MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
10/6 MUJI×URイベント 「未来を考える 団地Lab.」

※このレポートは、2024年10月6日(日)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

part3:スターハウスを妄想
松枝
豊田さんありがとうございます。
ここからは本日のイベントのテーマが「未来を考える団地Lab.(ラボ)」ということで、皆さんと一緒に香里団地やMUJI×URの取り組みをベースにしながら、団地の未来を考えていきたいと思います。ここから先に出てくるアイディアはあくまでプロジェクトメンバーが妄想したものとなります。
皆さんと一緒に考えるきっかけになるといいなと思っています。それでは、豊田さんからご案内をお願いします。
豊田
はい。スターハウスの活用を考えてきました。
先程も触れましたが、スターハウス自体は、建設当初は団地の花形と言われていました。
豆腐型の同じ建物がたくさん並んでいる団地が一般的でしたが、URさんの中で景観にアクセントをつけないと面白くないという意見があったようです。

また、豆腐型の建物は地面がなだらかでないと建てづらいのですが、スターハウスは傾斜があるところにも建てられています。傾斜のあるところに建物をつくるのは結構難しいことなのですが、景色もよく建物が目立つところにアクセントとしてスターハウスが開発されたと伺っています。

豆腐型の建物はシンプルでつくりやすかったので増えて行った一方、スターハウスはとても良かったものの、非常にコストがかかったのと建設にあたって技術が必要な複雑な建物だったため、いつしか作られなくなりました。
そして建てられたスターハウスは徐々に古くなって取り壊されていってしまい、西日本で住むことができるのは香里団地だけとなりました。

私ももちろん団地好きでして、10年以上前からたくさんの団地を訪問させて頂きましたが、やはりスターハウスはかっこいいです。
ぜひこういった建物は残していきたいですし、なにかしらの形で残せることができるのではないかと思っていますので、案を3つ用意しました。
アイディアですので、あんまり細かいことは突っ込まないでくださいね笑
豊田
1つ目は、ホテルとして活用する案です。
先ほど素本さんからもありましたが、東京の赤羽にあるスターハウスは登録有形文化財として認定されています。

そういった貴重な建物に宿泊体験をしていただくのは面白いのではないかと考えました。
実は無印良品はホテルの運営も行っています。みなさん、MUJI HOTELをご存知ですか?何人か手をあげていただき、ありがとうございます。
日本では銀座にあり、海外にも展開しています。資料の右上の写真がMUJI HOTEL銀座の写真となります。

MUJI HOTELのようなものをスターハウスに展開ができたらどうかなと思っています。
こちらの資料は上から見た図となっていますが、1階部分はラウンジやレストラン、リネン棟になっていて、2階以上の住戸はホテルとして運用することができないかという案です。
誰にも了承を得ていない案となりますので、実現できる可能性があるのか?とは思いますがこちらが1案目です。
前田
屋外も使っていただいていますよね。
豊田
そうですね。ホテルの受付をどうするかというのはあると思うのですが、資料中の茶色い道はウッドデッキを繋げて、1階部分をつなげてみてはどうかと考えました。そうすることで、それぞれの客室へ移動することができたらよいと思いました。
前田
いいですね。団地の屋外はとても広いのが特徴なので、屋外を使った施設は素敵だなと思います。
素本
元々整備されてない道を通ることで、経験したことのないシークエンスを味わえる点がとても良いなと思いました。
豊田
例えば、インバウンドで海外の方がたくさん日本に来られていますが、こういったところに泊まっていただくのも良いなと思っています。日本の暮らしの原風景を体験してもらうのは、企画としてはあるのかなという気はします。海外にも無印良品の店舗を展開していますが、無印良品が生まれた日本に対して興味を持ってくださっている海外の方が非常に多くいらっしゃいます。

無印良品は団地だけではなく、地方再生のようなこともいろいろなところで行っているため、例えば田植え体験などのように、実際に見て・体験していただく企画を行うことが出来たら面白いのではないかと思います。
前田
個人的には楽しそうでとても良いと思いました。スターハウスが建てられている場所は高台が多いので、最上階なんかは眺めが良くスイートルームにできるんじゃないかと思いました。
松枝
ホテル案について、泊まってみたい・興味があるも思われた方はいらっしゃいますか?
ありがとうございます。結構いらっしゃいますね。
素本
登録有形文化財に宿泊できることは、なかなかない経験ですよね。
前田
3面窓だと、お隣さんから覗かれてしまうのではないかと質問をいただいたのですが、Y字が絶妙な角度となっているため覗かれることはないです。プライベートは守られますのでご安心ください。
開放感も感じることができる、そんなホテルなかなかないので面白いです。
豊田
URさんはホテルのような宿泊施設は展開されているんですか?
前田
展開はしていないので、やってみたいですね。
団地に泊まることができたら本当に面白いですよね。案を出していただいたような、おしゃれな感じにすれば、いろいろな方に興味を持ってもらうことができるかもしれないですし、現状エレベーターがないので、予約いただく前から足腰をちょっと鍛えてきていただかないといけないかもしれませんが笑
豊田
それでは2つ目の案を紹介します。
1つ目は「泊まる」でしたが、こちらは「住む」をテーマにしました。今のような住み方ではなく、新しい住み方を提案したいと思います。
豊田
MUJI×URでリノベーションを施した、スターハウスの断熱改修をしたお話を先程させていただきましたが、もうちょっと進化をさせて、高性能な賃貸住宅として活用できないかという案になっています。
今、新築の住宅は国の規定がだいぶ変わり断熱を高くしないといけなくなっています。

国の方針で、2050年のカーボンニュートラルが進められていますが、どうやったら省エネできるか?特に暮らしの中では、暖房・冷房といったところは非常に大きな部分を占めますので、そういったところをどう少なくしていくかという中で、家の断熱性を高めていこうとなっています。

そのような中、新築の家はすでに規定が変わり、断熱等級という指数があるのですが、来年から新築の家を建てる上では、等級4以上の断熱性能を持たせないといけなくなっています。等級5というものもあり、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(net Zero Energy House)、略して「ZEH(ゼッチ)」と呼ばれる家も推奨されています。

私が所属するMUJI HOUSEが展開をする無印良品の家もですが、非常に断熱性が高い家づくりをハウスメーカー各社が進めていて、等級6や7というところも出てきています。

国の方針として、断熱性を高めた家が今後増えて行くことはいうのは大体決まっているのですが、リノベーションはそういった法律が現在ではありません。法的には問題はないのですが、断熱性が高い住宅はとても快適ですし、お風呂や脱衣所のような寒暖差ができてしまう場所で倒れてしまうヒートショックを予防することが可能です。

実は、交通事故で亡くなる方よりもお風呂で倒れて亡くなる方の方が多いんです。寒暖差が住まいの中にあることは危険な状態だと考えても良いかもしれません。
未来を見据えた上で、性能の高い住宅は今後必要になってくるのは確実ですので、団地のリノベーションでも取り入れていけないかなと思いました。
豊田
せっかくなので、スターハウスで施工してはどうかと考えました。MUJI×URの紹介した際にもお伝えしましたが、スターハウスも外に面している部分が多いので、寒暖差が大きいと考え、高性能な断熱材を使用したり、窓を変えることで省エネとなり住み心地も快適にするという案です。

さらに、資料ではスターハウスの上を繋げているのですが、太陽光パネルを載せてみました。実現するには技術的にとても難しいのはわかっている上でのご提案です。

一戸建ての住宅だと太陽光パネルを屋根に乗せれば賄えたりすることもあるのですが、団地のような集合住宅は使用するエネルギーが多いのと、屋根の面積が限られているので、それだけでは足りないのが現状です。

太陽光パネルを置く場所を考えないといけないのですが、広い敷地があれば良いだけでなく日当たりもよくないといけないので、やはり屋根の上に置くほうが効率はよくなります。そういったところで、屋根を延長して繋げることで、室内のエネルギーを賄えるような少し未来の団地となっています。色々突っ込みどころがあるかと思いますので、ご意見よろしくお願いします笑
前田
こちらの案も楽しい気持ちになりました。前半断熱材の必要性についての真面目なお話でしたが、後半は建築に精通されている方からすれば、浮世離れしているような案かとは思うのですが、太陽光パネルの使い方がまさかでしたね笑
太陽光パネルがちょうどウッドデッキの上に来るので、屋根のような使い方ができますよね。

MUJI HOUSEさんではインフラゼロという取り組みも行われていますよね?
豊田
ありがとうございます。太陽光でインフラゼロというものはもちろんあるのですが、MUJI HOUSEでは、トレーラーハウスの屋根、壁に太陽光パネルをつけ、トイレは水が不要なバイオトイレを設置しています。
豊田
また、水循環システムを採用しているので、お風呂やキッチンで使用した水をろ過することで再度使用することができるシステムを取り入れた住宅です。水と電気、トイレも含めてインフラが不要となっています。

家に住むとなると、電気や水だけでなく下水や浄水なども必ずつなげていないと生活ができないのですが、それをつなげなくても暮らすことができる家を今実験的に開発しています。テレビなどのメディアにもたくさん取り上げていただき、反響をいただいています。

例えば全くインフラのない、海や山奥といったところにトレーラーハウスを運べば、すぐにそこで暮らすことができてしまいます。

日本には豊かな自然がありますので、今まで住むことができなかったインフラの通っていない場所に住むことも可能になるので、地方再生の一環としても使用することができるのではないかと思っています。

団地の提案に話を戻しますが、太陽光パネルなどでできる限り、エネルギーを作り出しインフラをゼロに近づけられるようなそんな取り組みができないかと思っています。
素本
個人的にはインフラも集合住宅の皆さんとシェアしつつ、キッチンやコインランドリー等もシェアするような空間があると、人と人との繋がりが自然と生まれる空間を作ることができるのかなと思い、すごく魅力的だなと思いました。
割とスターハウスは小ぶりなお部屋が多いので、キッチンやランドリーがまとめられていると、住戸の中も豊かにでき、一石二鳥なので実現できるといいな~と勝手に思ってしまいました。
豊田
例えば、共用部のキッチンがプロ仕様みたいに大きくて、家にあるのは必要最低限の小さいものでいいかもしれませんね。
素本
いいですね。キッチンを広く使うことができるので、住民さん同士でホームパーティのようなことも日常的に開催されたらすごく楽しくなりそうですね。
豊田
団地にみなさんと住んでいるというメリットを生かせますね。

では、最後の3番目の案をご紹介します。
設計を仕事にしている人間としては、学生時代に考えたものを出しているような少し恥ずかしい気持ちになっていますが、商業施設として活用するのはどうかと思いました。
豊田
無印良品の店舗を入れたり、MUJI BookMUJI cafeなど限られたスペースで展開ができる店舗を入れてみてはどうかと思いました。また、無印良品で展開している店舗だけでなく、地域で活躍されている方でしたり、小商をされている方にテナントに入っていただいたらどうかと考えました。先程触れた花見川団地のように、団地に住んでいる方がこちらに店舗を出して、住みながら商売をしても良いのではないかと思いました。 昔は団地に住みながら商売をする暮らし方はよくありましたが、そのような暮らし方がここでもできるのではないかという提案になっています。 商売というとちょっと大袈裟に聞こえてしまいますが、小さなお店が家のすぐ近くにたくさんあるというのはとても大事だなと思うんです。特に食べることができるところが1番大事かなとは思います。 皆さん朝昼夜の3食を食べる方がほとんどだと思いますが、1人で家の中で食べるのではなくて、こういう店舗に出てきてもらい、そこでみんなで一緒に食べたり、顔見知りになることができたりと商業が果たす役割はとても大きいと思うんです。 近くにお店がないようなところはどんどん廃れていてしまう印象があり、こういったものが団地や住まいの中にあるという状態を作るというのは非常に意義があると感じています。 今回の案は、東京の表参道にあった同潤会アパートをイメージしています。同潤会アパートも元々は住まいとして団地のような形で住んでいたところです。場所が良かったこともあるのですが、住居スペースが店舗にどんどん変わり、商業施設になって行きました。 私も、表参道行った時には同潤会アパートで買い物をして眼鏡を買ったりしました。家の近くで、暮らしを楽しんでいただけるといいのではないかと思っています。 屋上ガーデンテラスですが、かなり無理やりすぎるかなと思ったのですが、香里団地周辺にはたくさんの自然があるので、ガーデンがあっても馴染むのではないかと思います。また、5階まで行った人が隣の住棟へ行くのにまた1階まで戻る必要があるため、上で繋がっている良いのではないと考えました。
素本
スターハウスは眺めもいいので、下のお店で購入したものを上で食べられたりするとすごく良いと思いました。
前田
皆さん想像してみてください。ガーデンテラスにお花が咲いてそこを歩けるんです。気持ちよさそうですよね。
素本
ニューヨークにあるハイラインみたいな感じになるのかなと勝手に想像して聞いていました。
前田
周りには自然がいっぱいなのですが、あえてここに人工的に植物を植えるという笑
これはこれで、人が集まってきてくれることが想像できます。

商業と住まいが隣接しているのはいいですよね。周りに住んでいる方が集まることができるような1階の使い方は、いろいろ考えられそうですね。
スターハウスが今4棟あるので、いろいろな用途で使えるようにできると選択肢が出来て、遊びにも来やすくて良いですよね。

提案いただいた3つの案の中で、振り切ったものを実現できたらいいですよね。
松枝
豊田さんから3案を発表いただきましたが、2案目の団地でインフラの環境を整え、共用部に集まりキッチンなどをシェアして暮らす案について共感できたり、住んでみたいと思った方はいらっしゃいますか?少しいらっしゃいますね。
松枝
3案目のスターハウスの住戸をお店にして、隣の棟とは繋がっている案はどうでしょうか?
なるほど、このくらい飛躍した案の方が興味を持ってくださる方が多いんですね。面白いですもんね。
前田
スターハウスが隣り合わせになっているような状態なので、その特徴をうまく活かしているような案でもあるなと思います。
松枝
なるほど。ありがとうございます。
スターハウスだけではなく団地まるごとリノベーションを実施した場合の案をお願いします。
前田
いいですね。楽しみです。