試作品が出来ました
前回お伝えしたアンケート調査の結果、脱げにくいフットカバーは私たちの予想以上にたくさんの人に求められていることが分かりました。
「脱げにくいフットカバー」という最終目標に向けてどこをどう改良するか。フットカバーはつま先と踵、足裏を覆っているだけのものなので、いざ改良するとなると改良する場所も限られてきてしまいます。足首にストラップをつけず、滑り止めのゴムなどもつけず、出来るだけシンプルな形で脱げにくくするためにはどうしたら良いか
私たち開発担当者も頭を悩ませました。
そこで、無印良品のフットカバーをつくってくださっている吉谷靴下株式会社に相談してみることにしました。
奈良県三宅町に本社を構える靴下工場、吉谷靴下株式会社には改良する前のフットカバーだけでなく、無印良品の足なり直角靴下など多くの靴下を作っていただいています。
これまでにも、品質・生産革新部の向井さんや藤原さんには足なり直角靴下のリニューアルの設計をお願いし生産に限らず開発面でもお世話になっていました。
- 吉谷靴下株式会社 外観
向井さんと藤原さんには、フットカバーが踵から脱げる女性が多いこと、そしてこの不満を解消するために脱げにくいフットカバーを目指して改良したいことをお話しました。
今発売しているものもたくさんの工夫が施されているだけに、これ以上の改良はなかなか難しそうでしたが、快く引き受けてくださりました。
そしてしばらく経った数か月後。
私たちの手元に試作品が届きました。
このフットカバー、一見どこにどんな工夫がされているのかわからないくらいシンプルな形をしていました。
完成した試作品
設計してくださった向井さんによると、
「踵から脱げるということは皮膚と生地の摩擦が少ないということ。つまり、ずり落ちてくる部分を摩擦の大きい生地で覆い、ずり落ちにくくすれば良いのではないか」と考え作られたものだそうです。
- 踵部分の断面
その仕掛けは靴下の裏側にありました。
よく見ると、靴下の裏側、アキレス腱付近にあたる生地部分周辺にだけ別の糸が編み込まれています。これはダウンストップと呼ばれる滑りにくい糸だそうです。実体顕微鏡で見るとゴムのように伸び縮みするポリウレタン糸を芯として、その周りにナイロンを巻き付けた構造をしています。
- 踵部分 裏側
白く見えるところがダウンストップが入っているところ - ダウンストップを編み込んだ生地
この糸を肌と接する裏側に編み込むことによって、歩行時のフットカバーのずり落ちを軽減するというものです。ダウンストップの部分を手で触ってみると、たしかにほかの部分とは違って滑りにくい感じがします。
私たちはさっそく試し履きをしました。かなり脱げにくくなっています。
また、履き口のゴムをきつくして脱げにくくしているわけではないため、ゴムの強い締め付けがなくアキレス腱辺りの痛みも感じませんでした。
- 試作品を履いてみました
- 白く見えるところがダウンストップが入っているところ。
滑りにくい糸で踵部分を広く覆っています。
実際には表側からダウンストップは見えません。
脱げにくく良いものができたと感じつつ、一般の方のご意見をいただくため、ホームユーステストにご協力いただける方を募集しました。
ホームユーステストとは?
主に一般消費者の方に新製品または改良品(試作品)や既に販売している自社製品と競合他社製品などを、家庭で実際に利用してもらい評価をしてもらう製品の評価の手法です。
ご協力いただける方にサンプルをお送りして実際に履いてもらい、アンケートに答えていただきました。
サンプルのフットカバーは全部で3種類。今回の試作品がどれくらい脱げにくいのかをみるために、2014年の夏に販売していた商品と、一般的な形のフットカバーも履いていただきました。
- 実施期間:
- 2013年12月7日~12月15日
- 対象:
- 20~40歳代女性56人
- 足のサイズ:
- 23~25cm
- 着用時間:
- 1足3時間以上(靴ありと靴なしを合わせて)
- 合わせる靴:
- 普段フットカバーと合わせている靴(指定なし)
サンプル
- ①今回の試作品
- ②2014年販売品
「かかとが深くてつま先が浅い足なりフットカバー(消臭)」 - ③一般的な形のもの
(滑りにくい工夫は特になし)
足のマネキン:株式会社七彩 作製
アンケート結果
Q.1 履いているときにフットカバーは脱げましたか?
靴を履いていないときと、靴を履いたときに分けて回答してもらいました。
靴無し
一度も脱げなかった人の割合
靴を履いていない場合には大多数の人が脱げなかったと回答しました。
靴 有り
一度も脱げなかった人の割合
今回の試作品は71%の方が一度も脱げなかったと回答しました。生地の裏に滑りにくい糸を入れた効果があったようです。
しかし、2014年の夏に販売していたもの(②)の方が、今回の試作品(①)よりも脱げなかった人の割合が多くなってしまいました。
Q.2 痛みや痒みを感じましたか?
痛みや痒みを感じた人の割合
今回の試作品は履き口のゴムをきつく締めつけてはいないので、痛みやかゆみを感じた人が最も少ない結果となりました。
ホームユーステストにご協力いただいた皆様、ありがとうございました。
痛みや痒みがないのに脱げにくいフットカバーとしては、今回の試作品はなかなか良いものになりましたが、私たちが目指すたくさんの人が脱げにくいフットカバーにはもう一歩という結果になってしまいました。
この結果を受けてどう修正していくか、私たちは悩みました。
私たちだけの考えで作ると、私たちはいいと思っても他の人には合わないものになってしまうかもしれない、とアンケート結果を見ながら心配になってきました。今回の試作を手掛けてくださった向井さんや藤原さんは男性だし、多くの女性にフィットするフットカバーってどんなものなんだろう
わからないことは聞いてみよう!
そこで私たちが出した結論は、
多くの女性に参加してもらってたくさんの意見を聞きながらみんなで作ろう、ということでした。
今回のアンケートで試作品を履いてくださった方々に集まってもらい、その着用感や用途、気になる点などの経験をお互いに説明していただく方法で進めることにしました。みんなで話し他の人の経験を聞くことによって履いてくださった方は感じていた思いが言葉に表わしやすくなるし、私たちの課題もはっきりしてくるはず!
そしてその課題を向井さんや藤原さんと相談し解決案を形にしてもらおう。
私たちは座談会形式のグループインタビューを行うことにしました。
次回はその様子をお伝えします
-
1
- 2014年12月17日 開発のきっかけ
-
2
- 2014年12月24日 世の中のフットカバーってどんなもの?
-
3
- 2015年1月14日 知りたい! みんなのフットカバー事情
-
4
- 2015年1月21日 試作品が出来ました
-
5
- 2015年1月28日 グループインタビュー
-
6
- 2015年2月4日 改良に改良を重ねた試作品ができました
-
7
- 2015年2月11日 みんなで作ったフットカバー その出来はいかに?!
-
8
- 2015年2月18日
開発秘話
靴下職人へインタビュー
- 2015年2月18日
開発秘話
-
9
- 2015年2月25日 3月4日(水)いよいよデビュー
-
10
- 2015年3月4日 商品発売のお知らせ