MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
団地リノベーション完成 ここだけの話 2017

※このレポートは、2017年1月7日に多摩ニュータウン永山団地集会所で行われたトークイベントの模様を採録しています。

神村
ここからは、仕様・施工についてお話します。

住戸の解体について
試験施工を実施する住戸をベースに、既存内装仕上げの状況を調査確認して、プランにおける詳細部の収まり等について実際の施工をイメージした設計を行います。
建設当時の内装仕上げの詳細図面は無いものですから、実際に、解体を行うと、こんな収まりになっていたのかとか、ここに配管があるのかといったことが多々あります。その都度確認をして、設計方針や収まりを現場で検討するなど、臨機応変な対応が必要となります。
また、今回の改修は、壊しすぎず、作りすぎないといったことがコンセプトでありますが、URが実施するリニューアル改修では、現在の機能・性能・デザインに更新するといった改修を実施しています。そのため基本的に再利用するものは、床の下地材程度で、間仕切り壁、床仕上げ、天井仕上げ、建具などはすべて新しく更新しているのが通常となりますが、どこまで解体するかから現場では議論が始まります。
そういった現状から、今回のような工事の場合は、始めは、職人さんの意識も今まで通りなので、図面に解体範囲が記載してあっても、ここもついでに解体したよといった部分もありました。
神村
キッチンまわりの施工
今回の百草団地ではMUJI×URは多摩ニュータウン永山団地に続き実施していることから、施工者も同じであり、ある程度のノウハウが蓄積されてきていました。そのことから、詳細の納め方などについては事前に施工者とのイメージ合わせも比較的にスムーズに行えたものと考えております。
キッチン撤去の壁面は、設備との取り合いも含め、既存のどう活かすかを現場で施工者も含め意見交換を行いながら決定していきました。換気扇の設置も考えていましたが、開口部の位置、大きさなどから換気扇が収まらないため、レンジフードとしました。概ね完成が見えてきたところで、スイッチの位置など含め、最終確認を行いました。
コンクリート面も見えていますが,古くてもしっかりしており良好な住宅ストックであることも再確認できました。

1:キッチン撤去

2:撤去範囲確認

3:仕上状況確認

4:最終確認

神村
天井塗装の施工
現状はひる石天井仕上げといって、直径1mm以下の丸い粒状のものを天井に吹き付けて仕上げてあります。ひる石天井は、施工が難しく何度も重ね塗りを行い、やっとこの白が表れてきました。ローラー塗りで3回実施したことから、1週間塗装が必要となり、その間、他の職種の工事ができないことから、2DKタイプではソフトリシン吹付で実施、2日程で実施することができました。見た目もよく施工性も非常に良かったところです。
神村
壁塗装の施工
壁もラフに仕上がっています。解体後の壁は、ボードの上にクロスが貼ってあり、それを剥した状況となります。このまま塗装すると、下地となるボード面の凹凸が出てしまうため、そこをうまく隠すようにしながら、つくりすぎないように施工をしました。古いモノを活かすといった仕上げ感の共有が難しいところでした。

BEFORE

AFTER

神村
木部塗装の施工
既存の木部塗装もいろいろ検討しています。敷居、鴨居、長押や、木製仕上げの壁、建具が該当部分となります。若い木材なら、それほど影響はでないのですが、築40年近くになりますから、木部も日焼けや経年変化をしています。その結果、灰汁やヤニ(樹脂)が表面上にあり、白色塗装をすると浮き出てしまう傾向がありました。それが浮き出て来ないように、(きれいな白色になるまで)何度も重ね塗りを行っています。
また、部分的ですが塗装をしない既存木部もあることから、どこまで残してどこまで塗装するか、などについては、皆で現場へ行き、実際の状況をみながら、一番良いデザインテイストとなるように数回の調整をしました。

既存建具にも木部同様に塗装を行っております。ご覧の通り何度も塗装を繰り返していきます。この部分については、既存の建具や、壁をそのまま再利用した部分です。ホワイトにすることで、主張がシンプルとなったことから、既存の曇りガラスとの相性もよくなり、古いものを活かした新しいイメージをつくりだしています。
神村
設備配線の施工
電気設備の配線は、何度もやり直して苦労したところです。現場では既存を残すことを目指して、金属管を丁寧に加工して付鴨居を残すような作業をしましたが、最終的には付鴨居を部分撤去の上、金属管をまっすぐ通すこととしました。
神村
内部仕上げ
また建築だけでなく、電気の配線や、給水・給湯配管についても、見せ方の工夫をしています。隠せる部分は隠し、露出せざるを得ない部分は、見せることを前提にした仕上げとすることで、住戸内のデザインアクセントとなるように配慮しています。配管はわざと見せています。全部隠すとシンプルになりすぎてしまうので、アクセントとなるように調整しています。

BEFORE

AFTER

神村
トイレについては、もともと床はタイル仕上げだったものを、 ビニール床シートとしました。全体を白で統一し、ペーパーホルダーとタオルリングをアルミ色でアクセントとすることで、清潔感のある、シンプルながら絞まった空間となったと思います。

BEFORE

AFTER

神村
百草団地では間取を一部変更しています。3DKプランでは既存建具の場所と色を変え、広々としたDKとしています。間取変更に併せて玄関上部に垂れ壁を設置し、建具設置場所と既存の電気ボックスが干渉し、現場併せて点検口の設置をなど行いました。

BEFORE

AFTER

神村
2DKプランでは対面キッチンとしています。但し、部屋の独立性も確保したかったので、対面キッチンのコンロ前には壁を新設した上で、建具は木製とすることで、水の跳ね返りなどに配慮しています。

BEFORE

AFTER