなされている点にも関心させられました。
- 豊田
- そして最後に、世界最古の鉄筋コンクリート造の集合住宅が、パリ16区フランクリン通りにあるオーギュスト・ペレです。
1903年・明治36年に誕生しています。実際に訪れてみたのですが、ディテールが非常に綺麗でした。この作品性の高さがオーギュスト・ペレが存続する理由のように感じます。このように、世界では100年を超え、いまもなお大切に使い続けられる建築があるのです。