MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト リレートーク vol.4
品川八潮パークタウン団地ハイキング

※このレポートは、2014年11月30日に都内で開催されました、「品川八潮パークタウン団地ハイキング」の様子を採録しています。

スピーカー:

門脇 耕三氏

建築学者。明治大学 理工学部 建築学科/大学院 理工学研究科 建築学専攻 専任講師。
1977年神奈川県生まれ。2000年東京都立大学工学部卒業。建築構法、建築設計、設計方法論を専門とし、公共住宅の再生プロジェクトにアドバイザー/ディレクターとして多数携わる。

モデレーター:

土谷 貞雄氏

株式会社貞雄代表。コラムの執筆やアンケートなどを行い、コミュニケーションを通したものづくりや共感の仕組みづくりを実践。現在はフリーランサーとして企業のウェブコミュニティサポートを中心に業務を行う。また「HOUSE VISION」の活動でアジア各地の研究会など、暮らしに関する研究会を多く開催している。著書に「無印良品とみんなで考える住まいのかたち。」(エクスナレッジ/2013年)など。

品川八潮団地
品川シーサイド集会所で集合した50名の参加者の皆さん。スタッフの説明を受けてから品川八潮団地へ向かいます。

土谷
みなさん、こんにちは。今日ツアーのガイドをします、土谷です。MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトでは、昨年から様々なトークイベントを開催してきました。関西では大学の先生を呼んで、今団地をどう考え、未来につなげるか考えていこうというトークイベントをやってきました。そして昨年から東京でも「団地再生リレートーク」を実施しています。MUJIは、URと一緒に団地の住戸をリノベーションするだけでなく、団地そのものをどう魅力的にするのか、視野を広げて考えていこうと情報発信を行い、様々なプロジェクトをやっています。特に大阪では団地コミュニティに関わるイベントを仕掛けたりもしてきました。そして昨年、東京ではバスツアーを開催し大変好評でしたが、今回は少し規模を小さくしてリレートーク現地版という形で、団地ハイキングという企画になりました。ゲストとして明治大学の門脇先生にお越しいただいています。門脇先生は建築構法を専門にされています。そして団地についても大変詳しい方です。門脇先生、どうぞよろしくお願いいたします。
門脇
今日は一日よろしくお願いします。実は私も品川八潮パークタウンが初めてです。みなさんと歩いていろいろ発見したいなと思っていますが、見て周る前に、品川八潮団地の情報を皆さんと共有しておきたいと思います。

この品川八潮団地は埋立地です。埋め立てから10年後に団地が建てられました。何故10年後かというと、埋め立てた土地は最初地面がフカフカです。そのため地面が重さで固まってくるまで待たなくてはいけないため、団地が建てられるまでに時間がかります。また、この地は新たに作られた土地だったので、それまでに人間が住んだ事のない場所でした。そしてこの状況は今も湾岸エリアで起こりつつあります。2020年のオリンピック開催を契機に湾岸エリアも埋め立てが進んでいます。その流れは、東京の郊外開発が主に東京の西側で進められた後、暮らしがふたたび都心に戻ってきているという動きから来ています。職住近接型の新しい街を作ろうという動き、そういった意味でもこの団地は先見的で、これからの住宅も、品川八潮がやってきたことから学べるところは多くあります。

品川八潮パークタウンは、中層住棟と高層住棟のミックスで作られています。管理開始は昭和58年。この頃建てられた団地は、皆さんがイメージする団地とは少し違うかもしれません。同じタイプの高層住棟がずらっと並んでいるというものではなく、様々なタイプの住棟が配置されているのが特徴です。この少し前は、住居が足りなかったので、まるでコピーアンドペーストをするように同じ高層住棟を作っていましたが、昭和58年頃になると、住戸不足が解消されていました「コピーアンドペースト」の時代のURは、主に“ランドスケープ”を設計していました。住棟には基本となる設計図がありましたので、同じ住棟をどう配置させるかが腕の見せ所だったわけですね。したがってこの頃のURには、ランドスケープをどう描くかの技術が蓄えられていました。そして品川八潮の頃になると、住宅不足が解消されてきたこともあり、「量から質へ」という標語のもと、それぞれの団地で住棟も独自に設計できるようになってきます。それまで蓄えたランドスケープの技術に加えて、住棟も新しく設計できたということで、「新しい街」をつくりにはいよいよ申し分のない状況になってきたわけですね。URとしても、かなりやる気にあふれた時代だったのだろうと想像します。