MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト 対談
団地を舞台に考える“感じ良いくらし”2019
上がりのないスゴロク
- 里見
- ハード的には、集会所を使うのか、部屋の一部を使うのか、いろいろなバリエーションがあると思います。居住者の方々の暮らし方が多様化していると感じるので、いろいろとトライをしながら、新しい住まい方や現代的な住まい方をさまざまな方々に伝えていきたいと思っています。
私がよく職員に話していることなのですが、日本の総人口の中で、特定のテイストを持つ人が100万人いたとします。100万人程度の人口がある層というのは、たとえば自転車好きだったりバイク好きだったり、いろいろいると思うのです。その100万人のうちの1%経済、つまり10,000人ですが、10,000人の人に興味を持ってもらえれば成り立つビジネスモデルはある。とりあえず、そうした趣味とかテイストとかいろいろなものに対応した住戸にトライをしながら、まずは10種くらいのテイストグループの方に共感してもらえればいろいろなニーズが見えてくるのではないかと思っています。
私は住宅政策に長く携わってきたのですが、以前、住宅スゴロクというものがあるといわれていました。出だしの若者のころは木賃アパートで、結婚して抽選に当たって公団の賃貸住宅に入り、最後は公団の分譲か庭付き一戸建てを手に入れて「上がり」というものです。ところがいまは、上がりがないスゴロクに変わってきています。どういうことかというと、戸建て住宅にお住まいの年配の方が公団(UR)の賃貸に転居されるケースが増えているようなのです。
- 金井
- 子どもが巣立っていって、奥さまから「おとうさん、こんなに部屋はいらないわね」といわれたときに、入りたい方々が出てきそうですね。
- 里見
- かつて公団の賃貸に住んだ経験のある方が多い世代だからでしょうか。
年配の方がひとりないしふたりで入居されるケースが多い。私たちはセーフティネット住宅という政策的な役割も担っていますから、単身高齢者でもウェルカムです。つまり、先ほどの住宅スゴロクで上がりだと思っていた戸建て住宅がもはや上がりではなくなった。
たとえば子どもが結婚して家を出て海外永住する、となったら、その家を引き継ぎたい対象がいなくなるわけですから、無理して必要以上に広い戸建て住宅を維持するよりも、カギひとつで暮らせるところに住みたくなるのではないかと推測しています。
- 金井
- そうなると、団地の真ん中に先ほどお見せした「MUJI SHARE HOME」のような施設がますます必要になってきそうですね。
- 里見
- そういう意味では、街なかで頑張っている銭湯もいまあらためて注目されていますね。
- 金井
- 銭湯もまさに同じような時代背景を持っていますね。ほとんどの家が内風呂を持つようになったものの、単身高齢者世帯では使われなくなる。
私たちは、豊島区と協定を結んで、現在区内で160近くある公園のうち、あまり使われていないものを使われるようにしようということで、デザインも含めて協力しています。私たちはそこで「MUJIの湯」というお風呂をやってもいいよといったんです。そうすると高齢者の方々がお風呂に集まってきて、2階はテーブルがあってお茶が飲めたり、かつてはみなさんの社交場のような存在だったものが復活する。そういうふうにつくり変えていく時代がきたように思います。
- 里見
- 今朝は私が当番だったので風呂掃除をやってきましたが、風呂掃除ってけっこう大変なんですよね。これは独り者になったらやらないかもしれないなと思いました。
そういう意味では、住宅スゴロクというものが終わって、みなさんに改めて賃貸住宅をいろいろなかたちでお使いいただく時代になったんですね。
私たちも、そうした流れを的確に読み取っていろいろなサービスを提供できたらいいなといつも思っています。無印良品さんのような、社会の中心的なところにあって個人をずっと見てこられている方々のお話をうかがい、トライアンドエラーを重ねながら、よい新規事業が立ち上げられたらと思っています。