MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
トークイベント「港南台かもめ団地集会所を核とした港南台地域コミュニティのこれから」

※このレポートは、2023年2月4日に無印良品港南台バーズ店で行われたトークイベントの模様を採録しています。

豊田
MUJIHOUSEは無印良品の住宅部門の専門家集団です。私たちが販売している「無印良品の家」は木造の戸建て住宅、「MUJI INFILL 0」はマンションのリノベーションになります。今回の「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」は2012年、大阪からスタートして約10年、URさんとMUJIHOUSEで取り組んできました。私も立ち上げメンバーとして10年関わらせていただいています。スタート当時から団地に限らず、日本の高齢化の社会問題もあり、団地に若い人を入れて活性化させていこうという共通認識があり、私たちもウェブアンケートなどを通じて数千人に団地に関するアンケートを取りました。そこでMUJIファンの方から団地活性化希望の意見をたくさんいただき、それらも参考にしながらURさんにと一緒にプロジェクトを開始しました。
豊田
現地をみる前は「フルリノベーションしないと若い人が入って来ないのではないか」というイメージを持っていましたが、実際に団地を訪れて空間を体験するとこのままでも魅力があることがわかりました。そこで考えたのは「こわしすぎず、つくりこみすぎない」ということ。今あるものをできるだけ活かして、最小限の工事で若い人にとって魅力的な空間を作ろうということで「生かす、変える、自由にできる」というコンセプトでリノベーションをさせていただきました。
豊田
こちらが実際の港南台かもめのモデルルームです。木の柱や鴨居は建築当時のまま残しており、飴色に変化してヴィンテージ感も出てきます。こうした新しく作ろうと思ってもなかなかできないものを活かして残しました。
豊田
ただ水回りなどの変えるべきところはリノベーションしています。キッチンは既製品だと、なかなか団地に合うものがないので、オリジナルのキッチンを開発しました。真っ白でシンプルなキッチンですが、下に引き出しや収納がなく、ご自身でカスタムができて必要に応じて収納を追加できます。賃貸住宅は住む人が間取りに合わせて暮らし方を変えていく不自由さが課題としてあります。昔と違って今は暮らし方が多様化しているので、住む人が自由に変えられることが大事になってきます。
豊田
こちらもURさんとMUJIHOUSEで開発した麻畳です。布団を敷く和風な暮らしはもちろん、ベッドや机、ソファなどを置く洋風な暮らしもご自身で選ぶことができるように表面の強い麻を使った畳を開発しました。
豊田
こちらは押し入れをリノベーションした画像です。ワークスペースとしても使えるし、洋服をかけてウォークインクローゼットとしても使えます。テレワークしたい人も収納をたくさん持ちたい人もご自身で選択できます。

「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」は10年間で東京付近から大阪、名古屋、福岡など全国で1000戸リノベーションし、団地数は60を超えました。そのなかで新しく生まれたのが「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」です。今までは住居の中をリノベーションして若い人に入居してもらうことが目的でしたが、若い人と今まで住んでいた高齢者の方、いろいろな世代の方とコミュニケーションを作っていくこと、また中だけでなく外の部分からも団地の魅力を生かしていこうとなりました。「こわしすぎず、つくりこみすぎない」というコンセプトは同じにして、できるだけ小さな工事で団地の魅力を引き出していくために屋外や共用部もリノベーションしていこうということで、第1弾が千葉市花見川団地、第2弾がこの港南台かもめ団地になっています。
豊田
第1弾の花見川団地も大規模団地です。近くに花見川という川が流れ、サイクリングロードになっているという地域資源も活かしていくことになりました。団地内の商店街では空き店舗もあるので、それをリノベーションによってテナントを埋めて活性化の核にすることが一番の目的です。「公園のような商店街」というコンセプトで、団地外の方や団地にお住まいの方が気軽に集える商店街を目指し、今まさにプロジェクトをスタートさせたばかりでございます。また団地にお住まいの方々だけでなく、商店会の方々や地域住民、地域企業、地域の大学の方々も含めて花見川団地の未来を考えるワークショップや定期的なポップアップショップを開き、アイディアを検討したり、お困りごとを聞きながら進めていっています。
豊田
港南台かもめ団地もとても魅力的な団地です。自然環境がとても豊かな環境で、日当たりや風通しもいい。公園の中に住んでいるような環境です。そのなかで集会所を核としてリノベーションしようとプロジェクトがスタートしています。課題としてはどの団地も同じですが、高齢者が多いということや、単身高齢者の入居が多く外出の機会が少ない方もいらっしゃいます。ですのでコミュニティの活性化を目的とし、お住まいの方々と意見交換しながら高齢者から若者まで気軽に集まれる開かれた場所を作り上げて行きたいと考えました。具体的には「かもめプロジェクト」を発足し、団地集会所のこれからを話し合う「かもめ会議」、無印良品の出張販売やワークショップなど集会所や団地の屋外空間を活用したイベント「かもめマルシェ」を行っています。
豊田
そうした取り組みで出たアイデアを設計に活かしていきました。またマルシェの参加者の方にアンケートを取っていろいろな意見を集めて設計に活かしております。そこで生まれたポイントは3つです。まずは共用部を開放してテラス、ベンチ、カウンターなど人が滞留できる空間作りをすること。また人が集まる仕組み作りとしてシェアキッチン、図書、ギャラリーなどを設けること。最後に持続可能なスキームを構築するためキーマンの発掘やサークルを立ち上げること。
豊田
それらを設計計画に落とし込んだのがこちらです。開かれた集会所にするべく、今までは靴を脱いで入らなければいけなかったのですが、土足で入って出られるようにしました。エントランスでは本棚を設けて誰でも本を置けるスペースにしたりラウンジを室内外に設けたりしてみんなが集いやすいようにしています。また生い茂っている高木の下を日陰にして椅子やテーブルを設置し、室内ではシェアキッチンを作って料理教室などのイベントを開けるようにリノベーションしたいと思っています。和室の部分は麻畳にしてさまざまな用途を促進し、みんなのギャラリーではお住いの方の作品を見られるようにしました。みなさんが気軽に利用できるスペースにしたいと思っています。


豊田
最後にプランの簡単なご案内です。今回かもめ団地でリノベーションさせていただいた3タイプのうち、1タイプだけご紹介させていただきます。「ウォークインクローゼットにもワークスペースにもなる押入空間」と題しまして、もともと押し入れだった部分を広げてユーティリティスペースにしています。こうすることで収納としてもテレワークスペースとしても使えるようになっています。キッチンも壁付けを対面式にして家族のコミュニケーションが自然と発生するような間取りになっています。
司会
ありがとうございました。最後にUR都市機構神奈川エリア経営部部長山下様より、お願いします。