研究テーマ

生産工場のお話

9 生産工場のお話

どんなにすばらしい設計図ができても、それが工場で生産できるものでなければ、製品として販売することができません。
今回の改良は、普段履きのスニーカーとしては、他社ではあまり行なわれていないことにチャレンジしているので、生産を担当する委託工場でも、設計図を現実の生産に落とし込むために、たくさんの苦労がありました。今回は生産工場での様子と生産にたずさわる方々へのインタビューの様子をレポートします。

スニーカー生産の流れ

スニーカーは、生産の段階で大きく分けて

  • ①インソール
  • ②アウトソール
  • ③アッパー

の3つ部分を別々に生産し、最後に組み立てます。

今回の製品はインソールを専門に生産する工場と、アウトソール・アッパーの生産と組み立てを行なう主に2つの工場で生産をしています。
実はこの¥1,980のスニーカーも多くの人の細かい作業工程をたくさん経て製品化されます。
人手による作業が非常に多いのも特徴です。

インソール工場の方、アウトソール・アッパーの製造&組立工場の方、それぞれに設計や苦労した点についてお話を伺いました。

1.インソール工場インタビュー

  • まず今回インソール生産をお願いしている黄社長にお話を伺いました。黄社長は工場の生産技術を自ら考える技術者でもあります。
  • 社長の黄伯元さん
    所在地:中国 広東省東莞市
    創業:1998年
    従業員数:45人
  • Q1.図面を見て最初にどのように思いましたか? 黄社長:
    土踏まずの部分のふくらみが高く大きいのが特徴的だと思いました。これほど大きく高い設計はめずらしいと思います。
  • プレスして凹凸をつけます
  • Q2.この設計を製品にするために、特に苦労したことはどんなことでしたか? 黄社長:
    土踏まずの部分のふくらみが大きいのに加え、母指球は反対に凹んでいるため、厚みの差が激しい設計になっています。そのためインソールの硬さを一定に維持するのに苦労しました。
    今回は材料のEVAの配合を工夫しています。
  • プレスしたシートを型で抜きます
  • Q3.この製品を製造する際に一番気を遣う点は何ですか? 黄社長:
    インソールの意匠(デザイン)の金型の精度です。土踏まずの緩やかな丸みを帯びた形を出すために、手作業で何度も削り直しました。
  • インソール工場のみなさん

Q4.この製品の中でぜひお客様に知っていただきたいポイントは? 黄社長:
これだけ凹凸に差があるインソールは経験がありません。独特な履き心地だと思います。

2.アウトソール・アッパー製造&組立工場インタビュー

次にアウトソール・アッパーの製造と全体の組立をお願いしている工場の荘さんにお話を伺いました。

  • この工場では「バルカナイズド(加硫)製法」という方法でアウトソールのゴムを硬化させる特徴的な方法を用いています。
    この製法は硫黄を含んだやわらかいゴムをアウトソールの形に成型し、アッパーと接合させた後、加硫釜という大きな釜で靴全体を加圧・加熱し、ゴムを硬化させます。
    この製法は車のタイヤなどと同じです。
  • アウトソール・アッパー&組立工場の荘潤禹さん
    所在地:中国 広東省東莞市
    創業:1993年
    従業員数:600人
  • Q1.図面を見て最初にどのように思いましたか? 荘さん:
    アウトソールのコットンスニーカーの意匠(デザイン)が魚の骨のようで、特徴的だと思いました。
  • 加硫釜
  • Q2.この製品を製造する上で苦労した点はありますか? 荘さん:
    アウトソールのアッパーとの接合面に特徴があるので、貼り合わせに苦労しました。生産の際も注意して作業を行なっています。
  • スニーカーを加硫します
  • Q3.この製品の中でぜひお客様に知っていただきたいポイントは? 荘さん:
    ベーシックなデザインのアッパーと斬新なインソールが融合しているところが面白いと思います。新しい履き心地を楽しんでもらいたいです。
  • アウトソールとアッパーの貼り合わせに特に注意しています

このように遠い中国の工場で、たくさんの方々の協力と技術によって今回のスニーカーが出来ていることに感謝するとともに、身が引き締まる思いです。
また、みなさんに普段あまり知られていないスニーカーの工場の作業の様子を知っていただけるとうれしいです。

次回はお店で行なわれた2回目の歩行評価の様子をお伝えします。

スニーカー工場のみなさん