歩行安定性評価
「疲れにくい」スニーカーの機能を評価するために、前回は出来上がったサンプルを使って、学生さんによる歩行評価を行ないました。
今回は松江高専の評価機器を使って歩行時の重心の安定性について評価しました。
その様子をご紹介いたします。
- 1)歩行時の足裏の重心移動の軌跡の評価
- 歩行時の足裏の重心がどのような軌跡をたどっているのかを確認することで、スムーズに「あおり歩行」(第4回参照)が正しく行なわれているかを評価する
- 2)重心移動のブレの評価
- 歩行時の足裏の重心が移動する過程で、左右に重心がどれだけブレているのか、つまり足が左右にどれだけぐらついているのかを評価する
を評価することを目的に現行品と開発品との比較で行ないました。
重心動揺と疲れの関係
あおり歩行がうまく行えず、足裏接地時に左右にぐらつきが生じると、関節への負担が増大し、エネルギーを過剰に消費することになります。
また同時に内側の土踏まずの筋肉への負担が大きくなり、それによって疲れも増大します。
さらに衝撃緩衝性の低下も招くことになり、さらに足裏接地時にぐらつくという悪循環を招くことになります。
今回の開発品したスニーカーは土踏まずの部分を盛り上げることにより、土踏まずの筋肉をサポートするだけではなく、歩行時に理想的な体重移動が出来るように、つまり正しくあおり歩行が行なえるような設計になっています。
フォースプレートとは?
- このプレート上を歩行したときの、圧中心や重心動揺、衝撃力を計測することがでる機器です。
- Kistler9286B,KISTLER社
評価方法
- 被験者
- 松江工業高等専門学校 学生さん15名(男性8名、女性7名)
- 靴条件
- 男性:現行品スニーカー、開発品スニーカー
- 女性:現行品スニーカー、開発品スニーカー
- 被験足
- 右足
- 方法
- 各スニーカーを履いてフォースプレート上を歩き、右足を無作為抽出する
- 分析項目
- Ⅰ.足圧中心の軌跡
- Ⅱ.足圧中心のばらつき
- 使用機器
- フォースプレート(Kistler9286B(KISTLER社))
評価結果
男性、女性ともに、現行品も開発品も歩行時の足裏の重心移動の軌跡は正常で、あおり歩行が行なえていることがわかりました。(下グラフ(男性の結果))
男性の足圧中心軌跡
しかし重心移動の左右へのばらつきを比較すると、男性、女性ともに現行品のほうがよりばらつきが大きく、足の重心が左右にシフトしていることがわかりました。(下グラフ(男性の結果))
男性の足圧中心のばらつき
開発品の方がばらつきが小さい
つまり開発品は現行品に比べてより重心移動が安定しており、理想的な歩行(あおり歩行)に近いことが分かりました。
左右のぐらつきが少なくなると関節や土踏まずの筋肉への負担が減り、疲労が低減できるため、今回の結果から開発品の方が疲れを低減できる理由を明確にすることが出来ました!
今までは、感覚的に「疲れにくさ」を感じていましたが、目に見えてその理由が分かったのでとてもうれしいです。これで「疲れにくいスニーカー」と自信を持ってみなさんにお勧めできます。
次回はこのスニーカーを生産する工場についてレポートします。
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1
- 2012年11月7日 「疲れにくい」「歩きやすい」ってどんなこと?
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2
- 2012年11月14日 松江工業高等専門学校との共同研究
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3
- 2012年11月21日 現行品の3ヶ月使用モニタリング評価
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4
- 2012年11月28日 インソール・アウトソールの改良
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5
- 2012年12月5日 試作品が出来ました
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6
- 2012年12月12日 松江高専での歩行評価①
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7
- 2012年12月19日 松江高専での歩行評価②
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8
- 2012年12月26日 歩行安定性評価
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9
- 2013年1月16日 生産工場のお話
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10
- 2013年1月23日 第2回歩行評価 ─MUJI銀座松坂屋─
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11
- 2013年1月30日 松江工業高等専門学校 齋藤先生インタビュー
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12
- 2013年2月6日 とうとう出来上がりました
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13
- 2015年5月6日 番外編 コットンスニーカーの有用性を論文として発表しました