MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
団地リノベーション完成 ここだけの話 2017
※このレポートは、2017年1月7日に多摩ニュータウン永山団地集会所で行われたトークイベントの模様を採録しています。
- 豊田
- 対象団地について
MUJI×URは平成24年度から開始しています。
平成24年度は、大阪の3団地で実施し、その後平成25年度~平成27年度にかけて首都圏、中部、九州と年々全国に実施エリアを拡大してきました。
今年度で全国32団地35プランというプロジェクトになっています。住戸の数は今年度で500を超えてきます。当初は大阪からスタートして22プランからスタートしましたが、おかげさまで倍率も高く好評いただき、5年たっても続いているという状況です。
リノベーションで大切にした考え方
- 豊田
- 「古さ」
築30年40年といった時間の経った団地をリノベーションするときに、古いということをどう捉えるかが課題になりました。古さは一般的には魅力ではなく課題になるのですが、我々は古さを魅力としてとらえました。また、ターゲットである若い人にとっては、団地の古さがビンテージとして捉えられるような作り方ができるのではと考え、できるだけつくり込みすぎない、手を加え過ぎないことを考えて設計しました。 - 「日当たり、風通し」
間仕切りを少なくして、家のどこにいても日が当たり、風が通るような設計を考えました。 - 「75万戸」
団地は全部で75万戸ある。一般的なマンションは同じ間取りはほとんどありませんが、団地では同じ間取りがたくさんあるので1つテスト的に設計/施工することができました。そこで検証し精度をあげていきました。また、できたものをコピーできるので施工者のスピードや精度をあげていくことができ効率的になりました。 そうすることで、全国で同じ間取りを量産することが可能になり、MUJI×UR住戸があたりまえにあるよう「暮らしのスタンダード」を目指していきたいと思います。 -
3つのテーマ「生かす」「変える」「自由にできる」
リノベーションで大切にした考え方です。5年前から変わりません。
引き続き、「生かす」「変える」「自由にできる」ということを大切にしました。 -
「生かす」ところ
古くなった住戸をすべてなくして、新たに作り直すのではなく、今そこにある古いものを新しい価値観で見直し、古くても魅力的な部分は生かしました。
生かした代表的な部分です。こちらはリノベーション前の状態です。木の柱や鴨居に注目してください。
古い柱や鴨居といった時間の経ってあめ色に変化した木部は団地の象徴の1つと考え、残すことで空間のアクセントとしました。
- 豊田
- リノベーション前の押入れです。
以前は押入だった部分は、襖をはずして、部屋と繋げました。部屋の一部としても使えますし、収納としても使えます。また、押し入れの形はそのまま残して白く塗装することで、古い団地の記憶を残しました。
- 豊田
- リノベーション前の扉です。こちらも全体の雰囲気に合わせて塗装をして残しました。
古くてもシンプルで使いやすい機能と形のある取手を残しました。このような部分は、昔から変わらない普遍的な良さがあります。
- 豊田
- 「変える」
水まわりなど、変えた方がより魅力的になる部分は、新たに付け加えました。
続いて変えた部分です。変えたほうが魅力的になる部分は積極的に変えました。
キッチンです。団地に合うように、食洗機やディスポーザーなどはつけず、必要最低限の機能をコンパクトにまとめたオリジナルのキッチンです。
- 豊田
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和室の畳です。古い団地は和室が非常に多かった、それをフローリングにするということもあるのですが、非常にコストがかかりますし、音が響く問題が出てきてしまいます。畳は遮音性については最高レベルと言っていいものなのです。一般的な縁のある畳は古めかしく感じることがあります。また、テーブルやソファーやベッドは置きにくいです。
今回のプロジェクトで開発した床材の麻畳です。強い素材ですのでベッドやテーブルをおいてもヘタレにくい。また縁をなくすことですっきりとしたデザインとなりました。
- 豊田
- 配線類。電気の配線が整理されていない状態になっています。 電気配線を整理し、雰囲気に合うカバーをつけました。
- 豊田
- 「自由にできる」
また、一般的な賃貸住宅は間取りが固定されていて、自分の暮らしを間取りにあわせなければならないことがデメリットに見えていたのですが、ですが、そういった暮らしを解放することを考え、住み手が自由にできる部分を作りました。
麻畳は表面が強いので、床に座る生活だけでなく、テーブルやソファを置くこともでき、和風はもちろんのこと、洋風の暮らしでも選ぶことができます。
- 豊田
- 無印良品のシェルフを組み合わせて間仕切としても使えるようにしました。暮らしによって間仕切り方を変えることができます。
- 豊田
- ダンボールふすまは軽いので移動が簡単です。空間の使い方は、ふすまの仕切かたによって変えることができます。