MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト 対談
これからの日本の暮らしを考える~リノベーションという手法の可能性について~

ふつう戦略的というと画一的になりがちですが、できる限り多様なものが入ってくる戦略を持つということでしょうね。都市計画という言葉がありますが、その言葉には小さな懐疑を持っています。透徹したプランをリーダーが示すことによって社会が合理的に整備されていくというイメージでしょうけれど、そうした強烈な上意下達的な計画性ではなく、個々の人たちが、みんなが住まいとか暮らしに関して一段賢くなって、その結果、一皮むけるように社会が少し良くなる、そういうふうに物事は進化していくんじゃないかと思うわけですね。
ですから、いかに自分の能力を高めていき、新しい暮らしの可能性に気づけるか、その可能性をどれだけ住宅が持っているかということだと思うので、そういう意味でリノベーションという手法はとてもいいと思っています。

今までの画一的なプランでは、同じようなライフスタイルの人たちが入ってくること、そこから生まれる均一性から問題が起きているわけですが、今回提案されているのは、どんな生き物でも生きていけるという形、どんな種類の魚でも住めるようなフレキシブルな「魚礁」を用意しておくようなことですよね。いろんな人が集まってくることで、街としても新しい可能性が生まれる気がするんですね。
コミュニティをつくるプランニングは難しいですが、多様性を呼び込む、フレキシビリティを持ったプランを用意することで自ずとそこにコミュニティが生まれてくる可能性があるように思いますね。
大西
時代によって変化してきていますね。昔はむしろ用途純化をすることによって、個別の機能の純化を図っていたんですね。用途が混在することによって子どもが自動車にはねられる危険性が高くなるとか、深夜も道路に車が走っていてうるさいとか、そういうことがないように商業施設と住宅のエリアは区切られていたわけですが、実際にそうしたつくり方をしたまでは良かったんです。その後、自由に変化させることができる仕組みを入れ込んでいなかったんですね。時代によって求められるものが変わってきますから、ここは変えていかないといけませんね。

例えば、物流ということひとつとっても変わっていますよね。家のなかにいて買い物ができる。そういう住まい方を考えたときに変化に対応できる柔軟性をもつ住宅を供給していく、そしてまた変化が起こったら、その変化を吸収していく。そうした変化を吸収するためにリノベーションというのは非常にいい手法であるし、我が国の住宅づくりをもう一度考えるという意味においても、あらたな住宅供給という意味においても主流になっていくだろうと思いますね。
URも、もっと積極的にやっていきたいと考えていますし、そのための教科書のひとつとして今回のMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトがあるのだろうと思います。
高度成長の頃は、伝統だとか、美意識といったものを暮らしのなかに持ってくるというのはなかなか難しくて、いまは質屋に預けっぱなしみたいなことになっていますよね(笑)。そろそろ日本も、高度成長期につくり出した量を競うようなことではなくて、価値をつくっていく国にならなければいけませんね。
例えばワイン、チーズ、機械式時計…フランスとかスイスといった国は価値をつくり出すのが上手ですよね。ぶどう汁をあんな値段で売買するというような(笑)、価値の体系を緻密につくっている。それは決して価値のねつ造ではなくて、そうした価値の連鎖を生み出すことが、ひとつの文化の精神性なわけです。そのベースには何があるかというと、暮らしのようなところから生まれてくるんだと思うんですよね。花を買ってきて、部屋のなかにいい感じで花をぽんと活けられるような、生活者の価値を醸成する背景をつくってきたわけで、散らかった部屋に暮らすのでは価値を醸成するバックグラウンドにはなり得ないですよね。

暮らしが少し変質していくということは、日本が次のステップに進んでいくために大事なことですね。断捨離という言葉もありますが、リノベーションをすることで一度自分の暮らしを整理して、すっきりさせて、何も置かないテーブルのようなものを持って、そこに小さな花をぽつりと活けることによって、暮らしが変わっていく。そこに僕らが持っている伝統のようなものが息を吹きかえしていく可能性もあると思いますね。
家が変われば、伝統産業も生まれ変わるかもしれません。伝統産業そのものをいくら磨いても、リモコンの散乱したテーブルがある限り意味がないわけです。決して贅沢でなくても、簡潔に整理された暮らしのなかに美しい工芸品をぽつりと置く。そういうことを目指してみたいという気もするんですよね。そろそろ、日本の家を見たかと言ってもらえるような、文化の品質のようなものが宿ってくるような、そういうことを意識してみたいと思いますね。
大西
日本の美意識って結局そこにあるんじゃないかと思いますね。そういうような昔から持っている日本人の美意識をもう一度呼び覚ますような住宅、住宅地というものを、これからさらに仕掛けていきたいと思います。
MUJI
ありがとうございました。最後に、MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクトの対象団地で行われる住人祭が、12月に開催されます。餅つき、すいとん祭り、音楽祭といったきっかけによって、団地が若い世代を含むいろいろな方が集まれる場所になればいいなと思います。本日はありがとうございました。