MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
3/10 MUJI×UR トークセッション 「災害時における地域コミュニティの役割」

※このレポートは、2024年3月10日(日)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

part3:MUJI「いつものもしも」から見える防災
松枝
無印良品の「いつものもしも」、皆さんもご存知かなと思うのですが、活動ないし商品開発といったところから見える地域との繋がりについて、良品計画の本田さんからお話をしていただこうと思います。
本田
株式会社良品計画の本田です。よろしくお願いいたします。
無印良品では、お話の中にありました通り、「いつものもしも」という言葉で防災を分かりやすく皆さまにお伝えをする活動を行っています。

日常の中で災害というのはいつでも起こりうるものと捉え、その時に何かをする、もしくは来る時のために用意しましょうということでは、なかなか対応できないのではないかということで、「日常の生活に防災を組み込もう」ということをお知らせする活動を行っています。
本田
無印良品で防災セットを開発する業務をしています。
皆さまに少しでも防災・災害に遭わない、遭っても軽く、減災に繋がるようなことをお伝えしたいなという想いで活動を行っています。
そんな「くらしの備え、いつものもしも」ということで、皆さまにお伝えしているのですが、先ほど申し上げました通り、「その時何かしよう」や「明日備えをしよう」ということで、先延ばし先延ばしになってしまうというのは、私も含めて、人間誰しもそういった傾向があります。

この「いつものもしも」というのは3つのキーワードがあり、1つ目が防災の日常化、2つ目は「もしも」だけではなくて、「いつも」使える。3つ目に備えのレベルを1つ上げるというキーワードを設定して取り組みを行っております。
本田
防災の日常化については、地震、特に最近の夏場には、大雨・台風被害もありますし、火事もその災害の1つに捉えることができると思います。猛暑も自然災害の一部ということで、いつどんな被害が起きるのかが分からない状況になっています。

南海トラフは皆さまご存知かもしれませんが、住宅の全壊戸数では、被害が甚大であったと言われている東日本大震災の20倍の被害が出る予測がされています。
被害に遭われる方も32万人ということで、より広域で大きな地震が来るということが近未来には予測されている状況です。
そんな中、内閣府がいつも携帯するものやすぐに持ち出すもの、発生から3日間を生き抜くためのもの、さらにはその避難生活が長引いた時に必要になってくるものなどをこういった防災情報のページで紹介しています。
本田
どうでしょうか?皆さま用意をされていますか?

実際これだけ「被害が大きいぞ」「こんな用意をしないといけないぞ」「命を守る行動をとってください」と言われても、情報が多すぎて、実際何をすればいいのかが分からなくなってしまうのは特別なことではなく、私も含めた世の中のほとんどの方がそういう状態になっているということになります。
これは自然、本能的なものです。非常に判断をすることが多い、特に重大な決断に結びつく、命に関わる判断をするということに対し、自然と先延ばしをしてしまう・深く考えすぎてしまうと、日常が心配で過ごせなくなってしまうので、本能的に後回しにしてしまうという、人間本来備わっているバイアスがかかってやむを得ないという状況になります。

被害が来ることはわかっていますが、例えば「自分の家は地盤が丈夫だから」や「高台だから」とか、「自分はなんとかなるのではないか」のような、日常と非日常を分けてしまうというのが、一般的にふつうの方の考え方になると思います。

我々がお伝えしている「防災の日常化」は、「いつも」も「もしも」も境なく普段の生活で、今、何かが起きても、普段使っているもの、もしくは普段使っている知恵の延長で「もしも」に対応できることを身につけていただくことを目指しており、そういった「もしも」にも使えるような商品を皆さまにも日常的にお使いいただくことを活動の中で紹介しています。
本田
「備える」と書いてあるものは自宅避難用の防災セットです。防災セットも、いわゆる銀色やオレンジ色のバッグでなんでも詰め込まれているものではなく、本棚などに置いてあってもあまり違和感ないようなものにしています。赤い消火器はふだんの暮らしではインテリアに馴染まないので、ついつい奥に追いやってしまうということがあるかと思います。消火器を白くすることによって、日常の中に置いておくというような見た目の工夫をしています。

こちらの防災セットを日常の中に置いていただいたり、携帯していただくことで、災害が起きた時にすぐに使用できるように商品の設計をしています。

あとは、URさんの住宅も含め、比較的強固な住宅なので「うちの中はなんとか大丈夫だろう」のと思う場面があるかと思うのですが、それぞれの場面にマッチした防災セットを用意しています。 このように段階を分けたり、私たちが想像をして、「こういう災害に対する備えをした方がいいですよね」みたいな話だけですと、実際に対応できるかどうかというのは、災害が来た時じゃないと分からないという状態になってしまいます。活動の中では全国の被害に遭われた方に直接お話を伺い、本当に必要なものは何なのか?普段から心がけておくことやどんなことが必要になってくるか?というお話を直接お伺いする取り組みを、活動の中心にも据えて取り組んでいます。

先ほど福島県の話をお伝えしましたが、福島県相馬市は、東日本大震災も含め、4回の大型の地震が来ている地区です。ご存知の通り、放射能の被害が実際にあった地区でもあります。被害に遭われた方がお話しなされたことを動画へまとめておりますので、ぜひご覧いただきたいと思います。

~VTRにて実際に被害に遭われた方の声~

地震発生時どうなる?
『ガンガン、ガンガン、いろいろな音がして、停電をしてしまって。懐中電灯もどこかに行ってしまった。携帯をかざして明かりを得ながら見渡しても、何がどこにあるのかわからない。大変だと思い、いけないとわかっているのに、確かめようとしてしまう。真っ暗な中で。頭でわかっているけれどやってしまう』

家の中はどうなる?
『地震が起きて、こどもの上に覆いかぶさったんです。私の上に今度は旦那さんが覆いかぶさってくれました。旦那さんが寝ていたところに、本棚が倒れていたんです。そこで寝ていたら、この下敷きになって死んでいたねって。家具は固定していたんですが、やっぱり外れた。あらゆる本棚が倒れた。家具の固定は日本全国の人に本当にやってほしい。バーンとくるのと、ガタガタくるのは違う。』

ストックの大切さ
『これまでストックについては考えていなかった。何に対しても。トイレットペーパーっていつでも買えるし、お店に行けばすぐ買えるっていう気持ちがあったので。トイレットペーパーが買えないという情報が流れたら、夕方にはもうどこにも売っていないんですよ。だからいつでも買えるっていうのはなくなったかもしれない。1個手をつけたら1個買う。そういう習慣はつきました。』

伝えたいこと
『命があればいい。浸水被害も受けましたが、どう備えたって、浸水被害は防げないんですよ。だから大事なものは2階に置いて。やることやって、命さえ守ったらあとは諦める。』 『意識してください。シミュレーションしてください。自分がこういう時のためにあの話を聞いたんだなと。震災のときはまず自分の命を守って、それから落ち着いて行動する。これからもっとこうするなっていうことをシミュレーションしてみてください』
本田
いかがだったでしょうか。
私が色々皆様にお伝えするよりも、実際に経験された方のお話というのは胸に迫るものというか、すっと皆さまにも入っていくのではないかと思い、ご紹介させていただきました。動画の最後の方で、「自分で思い浮かべてください。シミュレーションしてみてください」というお話がありましたが、今、災害や地震が来たら?今、何かが起きたら?ということを考えるだけでも、それは皆さまの備えに繋がることです。初動と言いますか、周囲の人が何かをするまで、 何とかなりそうだからと様子を見るということで、被害に遭われるというケースも非常に過去にも多いので、まず避難をする。まずは頭を守るとかですね。こうなったらどうするだろう?ということを、ぜひ考えていただくことも備えに繋がるのではないかと思っています。
本田
今日は「梅田防災スクラム」ということで、お子さまも含めて、皆さまに楽しんでいただきながら、防災について気にかけていただく・学んでいただけるよう、「いつものもしもキャラバン」を開催しておりますが、我々の3つ目の大切な目的として、ちょっと上からな感じになってしまうのですが、皆さまの備えのレベルを上げたいと思っています。全く備えをしていない方や意識をされていない方が少しでも今回のイベントをきっかけに、水を1本買う、もし何かあったらこうすべきだなということを考えることに繋がり、無防備な状態で災害に遭うことがなく、何か対応できる状態で少しでも皆さまのお役に立てるように活動を行っています。

今回、URさんとの大きなポイントになってくるのが、コミュニティの大切さだと思います。
実際に、先ほどの動画は福島県の方のお話しでしたが、茨城県の東海村にお話を伺いに行った時も、災害に遭った時にコミュニケーションが取れている町内会さんと、アパートや元々のお住まいの方が少ないエリアで、普段から挨拶や声掛けをしていない町内会とでの比較を伺ったのですが、バーベキュー大会など町内会の催しがあったり、コミュニケーションが取れていた町内会は震災時に食べるものに全く困ることはなく、皆さんが家からガスコンロや食べ物を持ってきたりされていたそうで、常に食べ物があったそうです。
一方、声掛けができていないエリアの町内会では、個人個人では何かを持っていたとしても、協力して煮炊きや炊き出しするということがなかったので、食べ物だけでなくトイレなどにも困ったりしたそうです。
普段から挨拶や声掛けをしていない町内会の方が、食べ物をもらいに行くために、他の人を誘いコミュニケーションが取れている町内会さんを訪れた方もいたそうです。

URさんのように、世帯が集合しているエリアの強みとして、近所の付き合いや声掛け、ちょっとした挨拶を普段から行うことで、震災などが起きた時に、助け合いに繋がることがあると思います。 先ほど熊澤さんのお話の中にもありましたが、いつもお世話になっているおばあちゃんがあそこの部屋に住んでいると、小学生のお子さんがおっしゃったという事例もありましたが、そういった、何かあった時に、いわゆる災害弱者と呼ばれる、持病を持たれている方や足が不自由な方がどこにお住まいになられているのかということに対し、コミュニティを活用することで守ることが出来るということもURさんならではの共助になっていくのではないかと思います。
コミュニティについて、今から町田山崎団地の中継を見ていただいあとにお話ができればと思っています。
松枝
本田さん、ありがとうございます。 まさに団地の強みというか、逆に薄くなっている部分もあるものの、集合住宅であるが故に、声をかけ合うことができる団地も多いのではないかと感じております。 団地を舞台とした、きっかけ作りという部分で、町田山崎の「DANCHI Caravan」の取り組みを実際にご覧いただくため、現地とお繋ぎしたいと思います。