MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
団地リノベーション完成 ここだけの話 2016

※このレポートは、2016年1月11日に光が丘パークタウン集会所で行われたトークイベントの模様を採録しています。


UR×MUJI共同開発商品について
豊田
組合わせキッチン
下に収納がないキッチンで、シンク・コンロ部分と、テーブル・スツールに分かれています。もし収納が必要なら無印良品の店舗に行って買っていただく、というかたちになっています。テーブルもキッチンと同じ高さで設計しています。一般的なテーブルはもう少し低いのですが、あえて高さを合わせて、様々な組み合わせ方ができるように設計しました。お客様にあった組み合わせを考えられます。
豊田
シンプルに見えますが、ディテールにはこだわっています。シンクもステンレス。ステンレスとメラミンの境目を非常に滑らかにしています。普通は隠したりするのですが、そうすると段差ができて汚れが見えてしまうので、職人さんがわざわざ削っています。そうすることで汚れがつきにくい構造になっています。

キッチンの角も薄く見せる工夫をしています。L字に分けるのではなく、斜めに切ることでデザイン的にすっきりさせています。様々な検証を経てこれらを可能にしています。
豊田
キッチンの横にある、壁付けの換気扇もできれば残したかったのですが、キッチンを移動すると換気扇が届かないという課題と、小さいので吸い込まないのではないかという課題があがってきました。
しかし残したいのでどうできるかの実験を重ねていきました。ホームセンターでワイヤーを買ってきて引っ張る場所を変えたり、どうにか引っ張ることができました。
もう一つ、吸い込みについては、実際に鶏肉を焼いてみてどれだけ吸い込むかテストをしました。が、大失敗でした。全く吸い込まなかったので、結局この換気扇を残すことは断念しました。そういった失敗を重ねながらつくっていきました。
豊田
持ち出しキッチン
壁から直接、持ち出しているので「持ち出しキッチン」という名称になっています。足をなくして壁に金物ものをつけている。壁がある限り大きくすることができるわけです。一般的には1.8mですが、2.5mほどの大きなキッチンをつくることも可能になりました。
豊田
しかし大きなキッチンは開発したのはいいですが、運んでみたところ階段を回らず、搬入できない。結果、簡易的な滑車を使ってバルコニーから搬入して事なきを得ました。高層タイプの団地だと無理ですね。もしそうなったら、キッチンを2つに分ける等の工夫が必要になります。
豊田
麻畳
麻畳は、無印良品の大型店では販売をしています。畳は遮音性が良いんです。床をフローリングにすると音が響いてしまいます。畳の良さを生かし、かつ若い人が住んでも違和感のないよう、素材として麻を使ってヘリをなくした畳を開発。これは大成功したものの一つです。
検討案として、様々なものを畳に巻いてみました。デニム、合皮等。しかし畳をデニムにするのは厳しいかなと。建築として使うのは辛いかなと。また、座っただけで色落ちしそうだったので却下になりました。 合成皮革も汚れがつきにくく経年変化しないので良いかと思いましたが、最後まで残ったのが麻でした。
豊田
ダンボールふすま
ダンボール自体はURでもよく使われていました。表面にフィルムを貼って、紙を貼って、隠して使うことでダンボールらしくなく、ふすまとして使っていましたが、「せっかくなら全部出してみませんか」という提案をし、新たに開発されることになりました。
ダンボールは湿気に弱く、少しそってきたりします。その際はひっくり返したりしながら使っていただいていました。しかしなんとかできないかと検証を重ねていきました。
豊田
強度試験も実施。湿気の試験も実施しました。最初は不合格続きでしたが、いろいろな工夫を重ねて、昨年末に許可が下りて商品化に向けた第一歩を踏み出しました。
縁も薄いものをつけて、表面は紙だけだと弱いので、特殊なコーティングをしています。その技術を3年くらいかけて探し当てて採用しています。もしかしたら無印良品のお店で販売されるかもしれません。引き続き検証を続けています。
豊田
半透明ふすま
アルミの縁に、素材が半透明のふすまです。玄関や廊下が暗くなるので、これをつけることで部屋の光を通して玄関や廊下を明るくするというものです。
豊田
実際に職員の方に使っていただき、検証いただきました。人に立ってもらいどのくらい影ができるか検証していきました。
豊田
コンクリート素地・木素地
MUJI×URの一部のご担当者からは、「なぜ残すのか」という指摘を受けていたものです。これが「味」だということを納得してもらいました。何度か見に来ていただき、3回、4回と見ると「これはいい」という話になってきました。 また、入居者の方からも「塗装が終わっていないのではないか」という問い合わせが入ったけれど、実際に住んでみたら快適だったので、「このままでいい」ということになった、という話もありました。


空間づくりに参加すること
豊田
家具がない状態では、一般のマンションではあまり魅力的には映らないものですが、住まい手には、空間づくりに一緒に参加してもらっているという感覚でプロジェクトを進めています。
豊田
何もない空間にどう住めるかは住む人の暮らし方がかなり影響します。MUJI×URが非常に多くの方に受け入れられているのを見て、間違っていなかったなと確信しています。 写真のモデルルームのような、家具のコーディネートは無印良品の店舗にインテリア・アドバイザーがいるので、ぜひ相談してください。
豊田
MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトを引き続きご注目ください。今日はありがとうございました。