研究テーマ

第2回歩行評価 ─MUJI銀座松坂屋─

10 第2回歩行評価 ─MUJI銀座松坂屋─

改良版スニーカーの開発もいよいよ大詰めです。「歩きやすい」「疲れにくい」を目標に評価をさまざまな角度から行ない修正を加え、生産やコストも考慮して最終的な仕様を決定してついに最終サンプルが出来上がりました。

8月に松江高専で歩行評価を行ないましたが、このときは歩行時間が1時間だけでした。もっと長時間履いたときはどうなるのか、最終サンプルで再確認することを目的として、2回目の歩行評価を行なうことにしました。

長時間履いても疲れにくくなっているのかを知るためには、毎日立ち仕事をしている人に履いてもらうのがいいだろうということで、MUJI銀座松坂屋の店舗スタッフに協力してもらい、勤務前と勤務後に足の変化を、現行品と改良版とで比較する2回目の歩行評価を実施しました。

  • 実施日: 2012年12月23日~27日(5日間のうちの男性は2日間、女性は3日間実施)
  • 被験者: MUJI銀座松坂屋のスタッフ 男性7名 女性9名

前回同様、評価は現行品と開発品の比較で行ないます。女性は3種類、男性は2種類の比較です。

  A B C
女性
(3種類)
現行品
綿洗いざらしスニーカー
開発品
綿洗いざらしスニーカー
開発品
綿スニーカー
男性
(2種類)
現行品
綿スニーカー
開発品
綿スニーカー

まず店舗スタッフは勤務前に一度足の状態を計測し、そのあとスニーカーを着用します。

その後着用したまま勤務します。着用時間は約8~10時間(日によって若干前後)となり、松江高専で行なったときよりもかなり長い時間着用しました。

また使用する条件も、実際に店舗業務を行なっているため歩行だけではなく、立ったままの状態や荷物を持つなど、さまざまな動作を行なうことになり、よりお客様が使う場面に近い環境での評価となりました。

勤務終了後には、再度足の状態を計測し、勤務前との差異を確認しました。

スニーカーを履くときのソックスも着用時の条件を揃えるため、無印良品で多くのお客様に愛用いただいている足なり直角靴下スニーカーインソックスを使用しました。

[ネットストア]
足なり直角靴下スニーカーインソックス

また今回は前回の評価項目に加え、いくつかの項目を追加しました。

歩行評価 1日の流れ

  • 1日の流れはこのようになっています。
    このスケジュールを男性は2日間、女性は3日間、現行品と開発品で行なってもらいました。
    また今回は足の状態を自己申告してもらうアンケートを1日に3回実施しました。これは、前回の8月の計測時に、「時間が経ってからのほうが疲れを感じた」という意見があったためです。 アンケート(一部)

勤務前&勤務後の計測項目

勤務前と勤務後の計測は以下の項目を測定しました。ほぼ前回松江高専で実施した項目ですが、前述のアンケートとむくみ計測を追加しました。

計測項目 測定機器 何を見るか
下腿最大囲・足囲 メジャー むくみの発生
むくむ→下腿最大囲・足囲が大きくなる
舟状骨高 ハイトゲージ 土踏まずのアーチの低下
疲れる→舟状骨高が下がる
前脛骨筋硬度
腓腹筋硬度
ヒラメ筋硬度
筋硬度計 筋肉の疲労度
疲れる→筋硬度が高くなる
足裏接地面積
比率
フットルック 土踏まずや指の付け根のアーチの低下・むくみ
疲れる→接地面積が増える
むくみ計測
(※追加)
多周波数方式体脂肪計 むくみの発生
むくむ→数値が下がる(機器計算による)

勤務前&勤務後の計測の流れ

  • 測定位置のマーキング
  • 足囲の測定
  • 舟状骨高の測定
  •  
  •  
  •  
  •  
  • むくみの測定
  • フットルックの測定
  • 筋硬度の測定

筋硬度について

前回に引き続き筋硬度の測定を行ないました。前脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋の3つの筋肉の筋硬度を計測する理由は、歩行動作を行う際に欠かすことの出来ない役割を担っている筋肉だからです。

むくみ計測について

今回は前回の評価項目に追加し、むくみ測定を行ないました。このむくみ測定には「多周波数方式体脂肪計」という機器を使います。この機器で下半身の水分率を計測することができます。

  • 多周波数方式体脂肪計
    「MLT-30」
    (積水化学工業株式会社)
  • 単回使用心電用電極
    「レクトロード」
    (積水化成品工業株式会社)
  • まず両足のくるぶしの上とそのすぐ上に2枚の電極シールを添付します。
  • この電極に多周波数方式体脂肪計を取り付けます。
  • スイッチを入れ電流を流します。すると約10秒ほどで計測が終了します。

この計測によって周囲径計測には現れないような微細な足のむくみ(下腿の水分率)の変化を目に見える形にすることができます。

今回はお客様が実際に使用される場面を想定し、1日中履いたままのような環境下での評価条件で、測定を行ないました。

足を入れて履いたすぐのときと、実際に長時間履き続けた時とは、評価も異なります。

前回の松江高専での評価傾向と一致する項目もそうでない項目も出てきて課題が全てクリアになったわけではありませんが、こんなに長い時間の着用評価は、私たちも初めてでしたし、また他社でもこんなに長時間の歩行のデータはなかなか取ることができません。本当に貴重なデータを取ることが出来ました。

MUJI銀座松坂屋の店舗の皆様、忙しい中連日ご協力いただきありがとうございました。

次回はいよいよ松江高専の齋藤先生の登場です。インタビューの様子をお伝えします。