MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト リレートーク vol.2
千葉海浜ニュータウン5万戸の団地再生への取り組み
※このレポートは、2014年5月27日に日本デザインセンターPOLYLOGUEで行われた、パネルディスカッション式のトークイベントを採録しています
スピーカー
鈴木 雅之氏
千葉大学 キャンパス整備企画室准教授・コミュニティ再生ケアセンター副センター長/NPO法人ちば地域再生リサーチ事務局長。専門は、建築計画、団地再生、コミュニティ・ビジネスなど。
主な著書に、『建築のサプリメント』(編著・彰国社/2014年)、『市民コミュニティ・ビジネスの現場-建て替えない団地再生のマネジメント』(共著・彰国社/2012年)など。
スピーカー
栗原 徹氏
UR都市機構。東京都心部から地方都市まで、多くのまちづくりや住まいづくりに幅広く関わり、平成26年3月までストック事業推進部長としてMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトを担当。
モデレーター
土谷 貞雄氏
株式会社貞雄代表。コラムの執筆やアンケートなどを行い、コミュニケーションを通したものづくりや共感の仕組みづくりを実践。現在はフリーランサーとして企業のウェブコミュニティサポートを中心に業務を行う。また「HOUSE VISION」の活動でアジア各地の研究会など、暮らしに関する研究会を多く企画している。編書に「無印良品とみんなで考える住まいのかたち。」(エクスナレッジ/2013年)など。
- 土谷
- みなさん、こんばんは。今日はお越しいただきありがとうございます。土谷と申します。無印良品の家のお手伝いとくらしの良品研究所というサイトに関わり、コラムやコミュニケーション、アンケート等のお手伝いをしております。今日は、司会を務めさせていただきます。よろしくお願いします。
今日の流れですが、初めに少しだけMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトの取り組みをMUJI HOUSE設計担当の豊田さんから説明していただき、その後ゲストである鈴木先生のお話を30分いただきます。鈴木先生は千葉・稲毛で5万戸、11万人での団地再生・街の活性化に取り組まれています。日本でも群を見ない規模です。今日はその取り組み事例をお話いただけるということで、すごく楽しみにしております。そして講演の後、ディスカッションしていきます。今日は、UR都市機構から栗原部長がいらっしゃっております。まずは豊田さんお願いいたします。 - 豊田
- MUJI HOUSEの豊田と申します。よろしくお願いいたします。では、早速ですが、MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトの概要についてご案内いたします。
2012年からこのプロジェクトは始まりまして、UR都市機構(以下「UR」)とMUJI HOUSEで団地について考え、団地をリノベーションして、新しい暮らし方の提案を行ってきました。URでは、戦後の日本の中で50年以上にわたり、日本の暮らしのスタンダードを考えてこられて、実践をされてきました。最近では当たり前になってきていますが、URはダイニングキッチンを最初につくられた組織でもあります。
一方、無印良品は1980年に始まったのですが、創業から30年以上経ちまして、ご存知のように家具や小物、最近は「家」もつくっています。現在は、住宅の部門はMUJI HOUSEという社名に変わりました。当初よりWEBサイト上で、これからの暮らしについて考えて、それを商品化につなげたりしながら、これからどんな風に暮らし方が変わっていくのかをユーザーの方々と一緒に考えて、商品開発をしてきました。
URとMUJI HOUSE、両者がこれからの暮らしをどうなるのかということを一緒に考えていくことで新しい暮らし方、新しい住まいというものを一緒につくれたらいいな、ということでこのプロジェクトが始まりました。
活動は、2つの軸があります。1つめが、住戸リノベーションです。専有部分、住戸の専有部分をリフォーム、リノベーションすることで新しい住まいのご提案をしています。簡単に申し上げますと、団地の良さである風通しとか、日当たりとか、そういったものを出来る限り活かし、古くて味わいのあるような40年前、50年前の木を積極的に残して、古いものと新しい物を融合させていく、そういった設計を行いました。キッチンは、老朽化などもありますので、新しい物を入れています。部分的には新しい物を入れていますが、基本的には古いものを活かしながら、新しい物を入れていくというような取り組みです。これを昨年度に大阪から始めたのですが、2年目は東京にも進出しまして、約70戸のリノベーションを行いました。非常に好評でして、約7倍の倍率を頂きました。特に若い方、30代の方に非常に支持を受けたプロジェクトです。
もう1つの軸は、ユーザーの方々とウェブ上で色々なことを話し合って、こういうことがあったらいいなとか、こういう風になって欲しいなということを発信しています。コラム「団地再生物語」は、少し先の団地がこうあったらいいんじゃないかということをコラムにして発信しています。また、大阪で実際にMUJI×URでリノベーションしたシェア住戸の中にモニターとして住んでもらって、その住み心地や暮らし方、さらにシェアの暮らし方についてもブログでUPして情報発信しています。また、団地レポート、千里青山台団地物語というのもありますが、コミュニティの情報発信も進めています。多くの方が一緒に同じ団地に住むということの良さを活かしていけるような、そういった情報発信をしています。
バスで行く東京団地ハイキングツアーなども行ないました。団地の今までの歴史を実際にバスで巡って、それぞれの団地がどういった経緯で作られたのかを知り、今までの面白い団地等を参加者の皆さんと回って、それをウェブ上で発信しています。
コラムについては、例えば、団地の中の店舗をオフィスにしたらどうか、そういった近未来のことを発想して、色々な方からご意見を頂いて、次回の商品開発や団地リノベーションプロジェクトに活かしていくという形で考えています。 こういった様々な取り組みの中で、我々だけではなく有識者の方々や他の建築家と一緒に、この団地というものをこれからの暮らしのモデルとして考えていきたいなということをやっております。今回のトークイベントのように既に活躍されている先生方の話を聞きながら、このプロジェクトを多くの人に知っていただければと思います。