MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
トークイベント「団地リノベーションの部屋に暮らす」

※このレポートは、2013年10月5日に無印良品の家グランフロント大阪家センターで行われた、パネルディスカッション式のトークイベントを採録しています。

土谷
では最後に長谷川さん、豊田さんから一言ずつお願いします。
長谷川
いまパーツの紹介がありましたが、ご覧いただいたように、麻畳やキッチンなど、MUJI×URのプロジェクトで共同開発した商品を使っています。そしてUR賃貸住宅以外でも個別に販売しようと考えています。さらにダンボールふすまについて、もともと団地に備え付けられていたふすまの下地は軽量化するためダンボールを使っていたんです。そういった点も着眼点の一つとなってこの商品を試作しました。今後も一緒にパーツ開発を進めていきたいと思っています。
何故、無印良品とURは一緒にプロジェクトを進めていくのか。「日本の暮らし」という話がありましたが、40、50年前に建設された団地はそれまでの暮らしをうまく継承しながら団地というハコにはめこんできた歴史があります。その歴史が見直されているタイミングが来ているのではと感じています。
豊田
団地プロジェクトの中で魅力的なのは団地の歴史です。普通のマンションは流行りのリノベーションでかっこよくなっていますが、団地はそれとは全く違う視点でできています。URが誕生したのが1965年。団地も同じくらいの歴史を歩み、50年ほど経ったものが多いんです。URでないと出来ないことがそこにありました。それをどう現代に活かすのかを主題に考え、古くて使えないものだけは交替しながら進めてきました。ただ安いものを使うのではなく、一つ一つの物を吟味してコストも下げて、ようやく魅力的な空間が出来たと感慨深いです。
土谷
このMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトはこれからも続くので、ぜひご意見をいただきたいと思います。
土谷
さて、少し時間がありますので会場からの質問をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
会場の方から
「現在第2期で募集している部屋は一人暮らしや夫婦二人向けの活用事例が多いですが、4人家族などの活用例はありますか? ターゲットはその2タイプの方を狙っているのでしょうか?」
土谷
44平米だと、現代の暮らしでは2人暮らしが中心になります。60平米くらいになると4人で住めることが想定できますが、団地のサイズではなかなか難しいですね。あとは、お子さんに早く巣立っていただいて、夫婦二人の暮らしを満喫してはいかがでしょう(笑)。
長谷川
第1期募集の方には3人家族もいます。小さなお子さんのいるご家族なら十分暮らせると思います。
会場の方から
「鴨居を残したまま、という点についてですが、背が高い人は毎度ぶつかるのではないでしょうか。鴨居を取り払うというパターンはあり得ますか?背の高い人が寝ぼけてぶつけてしまうのではと心配しています。」
長谷川
今後の可能性としては取っ払うパターンもあり得ます。しかしこの議論はUR内でも色々な意見が出ました。そこで結論付いたのは、日本の暮らしや団地の暮らしを空間として見せていくには鴨居は重要かなという点です。そして175センチ以上ある方はだいたいどこでもかがむことがあるので、そういう生活は染み付いているのではと思いますけれど(笑)。
土谷
この問いかけは非常に難しいです。ぶつかるかどうか、ではなく、建築・デザイン的にどこかで空間を切るということをするかどうか、という議論になってきます。その環境をどう楽しむか、という発想の転換が重要です。危険の回避は必要ですが、毎日住んでいたら慣れていくと思いますよ。
会場の方から
「洗面所がよくあるマンションでついているような洗面台セットではなく、鏡と洗面ボウルだけになっていて、団地の雰囲気にとても合っていて素敵だなと思ったのですが、お風呂の写真がなかったのが気になりました。お風呂はどうなっているんでしょうか?」
長谷川
今回はURとしても色々な挑戦をしています。20、30代の方々に満足して暮らしていただくことを想定し、予算の関係上対応する場所を絞りました。お風呂は、URの一般的な仕様である自動お湯張りや追い炊き機能を付加し、水栓金物を少しオシャレなものとしています。今後、ご意見が多ければ、もう少し検討しなければいけないと感じています。
豊田
お風呂は次の課題として考え、今回はほとんど手をつけていません。これから検討して答えを出していきたいと思っています。
土谷
シャワーという選択もありますね。小さなお風呂よりもかっこいいシャワーをつけるという選択肢もあります。実はもともとのお風呂の大きさはものすごく小さいんです。そこに「バランス釜」といってお湯を沸かす機械が横についていたので、更に風呂桶が小さかったんです。それをURさんの開発で別の場所に設置することができて風呂桶はやや広くなったんですが、それ以上に広くしようとすると壁を壊さなければいけないんです。そこはぜひ皆さんの知恵をいただきたいと思っています。

それでは、本日は会場の皆さんも長時間にわたり、ありがとうございました。