


MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト 対談
団地を舞台に考える“感じ良いくらし”
MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトでは、2013年3月に「団地を舞台に考える“感じ良いくらし”」をテーマに、UR都市機構の理事で西日本支社長を兼任されている大西氏と、良品計画代表取締役社長の金井政明との対談を開催しました。
大西 誠氏

独立行政法人都市再生機構理事兼西日本支社長。
昭和54年3月東北大院工学研究科建築工学専攻修了。
同年4月日本住宅公団、同56年10月住宅・都市整備公団、平成11年10月都市基盤整備公団土地有効利用事業本部計画部計画第六課長、同17年7月独立行政法人都市再生機構東京都心支社業務第1
ユニット総括リーダー、同19年6月本社業務第二部長、同22年7月東京都心支社長、同23年7月東日本都市再生本部長、同24年4月本社審議役(西日本支社担当)、同年7月理事・西日本支社長。
北海道釧路市出身。
金井 政明氏

株式会社良品計画代表取締役社長。
1993年株式会社良品計画入社。
生活雑貨部長として長い間売上の柱となる生活雑貨を牽引し、無印良品の成長を支える。
2000年取締役 営業本部 生活雑貨部長、2001年常務取締役 営業本部長、2003年代表取締役専務取締役を経て、2008年より代表取締役社長に就任、現在に至る。株式会社イデーの取締役会長も兼務し、双方の更なるブランド価値の向上を図るとともに、良品計画グループ全体の企業価値向上に取り組む。
※役職等は対談当時のものです

対談場所は、2013年3月に開催されたHOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION
- MUJI
- 無印良品×坂茂「家具の家」をご覧になりましたか。
- 大西
- 非常に刺激的でしたね。住まいづくりに関しては、これからはみんな同じようなものではない住宅づくりができるようになっていけばいいな、というのが見させていただいた正直な感想です。
- 金井
- 日本は明治維新という大きな変化を起こし、西洋の文明が怒濤のごとく入ってきて、それまでの暮らし方に西洋風の暮らしを取り入れた経緯があります。戦後の復興、高度成長の過程で、暮らしを整える余裕がなかった、というのがこれまでの日本の暮らしです。いよいよこれから皆が高い意識を持って、住まいについて始められたら良いですよね。

- 金井
- (当日、お子さんをあやしながら取材しているスタッフを見て)
(笑)すみません、なかなか良い光景だなと思って。 - 大西
- いい光景だなあ、僕ああいうの大好き。
- 取材スタッフ
- すみません。
- 金井・大西
- いえいえ、とんでもない。素敵。
- 大西
- リノベーションの良さっていうのは、ものすごくお金をかけなくても新しい住まい方を提案できることですよね。今回、無印良品さんと一緒にリノベーションに取り組んでいく中で(MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト)、そんなにお金をかけずに新しい住まい方の提案ができるということに気がついたんです。
そして、私どもURは76万戸の賃貸を管理していますが、実はそれだけ新しい暮らし方の提案ができる土台を持っていることを実感しました。これからはリノベーションという手段を積極的に活用して、さらに新しい住まい方の提案にチャレンジして行きたいと思っています。 - 金井
- ぜひ、お願いします。URの76万戸について私たちから見たときに、どんなことをまず感じるかと言うと、「素性がいい」のです。素性がいい。何が言いたいかというと、一般的な資本の論理で動く民間企業が建てたものは、ちょっと素性が良くないのです(笑)。
- 大西
- と言いますと。
- 金井
- 何が決定的に違うかと言うと、これは無印良品のコンセプトと大変近いのですが、一般的な民間の商品は媚びているんですよ。ものを売って利益を出していかなきゃいけないということは、どうしてもお客さんに合わせてくる。しかも、つくることよりも売ることを目的としてしまうので、どんな風に住まうかということよりも、「この方が皆買ってくれそうだ」とか、「流行りのテイストは入っているか」といった、本質ではない部分に力をそがれてしまうんですね。
- 大西
- なるほど。
- 金井
- 無印良品が世界で生きて行ける理由でもありますけれど、そこに脆さがあると私たちは30数年前に気がつきました。
URさんの団地の素性の良さというのは、商業主義的な余計なデザインや、見せかけみたいなことがないということ。このことが私たちにとって、一般の企業の物件にはない、ものすごく素直な構造を持っています。しかも、大変良い住環境にある。これは我々日本人にとって大きな財産ですね。
人口がどんどん減っていく日本の中で、コミュニティや絆がなくなりつつある。マンションで隣が誰だかわからないような暮らし方をしてきてしまったのだけど、子供をつれて仕事へ行くということが昔は当たり前にあった。こういう世界がもう一度団地みたいなところから生れたらいいな、と思います。 - 大西
- 団地でも最初にコミュニケーションが成立して行くのは、やっぱり子供さんを通じてなんですよ。子供さんがいるというのは、実は家族同士がおつきあいを始めるスタートにもなりますね。ですから若い人がいて、子供さんがいて、というのは、その中でコミュニティが育って行くためには非常に重要なことです。
2月にMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトの第1期募集を行ったのですが、通常、URの新築団地などで見られる募集倍率の2倍近い申し込みがありました。しかも20~30代の方が8割を占めており、これも通常の2倍近い割合です。今までにない若いお客様層から圧倒的な支持を受けました。まさにこれからの新しい住まい方について、一番敏感に反応してくださる層の方たちです。
私どもの団地も高齢化が進んでいますが、本来であれば若い層、子育て層、高齢者の方々が一緒にいらっしゃるような、昔の大家族の中で実現できていたようなコミュニティ、相互扶助みたいなものが、できることが非常に重要なことです。それが、だんだん高齢化が進んできて、新たな問題が生じてきている状況の中で、一人世帯、もしくは二人世帯の若い方に入って頂くというのは非常に大事なポイントになる。今回の無印良品さんとのプロジェクトではその点でも大変効果的ですので、これはもっと発展させていきたいと思っています。 - 金井
- ぜひぜひ、それは我々も本当にやりたいことです。
- 大西
- 団地にはプレイロット(敷地内にある広場)があるのですが、昔はほんとうによく使われていたのですが、今プレイロットのブランコで遊ぶ子供はほんとに少なくなっています。住戸リノベーションをすることで住む人が変わってくると、そこが使われだしていくんですね。
お年寄りの方だけでなく、若い子供たちが遊んでいる団地ってやっぱり声があります。声のある、活気のある団地ってやっぱりすごく魅力的です。それが住戸内だけではない、広い意味での団地全体のリノベーションに結びついているんですね。