MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
10/6 MUJI×URイベント 「未来を考える 団地Lab.」
- 松枝
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「未来を考える団地Lab.(ラボ)」ということで、トークイベントを開始したいと思います。本日の進行を務めさせていただく、株式会社MUJI HOUSEの松枝と申します。よろしくお願いします。
2023年9月に無印良品 グランフロント大阪の店舗をリニューアルした際に、こちらの会場の左手後ろにある、MUJI×URの住戸を再現したモデルルームをつくりました。このモデルルームをきっかけに、MUJI×URの取り組みについてみなさんに知っていただきたいと思い、定期的にトークイベントを開催しています。
MUJI×URの取り組みやトークイベントについて、今回はじめて知ったという方はいらっしゃいますか?少しいらっしゃいますね。ありがとうございます。
ちなみに、今回のトークイベントが8回目となるのですが、以前開催したトークイベントに参加したことがある方はいらっしゃいますか?こちらも何名かいらっしゃいますね。ありがとうございます。
トークイベントではいろいろな形で団地について考えています。
- 松枝
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資料に「『団地』にはどんなイメージがありますか」と書いてありますが、団地は今、様々な魅力が再発見され、時代に合わせた変化が生まれています。
今回のテーマは「未来を考える団地Lab.(ラボ)」ということで、ちょっと堅苦しい感じがしてしまいますが、これから新たに団地を開発するのではなく、みなさんと一緒に、今あるものを活用した新しい団地のかたちについて、広く言うと「研究」、柔らかく言うと「妄想」していただけるように、色々と僕らから投げかけをさせていただき、みなさんからもご意見を伺いながら「団地のイメージ」を一緒に考えていきたいと思います。
登壇者のご紹介をさせていただきます。
UR都市機構西日本支社ストック事業推進部の前田さんと素本さんです。
- 前田
- UR都市機構 ストック事業推進部の前田です。よろしくお願いします。
- 素本
- 同じく、UR都市機構 ストック事業推進部の素本です。本日はよろしくお願いします。
- 豊田
- 株式会社MUJI HOUSEリノベーション事業部部長の豊田です。よろしくお願いします。
- 松枝
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今日のテーマは「団地の未来を考える」となりますが、どこかの団地に絞り込んだ方が分かりやすいと思い、大阪の枚方市にあります「香里団地」をベースとして、何ができそうかを考えて行けたらと思います。
まずは香里団地の全体について、URの素本さんから説明をお願いします。
- 素本
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改めまして、UR都市機構 ストック事業推進部の素本です。
私からまず初めに、UR都市機構の紹介をさせていただきます。
URでは、「未来につながるまちづくり」を行っています。
- 素本
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まちづくりというと、建物を建てたりすることを思い描かれる方が多いかと思いますが、建物だけではなく「人と人とのつながり」もまちづくりと考え、URではその理念を基に、都市再生という先日オープンした「うめきたプロジェクト」などを行っている部門であったり、今回紹介する賃貸住宅、災害復興と3つの部門に分かれて事業を行っています。
URの賃貸住宅部門では住宅を作って住みつないで、時には団地を超えた「まち」という規模で魅力を高めることをしておりますので、本日はその1つの事例として香里団地をご紹介したいと思います。
ちなみに、香里団地を訪れたことがある方はいらっしゃいますか?何人かいらっしゃいますね。ありがとうございます。
- 素本
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香里団地を知らない方もいらっしゃるかなと思いますので、私の方で歴史と今をご紹介させていただきます。
香里団地はどこにあるの?というところですが、大阪駅から北東へ約20キロ離れた枚方市内にある団地です。
淀屋橋から、京阪本線の特急で約20分のところにあります。枚方市駅やそのほか3つの駅が最寄りで、そこからバスで10〜15分ほどのところにある団地です。
- 素本
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こちらの資料ですが、開発当初の1960年代の香里ヶ丘の写真となります。
1955年に、URの前進である日本住宅公団が設立された直後に、「東洋一のニュータウン」として開発されたのが香里団地となります。
大きさは約155ヘクタールで、甲子園球場約40個分という、想像しきれないですが、このような大規模開発が行われたのが香里団地の始まりです。
開発から半世紀近く経った平成以降、香里団地は3つのポイントを大切に、まちの魅力を高めていきました。ここからは写真や図などを交えながらご紹介していきたいと思います。
1つ目が開発当初のこだわり、2つ目は地域が育んだ愛着、3つ目が昭和30年代の団地の趣きです。この3つを大切にしながら、現代の住環境に合わせ建替えなどを実施することによって、現在進行形でまちがアップデートし続けています。
- 素本
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平成以降、まちの魅力を高めていくために、どのような方向性を打ち出していこうかを考えるにあたり、1番初めに、香里団地再生グランドプランというものをURと外部の方々で作りました。
例えば、資料の赤いエリアは香里の中心にあるので、商業を入れていこうと考えたり、緑の点線で囲ってあるエリアは約半世紀の間、まちと共に成熟してきた木々の残るエリアで、積極的に残していこう!と考え、この空間を起点に新しく緑道を整備する方針等をグランドプランで示しています。
つまり、このグランドプランを関係者と共有したところからまちの再編計画がスタートしたのです。
- 素本
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では次に香里ヶ丘の現状を見ていきましょう。
蛍光色のエリアが、みずき街、けやき東街、さくらぎ街と呼ばれる、新しく建替えられたところになります。
そういった新しい建物がありつつ、香里D地区・E地区のように、開発当初の団地の趣きをそのまま残しているエリアもあります。
建替えたところと趣きを残したところが入り交じり、新たな街の表情が生まれているところが香里の特徴です。
また団地だけではなく、先ほど説明をした赤い点線のエリアには商業ゾーンとして新しい商業施設が展開され、元々住宅地であったところは、病院やスポーツ施設といった新たな機能に生まれ変わることで、より居住者さんが暮らしやすいようなまちへと更新されています。
今まで地図ばかりでの説明でしたので、ここからは実際の風景の写真等を交えて、3つのスケールに分け、見ていこうと思います。
1つ目は、まち全体がどうなったの?ということで、先ほど説明しました水路や緑が今はどのように継承されているのか。
2つ目は、団地を建替える際にはどのような視点を大事にしていたか。
3つ目は前の2つからスケールをかなり小さくしまして、 一緒に香里団地や半世紀間一緒に育ってきた樹木や歴史ある建造物を最後にご紹介できればと思います。
- 素本
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まず1つ目のまち全体について、左上に地域を流れる水路の写真がありますが、開発当初からある「香里こもれび水路」というものになります。
こちらの水路は枚方市さんのほうで整備されました。大通りから団地に1本入ると、このような静かな空間が広がっていて、団地の居住者さんの散歩コースや井戸端会議の空間になっています。
平成以降も未整備の水路があったため、趣きある空間を継承するため、今回の建替えを機に新しく整備しようとなりました。それが右上の写真です。
先ほど説明した商業地区の前にこの風景が広がっており、こちらは子どもたちも遊べるような設えとしていますので、左の写真の空間とはまた違った賑やかな空間となっています。
このように、昔からある空間の良さを継承しつつ、時代が変化してもお客様が暮らしやすいように更新するまちづくりをURは行っています。
左下の写真は、団地の周辺にけやき、いちょう、さくらの名がついた3本の並木道で、こちらは「枚方八景」に認定されています。
開発当初から半世紀近く経ち、まちと共に成熟した木々が道を包み込んでいます。香里を象徴する豊かな緑を、これからも大切にしていきたいという思いから、こちらを起点にして、団地の建替えと一緒に緑道を新しく整備しました。
右下の写真は、東西軸のけやき通り、南北軸のさくら通りという軸がちょうど交わった香里の中心にある広場です。
広場の前には元々バス停があり、人の往来が激しかったエリアでした。そこで元々の樹木で覆われた柔らかい空間を残しつつ、新しく広場整備を行い、人々が集えるような空間に再編しました。
続いて、団地を建替えるにあたり何を大事にしてきたかをお話します。
まず団地の現状をつぶさに観察・分析し、香里らしさとは何か?や、より居住者さんが暮らしやすいようにアップデートしていくためには何が必要なのか?というところを考え、その視点を建替え後の住棟配置に活かしていきました。
- 素本
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例えば、建替え前の現状分析の図に赤い矢印が斜めに入っています。当時そこに道はなかったのですが、人は最短経路を通る習性がありますので、皆さんこの道なき道を進んでバス停に向かっていたことが調査していく上で分かりました。
続いて香里ヶ丘は少し高台にあり、生駒山という山を望める点が特徴で、多くの居住者さんも愛着を持っている風景でした。この眺望は建替え後も何としてでも維持したいと考えました。
結果として建替え後の住棟配置を工夫することによって、居住者さんはより暮らしやすく、当時の眺望は大切に保存されました。このように香里らしさを残しつつ、居住者さんの暮らしやすいまちへと更新することを第一に、建替えの検討を行っていたことが分かります。
- 素本
- 先程お話したけもの道が、こちらです。このように団地の道がきれいに整備され、居住者さんはここを通って団地に向かうようになりました。
- 素本
- 住棟配置だけでなく、住戸内にもこだわりがあります。香里は自然が豊かなまちという特徴があるため、お部屋の中にいても自然を感じられるようにカラーコーディネートをしています。
- 素本
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ここからは時代を超えて繋いできたものをいくつかご紹介できればと思います。
地域のみなさんと育ててきた樹木を建替えの際に伐採するのではなく、できるだけ保存しつつ、保存できない場合はできるだけ別の場所へ移植して大切に保管をしています。
- 素本
- 先ほどの写真と別の場所ですが、団地の中を歩く人を優しく包み込んでくれるような空間となっています。団地の居住者さんと一緒に成長してきた木々が、団地を包みこむことで、居住者さんも愛着が湧く空間となっています。
- 素本
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続きましてこちらの歴史ある建物についてです。
香里団地が建設される前は、香里ヶ丘一帯は陸軍の土地でした。その時に使っていた倉庫がクリニックへ転用された事例になります。
こういった建物がまちに存在することで、まちを歩きながら、香里の歴史を感じることができます。
続いては、建替えていない団地の住棟を外壁修繕のタイミングでより魅力的な団地とするために、居住者さんとURで共創して、建物や屋外空間、さらにはコミュニティをもデザインした取り組みをご紹介します。
- 素本
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ご存知の方もいるかもしれませんが、蒸気機関車のことを、「デゴイチ」と呼ぶことからD51棟は、居住者さんから「デゴイチ」の愛称で呼ばれ、親しんでいることが話していく上で分かりました。これからも愛着を持って団地に住んでいただけるよう、「デゴイチプレート」を新たに設置しました。
外壁部分にD51と書いてある部分は、なんと建設当初のパンフレットに使用されていたロゴをそのまま採用しています。開発当初からの思い入れがちょっとしたところで感じ取ることができるようにデザインをしています。
- 素本
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続いては、D51棟の前にある花壇についてご紹介します。D51棟のエントランスを改修する際に、団地の居住者さんとお話をして、レンガはどうしても残したいといったお話をいただきました。地域の想いを受け、元々撤去予定だった床のレンガをどう転用しようかと話し合い、「花壇の一部にしよう」となりました。
現在ではこちらのお花の植え替えも、居住者さんが行ってくれており、非常に愛着を持って団地の屋外空間を使っていただけています。
他にもベンチに塗装したり、居住者さん自ら芝のお手入れをする取り組みを行いました。冒頭でもお伝えしたように、URはハード整備だけではなく、「まちづくりは人とのつながり」と考えているため、このような取り組みもとても大事にしています。
- 素本
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この後のフリートークの際にも登場する、スターハウスについてお話をしたいと思います。関西で唯一居住可能なスターハウスが、香里団地には建設当初のまま、一部現存しています。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、東京の赤羽にも同じようなスターハウスがありまして国の登録有形文化財にもなる等、実は大変貴重な建物になっています。
スターハウスの特徴は上から見た時にY字型になっており、まちの景観にもアクセントを与えています。
- 前田
- スターハウスをご存知の方はいらっしゃいますか?3名ほどご存知の方がいらっしゃいますね。ありがとうございます。
- 素本
- スターハウスの平面図を見ると、ひとつのフロアに3部屋あり、住戸内は外周部3面が外部に面しているので、陽当たりと風通しがとてもよい点が特徴です。
- 素本
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資料の左の写真ですが、1階の階段室から上を見上げると三角形になっています。現代ではあまり見られない階段室かなと思いますので、訪れる機会があればぜひ見ていただければと思います。
これまでは香里の歴史・いまをご紹介させていただきましたが、ここからは、少し内容が変わりまして、私が勝手に思う香里団地の良いところをご紹介させていただきます。これを機に訪れてみたいと思っていただけるととても嬉しいです。
- 素本
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まず1つ目が、団地内にあるプレイロットと呼ばれる遊び場空間です。
香里団地は起伏が多いため、土地の高低差を利用した遊具が置いてあります。他の団地では見かけない珍しいプレイロットで、団地の特徴を活かした秘密基地のようなプレイロットです。
- 素本
- こちらも同じくプレイロットですが、車道に面していないため、お子さんが安心して遊べるようになっています。URは安心・安全なまちづくりのために、歩道と車道を分離することにも力を入れていまして、香里団地もその1つです。子育て世帯からご年配の方まで過ごしやすく、多様な世代が交じり合う空間となっています。
- 素本
- 続いて、団地内のお散歩コースです。先日、真夏の日差しを浴びながら写真を撮ってきたのですが、樹木が豊かな団地のため、意外と団地の中は日陰が多く、猛暑の中でも比較的涼しさを感じながら歩くことができたのは、大きな発見でした。URの屋外空間の豊かさを改めて感じることができました。
- 素本
- 先ほどの写真のようなヒューマンスケールを抜けて大通りへ出ると、ぱっと空が広がります。というのも、URは住棟間隔を広く取っているため、このように空を広く感じ取れる点が魅力です。色々な屋外空間の姿が見られることは、団地ならではと感じます。
- 素本
- 最後に、動物のモチーフのモニュメントが香里団地にはたくさんあることをご紹介して、私のパートは以上とさせていただこうと思います。全国の団地を訪れると動物のモチーフが団地内に散りばめられていることが多く、香里団地もそのうちの1つです。
- 素本
- 写真のようなクマさんの石像や、個人的に結構好きなのが、パンダとコアラがモチーフの遊具です。意外と見つけられない動物のモチーフをした装飾が、団地の至るところにあり、これも団地を訪れてみたいなと私が思うきっかけの1つになっています。 以上ご紹介したようなことも参考にしながら、皆さんも団地を訪れた際には、自分のお気に入りを探してみていただけると、大変嬉しいですね。
- 松枝
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ありがとうございます。
この動物のモチーフの写真は素本さんが全部撮影されたんですか? - 素本
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はい。そうです。
広大な団地の中にひっそりと隠れているので、どこにあるか分かりづらいですが、ぜひ香里を訪れた際は探してみてください。 - 松枝
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素本さんありがとうございます。
香里団地が甲子園球場約40個分という広さの中で、お気に入りがすごくピンポイントですね!なかなか探すのが難しいかもしれませんが、とても特徴的な場所でもあるのかなと思いました。
続きまして、MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトについてお話をしたいと思います。実は、香里団地の中にもMUJI×URの住戸があります。そう言ったMUJI×UR全体の取り組みにつきまして、豊田さんから説明をお願いします。