MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
トークイベント「MUJI×URで考える団地の未来」

※このレポートは、2017年1月15日に無印良品 グランフロント大阪Open MUJIスペースで行われたトークイベントの模様を採録しています。

パネリスト:

長谷川 晋一氏

UR都市機構西日本支社。技術の建築職。
設計・工事の担当部門で住戸改修、トータル改修、団地リノベーションの設計や工事に携わり、改修技術だけでなく、UR団地の魅力の再発見や暮らしの提案に興味がある。

パネリスト:

川内 浩司氏

「無印良品の家」住空間事業部開発部長。株式会社MUJI HOUSE取締役。
無印良品が考える賢く豊かな暮らしをかたちにすべく、新築注文住宅から、マンション、リノベーションまであらゆる「住まいのかたち」づくりに関わる。

ゲスト:

アーリー氏

出版会社で編集者として働く日本人男性。2016年から、新千里東町団地にあるMUJI×UR 団地リノベーションプロジェクトの住戸に住み、「東京・大阪・団地暮らし~光が丘と千里、2つの団地の住まいレポート~」として、はじめての団地暮らしを発信するレポーターの役目を担う。

川内
皆さん、こんにちは。MUJI HOUSEの川内です。MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクトのトークイベント「団地リノベーション完成 ここだけの話 ~MUJI×URで考える団地の未来~」にご参加いただきありがとうございます。テーマにそった物件のご紹介だけでなく、施工の裏話といった“ここだけの話”もできればと思っております。

本日は、8つのコンテンツを予定しております。6つ目の「MUJI×UR 今後の可能性」は、団地の未来について、こんなことができたらいいな、こんな団地があったらいいなという将来的な視点で、皆さんからもご意見をいただきつつ、お話できましたら幸いです。

また、本日はパネリストとして、MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクトを立ち上げた5年前からご一緒させていただいております、UR都市機構西日本支社の技術の長谷川さんにお越しいただいております。

さらに、ゲストとして、新千里東町団地にあるMUJI×URプロジェクトの住戸に、レポーターとして実際住んでいただき、「東京・大阪・団地暮らし」コーナーでレポートを記載いただいているアーリーさんにもご参加いただいております。実体験に基づいた感想などもお伺いできればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
どうして、MUJI×URなのか
それでは、1つ目の「プロジェクトの概要」から、お話を進めてまいります。 まずは、なぜ、無印良品がURさんとご一緒に、団地リノベーションプロジェクトを行わせていただくことになったのかという背景について。

1950年代、今から60年以上前。戦後、圧倒的に住宅が足らない時代に、新しい日本のスタンダードをつくっていこうと、URさんが団地の建設をスタートされました。それまでの日本の暮らしは、ダイニングと寝室が一緒。ちゃぶ台で食事をしたら、就寝時はちゃぶ台を片付けて布団を敷くというものでした。

ですが、URさんの団地では、欧米的なスタイルを取り入れて、ダイニングと寝室を分離。しかも40m²や50m²と限られたスペースのなか、システムキッチンやダイニングキッチンという、当時はまだなかった斬新な発想でそれらを実現。憧れの暮らしとして人気を博し、今や74万戸を運営する、「世界一の大家さん」と呼ばれる存在となっています。
川内
団地は、非常にシンプルで、余計なことをせず、光と風通しの良い環境が保たれています。人々の暮らしを常に考える我々無印良品としても、団地はインフラとして非常に優れた空間だと感じています。ただ、時代の移り変わりとともに、寝室のスペースを大きく取り過ぎているなど、今の時代にそぐわなくない点があるのも事実です。

無印良品は、1980年から雑貨や家具などといったものづくりを行ってきましたが、見つめているのはその先にある人々の暮らしです。そこで、思いをともにするURさんと無印良品が合わさることで、内装をリノベーションして、時代に適した住み心地の良い空間をつくり、若い方々に団地に戻ってきていただこうと考えました。“日本の新しいスタンダードをつくる”という目標を今一度掲げ、今回のプロジェクトがはじまりました。
 
団地に関するアンケートの結果
MUJI HOUSEでは定期的にユーザーアンケートを取らせていただいているのですが、2012年5月、このプロジェクトのスタートにあたり、団地についてのアンケートも実施いたしました。回答者数は2,247名です。
川内
「今まで団地・公団に住んだことはありますか?」という質問に対して、「現在、団地に住んでいる」という回答が21%、「過去に団地に住んだことがある」という回答が30%。合計51%、半数以上が団地に住んだ経験があることがわかりました。また「住んだことはないが、訪問したり公園などで遊んだことがある」という回答が41%あるなど、なんらかの形で団地に関わりがあることもわかりました。

この事前調査の際に、このプロジェクトについて「ぜひ実現してほしい」という嬉しいお声をいただくことも多く、非常に勇気づけられるアンケートとなりました。

また、リノベーションに対する期待値を知るためのアンケートでは、「リノベーション後の古い団地に住んでみたい」という回答が61%。目立った回答としては「間取りを自由にできると良い(自分で改装できると良い)」という回答が86%もありました。
川内
これまで、団地は基本的には借りて住むもの、勝手に改装できないものと思われていました。ただ、今の若い方たちは自分なりに内装を変えたいという気持ちが強いことがわかり、これらのニーズに積極的に応えていこうという思いで、このプロジェクトの計画が進んでいきました。