MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
団地リノベーション完成 ここだけの話 2013

※このレポートは、2013年2月14日に無印良品 難波で行われた、パネルディスカッション式のトークイベントを採録しています。

パネリスト:

長谷川 晋一氏

UR都市機構西日本支社。技術の建築職。
設計・工事の担当部門で住戸改修、トータル改修、団地リノベーションの設計や工事に携わり、改修技術だけでなく、UR団地の魅力の再発見や暮らしの提案に興味がある。

パネリスト:

豊田 輝人氏

「無印良品の家」商品開発担当。
無印良品の家を中心に、マンション・戸建分譲・リノベーションなど、無印良品の住空間新プロジェクトにも携わる。

パネリスト:

川内 浩司氏

「無印良品の家」商品開発部長。
無印良品が考える賢く豊かな暮らしをかたちにすべく、新築注文住宅から、マンション、リノベーションまであらゆる「住まいのかたち」づくりに関わる。

川内
本日はお越しいただきありがとうございます。今回のトークイベントのテーマは「団地リノベーション完成 ここだけの話」です。
MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトについて、実際に写真を見ていただきながら、プロジェクトのご説明をいただき、深いお話に入っていく予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
長谷川
それでは、まず私からMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトについてざっと概要をお話させていただいて、その後、「ここだけの話」に移っていきたいと思います。
まず、URとしても無印良品さんにしても大きな思いとしてあるのが、次の3点です。

(1) 団地での暮らしの良さを新たなリノベーションを通じて伝えたい
(2) 古いものを大切にしながら新しい価値を与えるリノベーションを提案したい
(3) 「賃貸=借りて住む」ことの新しい選択肢をもっと増やしていきたい

初期の打ち合わせで、こんな思いをぶつけながら話し合いをさせていただいたのですが、キーワードとしてあがってきたのは、“脱nLDK”でした。みなさんもご存知かと思いますが、nには、2LDKとか3LDKだとか、数字が入ってきますね。実はこの“脱nLDK”でかなり盛り上がり、その話から始まったプロジェクトです。

まず「団地って何だろう」ということに触れていきます。
下の写真を見ていただきたいのですが、こんな食事風景が戦後すぐの日本の姿でした。UR PRESSというURが発行している機関誌の表紙で、URのWEBサイトからもダウンロードいただけるものです。この風景が昭和30年頃。我々の前身である日本住宅公団が、住宅をたくさん建てた時代に、ダイニングキッチンのある生活スタイルを提案するんですね。昭和の食卓革命とも言われていたりします。キッチン自体も、ステンレス流し台を独自で開発して導入していました。

団地の食事風景

食事も就寝もする場所(UR技術研究所)

当時の公団が標準装備したダイニングテーブル

最新の電化製品に囲まれた昭和の食卓(金岡団地)

長谷川
やがて昭和50年頃になると、住宅の量が足りてきて、質への転換期となるわけですが、こうして団地というものをあらためて見つめ直してみると、緑が豊かな敷地に陽当り、風通しのいい間取り、心地いいコミュニティがあって、さらに受け継がれた暮らしがそこにあるなど、団地には、心地いい豊かな暮らしの可能性が見えてきました。

そうしたことから、今回のプロジェクトで無印良品さんと「大切にしたい」と共有したことは、

・団地らしさを大切にする
 生かすところ ─ 古いものを新しい価値で見直す
 変えるところ ─ 新しいものを新しい価値で見直す
・住み手が自由にできる余地を残す

ということでした。