


MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
トークイベント「築200年の団地の未来を考える」
※このレポートは、2019年1月20日に無印良品のリノベーション 青山店で行われたトークイベントの模様を採録しています。
- 豊田
- ここからは、団地の200年の存続を目指し、社会情勢を見据えながら、これからの団地の未来はどうなっていくべきかを、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。
近年、日本では人口減少や少子高齢化が話題となっています。2015年は1億2,709万人だった人口が、50年後には8,800万人になるといわれいます。一方で、住宅の着工戸数は現在の92万戸から、2030年には60万戸に減ると予測されています。つまり、空き家を持て余しながら、さらに新しい建物をつくるという状況です。2013年時点のデータで国内の空き家率は13.5%、7軒に1軒が空き家です。2030年には27%、3軒に1軒が空き家となると予測されています。
こういった状況下、住まいの重要性は量から質へと転換される可能性があります。質の低いものは淘汰され、質の高い住まいだけが残っていくのではないでしょうか。
例えば、性能面や環境面の良さ、耐震性の高さ、温熱環境や周辺環境の良さ、趣味・趣向に合ったものなど。多様化する価値観に適した、特長のある住まいが残っていくのではと考えられます。
そして、恐らく効率化も行われるでしょう。現在のように住宅が点在していると、下水道や電力などインフラの面で非効率です。そこで、インフラの効率化を目指してコンパクトシティをつくろうと、特定のエリアに住宅を集めるといった政策が打ち出されるのではないかと推測しています。
また、住む人の視点から考えると、暮らしの選択肢が増えるとも予想しています。どこに住むかは、都会・郊外・田舎など。だれと住むかは、家族・友人・さらに家族でも近居に住むなど。どうやって住むかは、持ち家・賃貸・ホテルなど。これらの選択肢がどんどん増えるのではないでしょうか。
団地を200年というスパンで見つめる中で、一つ一つにもっとコストを掛け、より良い空間をつくるという判断もあるのではと考えています。
実際に「MUJI INFILL 0」という企画では、MUJI×URよりコストを掛けて素材にこだわり、多摩ニュータウン永山団地の住戸をリノベーションしました。すると、エレベーターのない5階の住戸でしたが、初回の見学会ですぐ買い手がつくほど好評だったのです。


- 豊田
- さらに今後は、外観・階段室・エントランス・照明など、住空間以外にもコストを掛ける必要があるのではないかと考えています。URさんとしてはいかがでしょうか?


- 坂田
- そうですね。ポイントは経済性と時間軸ではないでしょうか。空きスペースを生かして経済的に回る仕組みが打ち出せること、長期スパンで考えたときに投資対象として価値あるプランであること、それらを満たすものであれば、コストを掛けていきたいと私も思います。
また、歴史を振り返ると、日本は3度ほど人口減少の問題に直面しており、今回が初めてというわけではありません。ただ、過去の要因は気候の変動や戦争などでした。出生率の低下による人口減少は、歴史の中で今回が初めてではないでしょうか。核家族が当たり前となる現在、「築200年団地」を通じ、どのような子育て環境をつくりだしていくべきかをしっかり議論していきたいと思っています。
さらに、空き家の増加については、消極的にならず、可能性を秘めた余剰と捉えて前向きに活用方法を考えていくことが重要なのだと感じています。 - 豊田
- 「築200年団地」における、暮らしの3要素となるキーワードは「住む」、「働く」、「楽しむ」の3つです。
「住む」と「働く」という密接な関係を「楽しむ」という観点で展開していきたと考えています。さらに、人口減少を抱えるいまだからこそ人々が集うことで新たな価値が生まれる「集まって住む」や、建物全体の新たな活用方法を見つける「一棟まるごと○○」といった仕掛けも行っていきたいと思っています。