


MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
トークイベント「築200年の団地の未来を考える」
※このレポートは、2019年1月20日に無印良品のリノベーション 青山店で行われたトークイベントの模様を採録しています。
- 豊田
- 無印良品のWEBサイトには「みんなで考える住まいのかたち」というコーナーがあり、コラムによるアイデアの発信やアンケートを行っています。
アイデアの問いかけをコラムに載せ、その後アンケートでご意見をいただき、それらをふまえて実現させ、またコラムで次なる問いかけを載せていきます。
そこから実現したものの1つが「住人祭」です。これはフランス発祥のお祭りで、集合住宅で独居の高齢者が亡くなったことを受け隣人同士のコミュニケーションを活性化しようと、飲食持ち寄りのパーティを開いたのが始まりだったそう。
MUJI×URでも、大阪の千里青山台団地で「住人祭」を開催しました。当日は、住人や地域の方々400〜500名が集い、大いに賑わいました。

- 豊田
- 他には、コラム「もしも団地の集会室をキッチンスタジオにできたら」のアイデアを多摩ニュータウン・ベルコリーヌ南大沢団地で実現させました。
あまり使われていない団地の空きスペースを有効活用しようという企画です。ベルコリーヌ南大沢団地の集会所には業務用のキッチンを導入しました。


- 豊田
- こうすることで、例えば、パンやお菓子などを本格的につくりたいけど自宅の設備だと物足りないという方が、集会所で料理を行い、住人の方々に試食や販売をして、反響が良ければ団地内の空き店舗で期間限定のショップを開き、いつかは自分のお店を持つ…。そんなストーリーが実現するといいなと思っています。
また、都心のオフィスに通うのではなく、家の近くなら、子育て・介護者・リタイアした方なども参加でき、「住む」、「働く」、「楽しむ」のコミュニティが生まれるのではと期待しています。さらに、男の料理教室を開くことで、孤立しがちな一人暮らしの男性高齢者を独りにしない仕掛けをつくろうというアイデアも出ていました。
坂田さん、多摩ニュータウン・ベルコリーヌ南大沢団地のご紹介と、集会所がいまどのように使われているかをお教えいただけますか? - 坂田
- この団地は、京王相模原線・南大沢駅から徒歩7分ほどの場所に位置しています。近隣には首都大学東京南大沢キャンパスがあります。囲み型配置の住棟の中央に集会場があるのですが、改修前まであまり使用されていませんでした。そこで、このシェアキッチンの企画がスタートしました。
シェアキッチンは2018年3月に完成し、4月ごろから使いはじめています。首都大学の学生さんや先生と連携して、住人の方々が交流できるような小規模なイベントを定期的に開いています。過去には、中国の留学生がつくる中華料理イベントなどもありました。最近は、防災という切り口で自主防災会を行っています。団地でルームシェアをしている大学院の学生さんたちがおり、彼らも協力してくれています。シェアキッチンを導入したことで、団地の中で良いコミュニティが生まれています。 - 豊田
- 大阪の香里団地では、「庭のある団地の暮らし」というアイデアを実現しています。
住棟1階のベランダに面した屋外スペースをもっと有効活用しようというものです。当初は、1階の住人さんに庭として使っていただく案でしたが、庭の管理が大変そうだとわかり、柵を取り外してバルコニーを延長させることにしました。無垢のフローリングが室内から外まで続くようなイメージでつくっています。


- 豊田
- 東京都板橋区の光が丘パークタウンでも、さまざまな取り組みを実施しています。
光が丘パークタウンは、地下鉄 赤塚駅から徒歩5分の場所にあり、近隣には光が丘公園という広大な敷地の公園があります。この団地の商店街に、無印良品の商品を扱う「MUJIcom 光が丘ゆりの木商店街」という新店舗ができました。この場所を、地域のコミュニティの拠点として活用しています。
店舗をオープンする直前には、塗装ワークショップを開催しました。住人の方々にもご参加いただき、皆で壁にペイントをしました。
現在は、一角に小商いスペースを設け、手づくりの商品を販売できるようにしています。さらに、サンドイッチ型の布製のポーチをつくる方が、近隣にある人気のパン屋さんとコラボし、ポーチと同じ配色の具材を用いた本物のサンドイッチを同時販売するという企画も行いました。


- 豊田
- 他にも、この「MUJIcom」では、ミシンの貸し出しを行い、100円コーヒーを置いたくつろぎの場を設け、住人の方々が交流できるコミュニケーションスペースとして開放しています。
また、東京都の町田山崎団地では、防災キャンプ「DANCHI Caravan in 町田山崎」が毎年開催されています。坂田さんからご説明いただけますか? - 坂田
- はい。防災キャンプは「団地の屋外空間をリビングのように使えないだろうか?」、「それなら団地でキャンプはどうだろう?」というURの若手から出たアイデアがはじまりでした。
しかし最初は、アウトドアグッズを取り扱う各社へ相談したものの門前払い。そこで、キャンプ場を複数運営されている無印良品さんに企画のご協力をお願いところ、ご快諾いただき、企画が動き出しました。
2011年3月11日の東日本大震災から少し時間が経ったころだったので、単なるキャンプではなく防災喚起を目的にしようと、2014年3月に第1回「DANCHI Caravan in 町田山崎」を開催しました。5回目となる今年は、3月9日・10日で実施する予定です。
年々開催するごとに協力者が増え、最近では、同じ団地の自治会や商店街だけでなく、町田市や消防・警察、周囲の大学や福祉法人など、輪がどんどん広がっています。


- 豊田
- 参加者のみなさんで団地の敷地内でキャンプファイヤーを行い、テントを張って寝泊まりし、災害時に役立つ知識を学ぶワークショップも行っています。ワークショップのコンテンツは、節水時の効率的な調理方法や、食器を汚さずに使う方法、ゴミ袋を用いた防寒ポンチョづくりなどです。
- 坂田
- 初年度は、「そもそも団地で焚き火をやっていいのだろうか?」という議論もありましたが、社内で話し合いを重ね、安全性を確保したうえで実施を決定しました。火があることで人々が自然と集い、地域の人々との関係性がぐっと深まります。私も参加したのですが、とても良い経験になりました。