MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
団地ハイキング「多摩ニュータウンを歩こう」
※このレポートは、2015年11月29日に都内で開催されました、「団地ハイキング『多摩ニュータウンを歩こう』」の様子を採録しています。
トークセッション
ハイキング後、グリナード永山に戻り、門脇氏、石川氏、川内氏によるトークセッションが行われました。- 川内
- 門脇先生からは建築的に、石川先生からはランドスケープ的に、ハイキングしてみて感じたことをお聞かせください。よろしくお願いいたします。
- 石川
- 今日、歩いたルートをGPSで記録していたので見てみましょう。
- 石川
- 住棟は丘にあり、幹線道路は谷間を走っています。谷の両側の斜面に緑地が残されています。このように丘陵の地形的な特徴が生かされて多摩ニュータウンの景観ができています。地形による土地利用の違いは日常生活にも関わっています。たとえば住棟のある丘の上には自動販売機もない。コーラ買うにも谷に降りなければいけないのです。谷に降りるとコンビニがあり、それはあまり麗しい風景ではないけれど、便利ではあります。様々な要素が混在しているのが多摩ニュータウンの特徴です。
低地の大部分は水田でした。低地は農地としての価値が高かったため、区画整理事業になったという経緯があります。多摩ニュータウンは完全には計画しきれなかったと語られることもありますが、いまあらためて見直すと、こうした土地利用の違いが入り交じっていることがこの地域の資産ではないかと思います。
本日歩いたところでいえば、同じ丘の上の住宅エリアでも、諏訪団地Brilliaの広場のデザインと、緩い永山団地の広場との対照が印象的でした。多摩ニュータウンには非常に歴史的にいろんな建物があるので、各時代のつくり方を味わえることも面白いです。
では、本日歩いたエリアの航空写真の時代を遡って見ましょう。
- 石川
- 1984年、今から約30年前です。住棟ができて間も無いことがわかります。建物がピカピカしていますね。 街路樹や公園などの、作られた緑がそれほど茂っていませんが、既存の緑がいかに当初から濃い緑地であったかということがよくわかります。
- 石川
- 70年代まで遡ると、周囲の多くの土地が造成中で、土が見えています。 既存の緑地と造成緑地の差が更によくわかりますし、住棟の間の歩道のレイアウトなども見えます。
- 石川
- 1974年、このあたりの団地のできたての写真です。この頃の写真が「多摩ニュータウン入居者募集開始の頃」というようなタイトルの写真によく使われます。周囲は土がむき出しで、冬は砂埃が多かったかもしれません。土がむき出しで、地形がよくわかります。本日歩いたタウンハウスのあたりはまだ何もありません。こうしてみると、永山は古くから人が住んでいたことがわかります。
- 石川
-
現代の空中写真です。建設当時は土が見えていたオープンスペースに豊かに緑があります。多摩ニュータウンはたしかに都市化した土地ですが、このように計画的に緑が作られています。全体として見れば、団地の配置や道路のレイアウトなどに、地形がうまく利用されていることがよくわかります。ひとつひとつの団地は平坦に造成された土地になっていますが、広域的に見ると棚田のように地形が残っています。
また、少し広域的に眺めると、このニュータウンは強い輪郭を持っています。尾根を挟んだ南側の町田市の様子と見比べるとそのコントラストが目立ちます。多摩ニュータウンの外縁はとても興味深いです。尾根を超えて歩いて行くと、いきなり里山が現れます。段々畑があって鳥がないている。ちょっとしたタイムスリップ体験です。ぜひ唐木田駅でおりて、南に散歩してみてください。
(掲載図版写真はすべて国土地理院「地理院地図」をKashmir3Dで表示) - 川内
- ありがとうございました。確かに歩いてみると、谷と山を感じられますよね。
- 石川
- 多摩ニュータウンを見ていると、土地利用のしたたかさを感じます。建て替えが出来ないと、おそらく丘の上から人口が減っていき、ニュータウン全体が変わっていくのではと思います。土地利用の複雑さは面白くもあり、強みにもなっています。街には割り切れない部分が残っていることも必要なのかもしれないですね。
- 川内
- ありがとうございます。では改めて、門脇先生、よろしくお願いします。