研究テーマ

松江高専での歩行評価②

7 松江高専での歩行評価②

前回、8月に松江高専で実施した歩行評価の方法や様子をご紹介しました。
この歩行評価は「歩きやすい」「疲れにくい」を実現することを目的として設計した開発品が、ねらい通りにその機能が出せるのか確認するための評価です。今回はその結果の一部を紹介します。

前回のおさらい(評価方法)
○歩行評価は、現行品と開発品の比較で行ないます。女性は3種類、男性は2種類の比較です。
○評価は以下の4項目について行ないました。
このうち1.~3.の項目は歩行の前と後で計測し、変化の度合いを調べて比較します。
4.は歩行後にアンケート形式に答えてもらい、評価を比較します。
評価項目 方法 箇所 計測タイミング
1.筋硬度 筋硬度計 前脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋 歩行前後
2.足裏接地比率 足裏をスキャナーで読み取る(フットルック) 足裏、足幅、足長、母指角度 歩行前後
3.周囲径・舟上骨高 メジャー ハイトゲージ 下腿最大囲、足囲、舟上骨高 歩行前後
4.主観評価 アンケート 歩行後

結果1.足裏接地比率 ~歩行前後での変化量~

足裏は歩行などで疲れると内側の縦アーチ(土踏まず)がつぶれ、地面に接地する面積(足裏接地面積)が増えます。歩行後に足裏接地面積が増えていなければ(減っていれば)足の疲れが抑制されているといえます。

現行品も開発品も、歩行前より歩行後の足裏の接地面積の方が減少していました。現行品と開発品を比較すると、開発品の方が内側縦アーチの低下を抑制できているため、「疲れにくい」スニーカーになっていると考えられます。

結果2.舟状骨高 ~歩行前後での高さ変化~

  • 歩行などで疲れると土踏まずが下がり、それにともない舟状骨(右図参照)の位置も下がります。
    この舟状骨の床からの高さを測り、歩行の前後で舟状骨の低下が少なければ足の疲れが抑制されているといえます。

現行品の舟状骨高は歩行前後で変わりませんでした。開発品も歩行後に舟状骨高が低くなることはなく、良好な結果となりました。開発品で歩行後に舟状骨が高くなっているのは、インソールの土踏まず部分を凸型に盛り上げたことで土踏まず部分が矯正されたためではないかと考えられます。

測定結果

以上の結果から、開発品の方がより土踏まずの低下を抑制でき、疲れにくさに繋がっていると考えられます。

結果3.主観評価 ~男性10名~

歩行後に、履き心地や疲れについて、それぞれ5段階で評価してもらい、その結果を比較しました。

履き心地については、現行品も開発品も「普通~良くなかった」の評価をした人はいませんでした。
現行品と開発品を比較すると開発品を良かったと回答した人が増えました。

履き心地

足部の疲れについては、現行品は一部に「すごく疲れた」という方がいらっしゃり、また「全然疲れなかった」という人はゼロでしたが、開発品は「すごく疲れた」という方はいなくなり反対に「全然疲れなかった」という人が大幅に増えました。

足部の疲れ

この2つの質問以外にも合わせて約20の設問に答えていただき、総じて開発品の方が良い結果になりました。

まとめ;疲れと評価結果の関係

これらのデータの関係性を分析したところ、「疲れにくさ」と今回の評価項目の関係について以下のことが分かりました。

また主観評価の質問項目と「疲れにくい」との関係をみたときに、特に関係が強い主観評価は以下の4つであることが分かりました。

  • ①「履き心地の良さ」
  • ②「中敷と足裏のフィット感」
  • ③「着地時の衝撃の感じにくさ」
  • ④「適度な靴底の曲がり」

①~④の評価が良いと疲れにくいと感じる

今回の歩行評価の結果から、履いた人の感覚【疲れにくさ】と足の変化【計測値】の関係性が明確になりました。これらの結果と次回の松江高専の機器を使った評価の結果に基づき、もう一度仕様を修正した上で、再度歩行評価を行なうことにしました。
次回は、松江高専の機器を使った評価の様子をご紹介します。