


MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
団地リノベーション完成 ここだけの話 2018
※このレポートは、2018年1月14日に多摩ニュータウン ベルコリーヌ南大沢集会所で行われたトークイベントの模様を採録しています。
パネリスト:
神村 幸人氏
UR都市機構 技術職(建築)。
新築住宅の計画から住戸改修などのプロジェクトに従事。現在はUR都市機構多摩エリアの住戸改修などの企画・設計を担当し、UR賃貸住宅の魅力アップに取り組んでいる。
パネリスト:
:松本 雄作氏
株式会社MUJI HOUSE。「MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト」の設計担当。
団地好きが高じて、入社するきっかけに。全国のMUJI×URの設計業務全般を担当している。
モデレーター:
川内 浩司氏
「無印良品の家」住空間事業部開発部長。株式会社MUJI HOUSE取締役。
無印良品が考える賢く豊かな暮らしをかたちにすべく、新築注文住宅から、マンション、リノベーションまであらゆる「住まいのかたち」づくりに関わる。
- 神村
- UR都市機構の神村です。よろしくお願いします。私からはMUJI×UR 団地リノベーションプロジェクトについて説明させていただきます。
暮らしのスタンダードをそれぞれ考えてきた無印良品とURが2012年に出会いました。無印良品は「生活美学の専門店」として、生活の基本となる本当に必要なものを小物から家までつくってきました。一方URは「団地を通した日本のライフスタイルの提案や団地建設による技術開発、調査研究」を行ってきました。
この両者が団地のもっているさまざまな可能性を生かして、これまでにない新たな暮らしのスタンダードを賃貸住宅で実現しようというところから、今回のプロジェクトが始まりました。
そして、URとはどういった会社なのか? そもそも団地とはどういうものなのかという話をさせて頂きます。URの前身は「日本住宅公団」という組織から始まっています。昭和30年代から団地を建てはじめて、これまでに分譲住宅も合わせて全国で約150万戸供給しています。昨年度、設立60周年を迎えました。 いわゆる団地というイメージの中層5階建て階段室タイプから、高層エレベーター付き30階を超えている超高層まで、いろいろな種類の団地建設に取り組んでいます。全国で約74万戸の賃貸住宅を管理、多摩地区では4万4千戸を管理しており、世界最大、日本最大の大家さんといわれています。
公団はDKという間取りを開発し、ダイニングテーブルのある生活スタイルを提案しました。
昭和40年代、昭和50年代になると住宅の量が足りてきたことから、量から質への転換期に入ってきます。公園や、コミュニティスペース、緑地など地域の生活環境や自然環境に寄与する団地供給が増えてきました。
こうして団地をあらためて見てみると、緑豊かな住環境、風通しの良い間取り、心地よいコミュニティがあり、団地には豊かな暮らしの可能性が見えてきました。
- 神村
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MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクトでは、団地にあまり馴染みの少ないであろう、若い人をターゲットとしています。若い人に団地の魅力を知っていただくことで、入居いただき団地の活性化を図りたいと考えています。
大切にしたのは3つの考え方です
・環境やコミュニティといった団地での暮らしの良さを新たなリノベーションを通じて伝えたい。
・古いものを大切にしながら新しい価値を与えるリノベーションを提案したい。
・「賃貸=借りて住む」ことの楽しく魅力的な選択肢をもっと増やしていきたい。
そんな思いを共有した上でプロジェクトを開始しました。
初年度では、大阪の3団地で実施し、その後2013年度~2016年にかけて首都圏、中部、九州と年々全国に実施エリアを拡大してきました。そして今年度で全国41団地45プランになっています。
今回ご紹介する、多摩ニュータウン ベルコリーヌ南大沢は比較的新しい大型住戸であることから、住み替えなどを想定した新しい取り組みです。若い人への訴求から始まったこのプロジェクトですが、ファミリータイプのMUJI×UR住戸を探している方へも新たに訴求していきます。 - 松本
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MUJI HOUSEの松本です。今回、この多摩ニュータウン ベルコリーヌ南大沢、多摩ニュータウン永山、町田山崎団地の設計を担当させていただきました。具体的に多摩ニュータウン ベルコリーヌ南大沢の取り組みについて説明する前に、これまでの考え方を確認していきます。
まず、MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクトを始めるにあたり、いくつかの解決すべき課題がありました。
何よりも空き家が多いということ。今までの一般的なリフォーム「ただ古いものを新しくする」だけではなく、今までとは違ったターゲット層への訴求できるコンセプトが必要ではと考えました。つまりいかに魅力的な空間をつくり出すかということです。
ターゲットは、やはり子育て世代の30代の人を中心に考えました。実は30代を中心とした世代は、無印良品のメインターゲット層でもあります。ここに無印良品とURが手を組んだ一つの理由があります。
もう一つの課題が「コスト」。一般的にフルスケルトンの改修工事をすると800万〜1,000万のコストがかかりますが、それでは賃貸事業としては採算が合わず、一回きりの単発プロジェクトで終わってしまう場合もあるため、どうすればコストを抑えることができるかを常々考慮しています。MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクトは上記の課題を踏まえつつ、賃貸に愛着を持って長く丁寧に住みつないでいく、全国に広げられるプロジェクトとすることを考えました。
また、築30年になる団地の古さは一般的には魅力ではなく課題になりやすいのですが、我々は古さを魅力としてとらえました。若い人にとっては、団地の古さがビンテージとして捉えられるようなつくり方を目指してきました。つまり若い人にとっては古さが逆に新鮮に感じられるようなものです。団地の大きな魅力の一つである陽当たりと風通しを生かした設計を考えて、間仕切りを少なくし、家のどこにいても日が当たり、風が通るような設計を常に考慮しています。


- 松本
- URは管理戸数が74万戸あるので、全国に同じ間取りがたくさんあります。1つの間取りを実験的に設計・施工をし、そこで検証を行いながら精度をあげていき、また、できたものをコピーできるので、全国で同じ間取りを量産することが可能になります。我々が目指しているのは、豪華な一点ものではなく、あくまでも「暮らしのスタンダード」ですので、無印良品が積み重ねてきた知恵や工夫がたくさん展開されていくことが大変大きな魅力となっています。