


MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト 対談
団地を舞台に考える“感じ良いくらし”2019

- 里見
- 場を提供する側としても、食を軸にして人をまちに導き出す仕掛けは重要だと思っています。南大沢で、無印良品さんにご協力いただいたシェアキッチンを使ったイベントはよい事例となりました。
一方で、こちらのような商店街では、たとえば飲食店を増強していって、個人でお店を始めたい方に入っていただくというのもあると思っています。カフェを開くためのノウハウ本などを見ると、50m²や60m²の手ごろな物件を探すのが大変だと書いてある一方、URの団地には50m²~100m²の店がたくさんあるんですが…。 - 金井
- けっこう高いんですよ、家賃が(笑)。
- 里見
- すみません(苦笑)。
私はURに来る前は長崎県の仕事をしていたのですが、地方は車社会なので街に人があまり歩いていなくて、郊外のスーパー内のフードコートに老若男女がわーっといるわけです。その風景を思い出しながら、団地内にランチを中心にしたフードコートをつくって、これから店をはじめたいと考えている若い料理人や、一度閉店したけれど再び店をやってみたいと思っている料理人が、ランチ限定50食、100食だけ出すといったビジネスモデルをつくれないかと思いました。日替わりで売れ残りの食材がない、つまり、変化とコスト低減を両立させるようなお店です。
場所とメニューに変化があると、今日は何が食べられるかなと、みんなそれが楽しみになります。そういう楽しみ方ってあると思うのです。先ほどの話ともつながるのですが、高齢者は連れ合いがいなくなってひとり暮らしになると食事をつくらなくなるようなので、ランチフードコートみたいなものがあると、そこへ出てきて食事をきっかけにいろいろな人と繋がることができる。栄養バランスも取れるから健康にもなる。
昔はものを売ったり買ったりするのが商店街でしたが、これからはちょっと出てきてちょっと楽しんで日ごろ食べないちょっと変わったものを食べたというようなことを他の人と話せれば面白いのではないでしょうか。本当にいろいろな可能性を感じます。
南大沢のようなみんなで楽しく食べるイベントや、企業さんが提供するフードコートなど、団地の大きさや周辺の商業環境によっていろいろなバリエーションをつくりこめれば、団地の住戸そのものは比較的均一ですが住んでいる方はとても多様なので、食を通じたコミュニティ形成をさらに発展できるのではないかと思いました。
先日、Cafe&Meal MUJIでひとりで食事をしながら、でもまわりは女性ばかりだなあと思いながら、そんなことを考えていました(苦笑)。
ただ、それをうまくハードウェアに埋め込むのはけっこう大変で、店外に張り出したオープンカフェくらいはさほど難しくありませんが、屋根付きのフードコートをつくろうとするといろいろな行政の規制が掛かってきます。しかしその辺は私たちの固有の問題なので、いざやるということになれば、地元の行政とも一緒に協議して進めないとならないと思います。
- 金井
- そうですね。条例など、時代に合わせてどうやって変えていくかということについても、里見さんがそういうお考えでやっていってもらえれば、よくなりますね。
私たちは、地方の百貨店をもう一度再生して、まちの真ん中に人がもっと集まる社会をつくるお手伝いもしています。そしてそういう活動をしていく際にいつも方程式のようにいうのは、「そこにいる人を当事者にする」ということです。それが私たちの仕事だと思っています。だから団地のみなさんにも、要は当事者にどうなってもらえるのか、ということなんです。これはそれによって地域経済にいかにお金をまわすかということでもある。 そういう意味では、この団地の中にはいろいろなスキルを持った方がいらっしゃるし、この商店街を魅力的にすることによって外からもレストランに来てくれるようになったり、もっとこの団地自体を開いていくという方向についてもみなさんと考えていくことがあるのではないでしょうか。
里見さんもそうだと思いますが、私はいろいろとものを持ってしまうんですよ。ところが年齢と共に所有したものの活用度は下がっていく。これはおそらくどこの家庭も一緒でしょう。そして最後に困っちゃう。だからその整理の仕方や処分の仕方についてみなさん悩んでいて、現在MUJI SUPPORTでは、そういうご相談にのって整理もしていらなくなったものをどう処分するかというお手伝いをはじめたんですが、すぐに「見て欲しい」ということで反響がありました。
そして、こういうところにいらなくなったものがたくさんある。たとえば、おじいちゃんが使っていたマツの絵の描いてある茶碗は、私たちはもはや興味がなくても、ヨーロッパ人は珍しがって欲しがったりする。私たちもフランスやイギリスで蚤の市に行って、向こうのおじいちゃんやおばあちゃんが使った骨董品を面白がって買ったりしますよね。これは文化の違いで起きることです。
なので、そういう「出口」を広く構えることができたら、みなさんが大事に所有していたものをうまくバトンとして渡していけると思うんです。日本ではこれから各家庭に詰まったたくさんのものたちがどんどん出てきます。これで居住空間をずいぶんと狭くしてきたなあ(苦笑)。
たとえば車だって、外国車から軽トラまで幅広く数十台用意して置いておけば、各家庭で所有しなくたっていいだろうし、いつ誰がそれに乗るかもみんなで話し合いながら決めていければ、いろいろな意味で所有と言う概念から解放されてくるのではないでしょうか。 - 里見
- そうですね。レンタル、シェア、リユースについては、私もとても興味があります。
骨董品というのは、年代が古いものほど高くなる傾向がありますが、値段が高くなるのと、要らなくなるのとの境目は、人がそれをどう評価するかだけなので、ほんとうにおっしゃるような場があったらいいですね。現物を見てこれは自分のところに欲しいと思うとか、借りるだけでいいとか、あるいは「3年だけ借りたいから年間〇〇円でどうですか」といったかたちも含めて、人とモノが交流する場です。
無印良品さんで、絵本を3冊持ってきてくれたら2冊と交換できるというサービスを行っていることを知りました。絵本ってすぐに溜まってどうしようかということになりますが、子どもが好きだった本は捨てにくい。だからといって古本屋に出せるかというと、ボロボロになったものは出せない。それが交換ということであれば「ボロボロでいいんです。うちの子はボロボロでもいろいろな本を乱読するんで」という人が現れるかもしれない。マーケットとは異なった多様な判断をする場所が大切な気がします。 - 金井
- 私たちのところでは、ボロボロになった本をもう一度装丁し直して外側をオリジナルにするというワークショップも人気があるんですよ。たとえばそうしてきれいにした本を集めて、団地の中で居住者の数が減ってきた棟をまるごとリノベーションして図書館にし、中にはカフェがあって美味しいケーキもあって、夜はお酒も出て、みたいな空間にしたら、外からも人が来るでしょう。そういう活用方法も考えられますね。