研究テーマ

使い勝手を考える ─大阪ミナミから─ 6.歩み寄ること

今回、社会福祉法人「あまーち」様が新たに建てられる施設に、無印良品の商品を納品する機会をいただきました。
「あまーち」様は兵庫県尼崎市にある生活介護事業所・居宅介護事業所です。
名刺やレターセットを作製する施設にはカフェも併設されていて、障害のある方々の社会参加や自立を支援する活動を行っています。
この活動報告では、無印良品の商品を納品する過程と、その中で起こる(であろう)さまざまな出来事を、お伝えしていきます。

第2話から「あまーち」の建設活動を通し、無印良品の商品を納品すること、そしてその中で起こる様々なことを綴ってきました。そのような日々を経て「あまーち」の新しい施設がついに完成しました。
6月27日(金)。「あまーち」で「開所式」が開かれました。私も招待いただいたので、今回はその開所式の様子からお伝えしたいと思います。

開所式

午前9時半。阪急武庫之荘駅から「あまーち」まで、通い慣れた道を歩きます。今日を迎えることができた喜びを映すような澄んだ青空でした。新しい建物に到着すると、「あまーち」は高揚感に溢れ、仲間・職員の皆さんはパリッと正装を決め、少し緊張したような笑顔で私を迎えてくれました。

開所式では、まず仲間たちから施設建設に協力してくれた方々へ感謝状が贈られました。つづいて建設活動を振り返るビデオ上映が行われると、目に涙を浮かべながらビデオをご覧になっている方もいらっしゃいました。「あまーち」の皆さんから私たちに贈られる言葉には、感謝と今後の決意を込められていました。新しい施設を建てたことは一つのステップで、これからも目標に向かって走り続けていくのだな、と改めて留らない「あまーち」の凄さを感じました。

そのあとは、施設の見学会です。出来上がった建物は、風が通り抜け、光の差し込むとても爽やかなものでした。1階は屋外から屋内が自然につながるようなつくりになっています。喫茶店の扉を全開にすると屋内にいながらまるで屋外にいる気分です。仲間の使う畳スペースは、ごろりと寝ころんで外を眺められるような魅力的な場所でした。トイレは、仲間のことを考えて広さや便器の仕様が一つひとつ異なり、壁もそれぞれ違う色で、楽しいリズム感を感じます。上の階にあがると、かつては手狭だったシャワーベッドやお風呂スペースはスパのような設えで落ち着いた雰囲気、広々とゆったり使えそうでした。屋上は見晴らしがよく、夏は花火大会の特別観覧場所になりそうです。見学者の方々は、素敵、素敵と、新しい施設に魅了されていました。
そうそう。施設内にはみんなで組み立てた収納の要、スタッキングシェルフが、壁にきれいに収まっていて、しっくりと建物に馴染み、使いやすい空間が出来上がったのではないかと思います。

食卓を囲む

建物の見学が一通り終わると、何と手作りのお昼ご飯が待っていました。「あまーち」で働く皆さん、そして仲間のお母さんたちが、温かく美味しいご飯を振舞ってくれたのです。仲間も、職員も、招待された人も、みんなが木製テーブルに集まって、笑い、語り合いながら、一緒に食事をとる。普段、家庭で使われているダイニングテーブルが福祉施設でどんな風に使われるのか、提案のときは、十分にイメージが湧かないこともありました。しかし、実際には家具がふつうに馴染んでいて何だかホッとしました。使い手によって建物や家具は様々な表情を見せ、使いこなされていくのだな、としみじみ感じました。

新施設では、大きな厨房ができたおかげで、仲間と職員とが同じテーブルで一緒に同じお昼ご飯を食べるようになったそうです。一緒に食事をする仲間と職員の距離感は、とても心地よいものでした。仲間ができることは仲間がやって、職員はできないことをサポートする。「あまーち」らしさを象徴するような光景でした。

歩み寄りが生む新しいコト

私にとって「あまーち」での仕事は「初めて」づくしでした。車いすに乗ったことも、障がい者福祉施設に入ったことも、建物が建っていく様子を間近で見たことも、何もかもです。それでも無事に「あまーち」の建物が完成したのは、「あまーち」「佐藤総合計画」「無印良品難波」のそれぞれが工夫を重ねたからだと思います。私にできることには限りがありました。多くの人を巻き込みながら、深く悩み考え、時には悔しい思いもしながら、必死に答えを探してきました。建物を建てるプロセスは、まさに決断のプロセスです。しかし、それぞれが歩み寄り、重なり合うことで新しいことができる。それが、「あまーち」の建設活動に関わる中で私が最も強く感じたことです。

普段、店舗でのインテリア相談会は、引越しや模様替えのタイミングで利用される方が大半です。そんなときには、図面や間取り図をお持ち頂いています。「廊下を抜けてこの扉を開けるとリビングがあるんですね」といった臨場感は話しやすさに繋がり、「こんなの素敵だと思うんです」、「ここではこんな風に過ごしたいんです」と、暮らしの匂いが感じられるお話を伺えます。そうすることで、必要なモノを揃えるだけの提案ではなく、その方の暮らしに寄り添いながら提案することにつながります。「そんなこと出来るんですね」「そんな方法があったんですね」こんな言葉を頂いたとき、「あぁ、良かった」と感じます。新しい発見をしていただけたことで自分の存在を感じますし、お客様との共同作業のスタートを切れたと嬉しくなります。
「お客様とアドバイザーの共同作業」によってオンリーワンの居場所をつくり上げていく。その作業によって、家がもっと大好きな場所になり、より暮らしが楽しくなる。そう確信しています。ぜひ一度アドバイザーとの共同作業を楽しんでみてください。

この活動に関わった方々
・社会福祉法人「あまーち」様 http://www18.ocn.ne.jp/~ama-chi/
・佐藤総合計画 http://www.axscom.co.jp/

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