MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト 対談
これからの日本の暮らしを考える~リノベーションという手法の可能性について~
- 伊東
- 共用空間はどれだけのスケールだとコミュニティスペースとして機能しやすいんでしょうか。
- 大西
- 団地の共用空間には様々なスケール感があります。大きなものもあれば、住戸の隣に吹き抜けがあるような小さなスペースもあります。そこで何らかのコミュニティを作るには、ある程度の大きさがあったほうが良いと思います。しかし一方で、高齢化社会を考えると、もともと描いていた前提が大きく変わることを実感しています。例えばエレベーターは北ではなく南につけたほうがいいという意見が出たりしていて、それは、南に付いているベランダを人が通るようになることで、今までプライベート空間だったベランダがセミプライベート空間に変わり、新しい縁側となって声を掛け合うことができるかもしれないという理由から来ています。今あるものを、今ある機能として意識するのではなく、もう一度住まい手の立場に立って再編集していく必要がありますね。
- 伊東
- その意見、アイデアには賛成です。半屋外というのは、家の中の土間のようなセミプライベート空間。それが南側の通路に面していると、暮らしに変化が出ることが想像できますね。
- 大西
- そういったリノベーションは1棟まるまる実施する必要はないと感じています。団地の課題の一つは、中層・エレベーターなしの5階建て集合住宅をどうするか、特に4階と5階に集中していた空き家をどうするか、ということです。それは団地が高齢化したことに伴い、階段で登るのが辛い4階、5階には人が入らなくなっていたことから起きた問題でした。しかし無印良品とのリノベーション物件で応募倍率が高かったのはなんと4階・5階だったんです。
実は4階・5階は自然が多く、空が広い、そして窓を開けていても虫が入りません(笑)。豊かな自然が手に入る4階・5階のそういったメリットは、階段を登ることが苦にならない若い人には魅力的に映ったようでした。住戸リノベーションはそういった、今までの価値を変えていく力を持っていると感じましたね。リノベーションすることで、団地に次のコミュニティを作ることができるんです。高齢者だけでなく、若い人を含めた複合的な暮らしができると思っています。
また、リノベーションによって、現代の機能に合わなくなっていた場所を蘇らせることもできます。団地はかつて、暖房費の節約のため“4時間日照並行配置”が基本でした。それを現代の暮らしに置き換えると、4時間日照時間が確保できるということは、太陽光パネルを置けば十分発電が可能になるということにつながることが見えてきました。
また、団地の空き家は自然豊かな環境の中にあります。その環境を活用していくと、もっと楽しい街になっていくと感じています。例えば、これからの高齢化・少子化に向けて、今まで住戸だったところに高齢者サービス等を手掛ける団体などに入居していただき、デイケアやキッズルーム等にするのはどうでしょう。また、例えば共用ルームをキッズルームにして各幼稚園からお子さんをバスで一度キッズルームに送り、そこから仕事帰りのお母さんが自分のお子さんをピックアップしに行くという仕組みはどうでしょう。また、小学生のお子さんが早く帰ったときに行く場所がないといった状況に対して、団地と学校で協定を結び、団地内に学童を作るというのも解決策の一つです。
団地は日本の財産です。許容範囲を広げ、それを活用することで、団地の居住者、そして地域の人にとっても魅力的なサービスや施設を作ることができ、魅力的な街に変えることが出来る可能性を秘めています。高齢者も若い家族も安心して住める街に作り変えることができると気付いたので、URではどんどん新しい取り組みを進めています。そしてサービスや施設を作ると同時に住戸リノベーションを進めることで、団地が一つの街になっていくと考えています。
従来の機能用の空間を一度壊して、今の時代に合ったサービスを入れ込んでいく、そういった可変性を団地が持てることに気付きました。そしてこういった取り組みを進めるにあたって非常に良いのは、住戸リノベーションは小さな単位からスタートできるということです。まずは数戸リノベーションしてみて、人気が出れば広く展開していくというやり方ができます。無印良品とのプロジェクトもそうですし、ちょうど京都の“洛西ニュータウン”というエリアで、京都女子大の井上先生と協力し、「若い女性の視点からみた住戸リノベーション」の提案を学生にしてもらい、その住戸を実際に作っています。その時感じたのは、提案するのは学生なので、機能性については知識がプロを上回ることは少ないのですが、住まい手の“気持ちの良い空間”や“素敵な空間”という観点から発想されたアイデアは通常の建築を超えています。建築の観点とは全く違った切り口で提案をしてくれているので、我が社のスタッフは大喜びしています(笑)。そういうような、今までとは違う観点での取り組みを実現することができるのは、小さな単位で動かす住戸リノベーションならではですね。
- 伊東
- なるほど、それは興味深いですね。ただ住戸のリノベーションで気になるのが、設備です。例えば水まわり等はどうなっているんでしょう。かなり老朽化が進んでいるのでは?
- 大西
- 実はそこが大きな課題です。例えば、洗濯機が普及していない時代に建てられた団地には洗濯機の排水口がありません。住戸によって、例えばキッチンの横に設置したり、洗面台の後ろに設置したりと色々な工夫をしています。
- 伊東
- 機能が今の時代に合わなくなっているのは、私たちの生活の仕方が複合的になってきているからでしょう。仕事をすることと暮らすことが完全に区分できない時代になってきており、自宅で仕事をする人も増えていますよね。そういう点で、今まで住むためだけの場所とされてきた団地を変えていくというのも面白いですね。
- 大西
- さきほども話がありました“東雲キャナルコートCODAN”でもSOHO住宅を設計しました。家の中でゆるやかに線引きし、ワークスペースと居住スペースを分けて作りました。ところが実際のものの作り方と、既存の制度が合っていなかったために苦労した部分も多かったんです。今後はワークスペースと居住スペースを全て一緒に、もしくはワークスペースと居住スペースに可変性を持たせられる制度に変えていかなければと感じています。
- 伊東
- 更に質問させてください。かつてはプライベートな場所と集会室のようなパブリックな場所がはっきり分かれていましたが、その中間的な場所というのはありますか?例えば住人が料理教室をする場所などあったりしますか?そしてもう一つの質問は、例えば団地に暮らす住人が団地以外の人を呼んで集まりたいときのためのセミプライベート空間はありますか?
- 大西
- URでは、住宅は公募しなければいけないという大原則があります。そのため、例えば一つの部屋をシェアしていて、住人の誰か1人が退去することになって次の住人を受け入れるとき、通常は知り合いや友人を入れたいと思いますが、今のURではそれが出来ないんです。そういった場合の対応としては、私たちURが住戸(スケルトン)を民間事業者に貸してシェアハウスとしてリノベーションできれば問題ありません。
多摩平のルネッサンス2における、民間事業者のシェアハウスは、大きな共用部を作って、料理が好きな人は料理ができるような場所になっています。今後は私たちの組織だけでリノベーションするのではなく、民間事業者とも手を組んで、多様性を実現していきたいと思っています。
- 伊東
- なるほど。あるいは、必ずしも住戸全体がシェアハウスということではなく、時間帯で借りられるシェアルームにする、という考え方はいかがですか?
- 大西
- URとしての今までの契約形態だと、それを実現するのは必ずしも容易ではありません。しかし民間であれば自由に対応することが可能です。例えば短期滞在のホテルというアイデアもあるでしょうし、先ほどおっしゃっていた短時間での部屋貸しという形態もあるかもしれませんね。
スケルトンはUR(公共)、そして中身の色々な仕組みは民間が持つなどして、互いの持ち味を活かして、URと民間が組むことで実現できることが広がる場合もありますね。
- 伊東
- そうですね。そしてライフスタイルの幅も広がっていきますね。
- 大西
- 同じ部屋に同じように住むような時代ではなく、色々な人が色々な生活をしています。団地というのはそういった色々な生活を実現できる可能性を持つ場所だと思っています。これからの日本の住まい方を変えていく契機になるようなことをどんどん進めていきたいですね。
- 伊東
- これからの動きがますます楽しみですね。UR西日本支社の動きではどのエリアが面白いですか?
- 大西
- 現在、無印良品とのリノベーションも手掛けている“千里ニュータウン”がやはり面白いです。例えば新千里西町団地では24時間定期巡回サービス等の高齢者向けのサービスも展開されています。