MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト 対談
団地を舞台に考える“感じ良いくらし”2019

共働きのライフスタイルに向けて
里見
私たちも、伝統的に団地は子育てに相応しいといい続けているんですよ。
ですが、最近では、団地は専業主婦向きにできていて、共働きの人たちにとってはどうなのかといわれてもいます。
金井
団地ができた時代背景からすれば当然でしょうね。
里見
統計の取り方にもよりますが、政府の白書に載っている調査(労働力調査)によれば現在6割くらいの世帯が共働きだそうです。共働き世帯が必要とするサービスと、専業主婦が必要とするサービスは異なりますから、現在URではウェルフェア部門をつくってそのことについて話し合っているのですが、共働き世帯はとにかく時間がない。私も共働きなので実感はあります。ではどういうサービスが必要なのかを洗い出してみようと思ったんですが、子育てって終わってみると何で苦労したのか思い出せない。苦労したなとは思うのですが何で苦労したのか思い出せないんです(苦笑)。
金井
それは奥さましか覚えていないんじゃないですか(笑)。
里見
そうなんですよ。なので現在、共働き世帯の子育てでストレスに感じることをみんなでリストアップして、それに対して私たちでできるサービスと、外部委託するべきサービスを検討しているところなんです。
家内は、コインランドリーがあると助かるけれど畳むところまでやって欲しいとか、自分で後片付けしなくていいシェアキッチンがすぐ近くにあるとか、ときどき食事をつくりに来てくれるとありがたい、といった要望を持っていました。食事に関しては毎日つくって欲しいという方もいるでしょう。そういったひとりひとりの声を分類して、朝から晩まで、曜日や季節ごとに、あるいは何かイベントの際の、人生のライフサイクルの中でどこでいまの団地での子育て生活にストレスを感じるか、どういうサポートに入って欲しいのか集めようといっています。おそらくかなり多様なものになるだろうと思いますが、団地には多くの方がお住まいですから、共働き世帯のストレスや悩みを解決するような多様なサービスを、利用頻度に合わせた複数のモデルで組んでいくのがよいのではないか、という話をしています。
金井
いまは、隣近所との間に、「醤油を切らしてしまったので、貸してくださいますか」、みたいなことは起きないですよね。でもそういうコミュニティができて、ご近所が顔見知りになっていって信頼感ができたら、たとえば奥さんが出かけている間に子どもが幼稚園に行って帰ってきても「私が面倒を見てあげるわ」みたいな状況が自然に生まれてくる社会、何でもビジネスにしちゃうというよりは、そういう社会をつくることが、まずはじめにあるといいなと思います。
長崎の五島列島は、ひとりあたりのGDPは低いけど出生率が高い。それは共同体の安心感があるからです。みんな顔見知りで、なにかあったって地域のセーフティーネットが昔からちゃんとあるから子どもがつくれる。でも都会に出てくるとそれは分断されてしまっているので、誰も知り合いがいなくて誰も助けてくれもしない。なので社会生活のセーフティーネットをもう一度復活させるというのが、すごく大きな仕事のような気がします。
里見
私たちも現在、「AsMama」さんなど子育てとコミュニティ形成と携わる会社やNPOの方々とお付き合いをはじめています。そこから、ハコだけではない、子育てに相応しい団地像というものを、引き続き模索していきたいと思っています。
MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトのおかげで、若い方に団地に興味を持ってもらえたのですが、あの部屋でそのまま子どもを育てるのかと考えると、次はもう少し汚してもいい部屋のほうが受け皿としていいのではないか、といったことも考えています。MUJI×URで育った世代がURの中で転居していくようになってくれたら嬉しいですが、逆にライフステージのなかでいつでも戻ってこられる社会のインフラがここあるよということもお伝えしたい。そういう理解をしてもらえるようになると、団地の再評価に繋がることになると思います。
なるべく固定観念にとらわれずに、私どもの理事長も「団地はビジネスチャンスに溢れているはずだ」と檄を飛ばしていますので、私たちも、いろいろなかたちの場の提供をやっていきたいと思っています。ぜひまたご一緒させてください。
金井
今日お話しさせていただいたような社会構造をつくっていくことをぜひお願いしたいです。住民の方も一緒になって、ここをどういうふうに生かしていくのがいいのかを考え、実践する輪が広がって、ここにモデルとなるような空間がつくれたらいいですね。
里見
そうですね。
MUJI
本日は、シェアとコミュニティというもともと団地が持つポテンシャルに関するキーワードに加え、団地の今後におけるリユース、起業、子育てといった言葉をめぐってディスカッションが交わされました。そして、多種多様な方々が住まわれている団地の中で、その人たちが活躍する場や機会が大切な役割を果たすのだなということをあらためて感じました。
無印良品がお役に立てる部分として、住まわれている方たちに「出てきてもらう」というお話がありましたが、いかにそういう仕掛けをつくるかということだと思います。ひとつひとつの住戸空間内だけではなく、もっと幅広くお手伝いできるのではないかという可能性を感じました。ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。