MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
7/14 MUJI×UR トークセッション 「住まいと暮らしのセッションによる豊かさ」

※このレポートは、2024年7月14日(日)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

part3:MUJI×URについて
松枝
暮らしという点で先ほど「ゆるい繋がり」や「住居の中で古いものを生かす」など、MUJI×URと通ずるところが多くあります。
MUJI×URにつきまして、松本からプロジェクトの概要をお話させていただきます。
松本
MUJI HOUSEとURさんが出会い、団地リノベーションがスタートしたのが12年前の2012年です。10年前は今よりも空き家の問題や高齢化について深刻に悩んでいました。
そういった問題に対し、MUJI×URを導入していくことで問題を解決していこうと言うことでプロジェクトがスタートしました。
松本
まず、団地の魅力についてです。多くの団地は、築40・50年経過しているので、設備として古くなってしまっていますが、「古いことは悪い」ではなく、それが「魅力」になるのではないかと考えました。

また、URさんは団地の住戸を約70万戸管理している日本一の大家さんなので、住戸がたくさんあるということは、新しい取り組みがどんどん広がっていく可能性があり、新しい暮らしのスタンダードが作れるのではないかというところも魅力でした。

日当たりや風通しが非常に良く設計がされていて、それも団地の魅力だと思っています。団地のお部屋は細かく間仕切られていることが多いのですが、そういったものを一旦無くし、間仕切りを少なくしていきました。

「こわしすぎず、つくりこみすぎない」をコンセプトにしています。
こちらの資料が当時の団地の内装となりますが、MUJI×URではこのようにリノベーションを施しました。
松本
築40・50年経過しているので、経年変化で木部がきれいな飴色に変わっています。先程もお伝えしましたが、「古いことは悪い」ことではなく、「魅力」と捉え、こういったものを残すことでビンテージ感が出てきます。
ビンテージ感などを好んでくれる、若い方が気に入って住んでもらえたらいいなと思いながら、リノベーションのプランを考えています。
松本
また、無印良品の家具を使い、お部屋を間仕切ることで、間取りを変えていたりします。
団地は和室が多く、フローリングなどで洋室化して行くとマンションのように普通のお部屋になるのですが、そうではなく、和室を残す方が団地としての魅力があるのではないかと考えました。

MUJI HOUSEとURさんで「畳だけど洋室のように使える畳」を開発したら良いのではないかと考え、商品を共同開発しました。
松本
グランフロント大阪のモデルルームにも入っているのですが、通常の畳で使用しているい草ではなく、麻でできた畳を開発しました。
畳を麻にすることにより、和室ですがソファーやベッドを置いたり、洋室のよう使うこともできます。もちろん通常の畳のように床座でも使用することができます。
松本
また、キッチンもURさんと共同で開発をしました。
キッチンには、あえて収納をつくっていません。先程、千里さんもおっしゃっていたように、どうしても賃貸だと決められた規格のものにはまって暮らさないといけないという感じがしてしまうのですが、賃貸でも自由に変えていける余白をつくることで、住む人が自由に変えていける方が良いと考えています。この考えが、新しい賃貸のかたちとなるのではないかと思っています。

収納のないキッチンや押し入れのふすまを外してあえてオープンにすることで、住む人が自由に編集できる余白をつくる、そんなリノベーションを行っています。
松本
例えば、先ほどの押し入れは、資料の右上にあるように押し入れとしての形は残しているのですが、ここをお部屋の延長として使用して良いですし、ハンガーパイプをつけていただき、手前にはカーテンを引いて収納として使用していただくこともできます。
松本
冒頭でもお伝えしましたが、MUJI×URの団地のリノベーションは、2024年までに全国71団地までに広がり、現在リノベーション住戸は約1,200戸以上となりました。 大阪からスタートしたプロジェクトのため、住戸数は大阪が1番多くなっています。

先ほどコミュニケーションのお話がありましたが、共用部もリノベーションをして行こうと、2022年から「団地まるごとリノベーション」という取り組みをスタートしています。
松本
こちらの資料の左上ですが、実は団地には昔プールとして使っていた「プール跡地」があるんです。そういったところを使い、コミュニティスペースとして外のリビングのようなものを造ってみたりしています。

右上は大阪の泉北茶山台二丁団地にある共用空間を、人が集う広場にして行こうとリノベーションを開始しています。
松本
こちらがイベントをしている様子なのですが、元々この場所にはなにもなく、ただ人が通り過ぎて行くだけの場所でした。
まずは人が滞留できるような、ベンチを配置しました。

地面に白い円を引いただけなのですが、なんとなくこの広場の中心感が出て、イベント時に、この円を使いフォークダンスする人が現れたりしています。
大江
団地が好きでMUJI HOUSEに入って、リノベーションの企画を考えたり松本さんはすごい楽しいでしょう。線を引くアイディアは松本さんが考えたんですか?
松本
はい。楽しいです。 線を引くアイディアは僕が出しました。ただ地面に線を引いただけですが、効果的なリノベーションをすることが出来ました。
大江
ニューヨークにコロンビア人のアーティストの作品で、地面にサークルが描かれていて「ハッピーサークル」や「ハグサークル」とか楽しい言葉が書いてあったり、5・4・3・2・1とカウントダウンが書かれていて、ゴールをしたら「ラッキー」と書いてあるアート作品があります。日々の暮らしの中にちょっとほっこりすることができる、そのアートと似ているなと思いました。
松本
ありがとうございます。こちらは横浜にある団地なのですが、集会所のリノベーションがスタートしました。 建設当初は集会所で結婚式をやったりなどもしていたそうなのですが、今はあまり使ってもらえていなかったりします。
大江
集会所は使っている人が決まっていて、新たに参加するのが難しくて「もうええわ」となってしまうイメージがありますが、どうなんでしょうか?
松本
そうですね。もっとたくさんの方に集会所を使っていただきたいので、団地の方だけではなくのその地域住民の方にも、集会所を使用することができても良いのではないかと思っています。
大江
団地に住んでいなくても使用できたらいいですね。
松本
団地の外に対しオープンにすることで、集会所が地域のコミュニティの中心になることができるのではないかと考えています。
大江
外にピアノやパーカッションとか置いてミニコンサートが出来そうですね。みんな座ってビールを飲んだりバーベキューをしたりしながら過ごすのもよさそうです。自由な活動が想像できてすごくいいですね。
松本
ありがとうございます。 こちらは今年の3月にリノベーションが完成した千葉の団地にある商店街です。
松本
シャッターが閉じてしまっている店舗が増えてきてしまい、活性化をしていこうと商店街をリノベーションしました。

建設当時は団地の周辺に買い物ができる場所がなかったので、商店街がないと生活が成り立たない環境だったそうです。商店街に毎日お祭りのように人が賑わっていたそうなのですが、40・50年経つと郊外型の大型スーパーなどが出来てしまい、だんだんとそちらに皆さん買い物に行かれるようになってしまいました。

美容院やお肉屋さんなどは現在も営業していますが、お肉屋さんは小学校に給食で卸していたり、商店街のお店とは別のところで売り上げを立てている状況です。

2代目の方に世代交代をしているお店もあり、「ここで生まれ育ったので、商店街をなんとかしたい」という想いを持っている方もいらっしゃいます。そういった方々と商店街をどうして行きたいのかを話し合うワークショップを行い、ハードにどのように落とし込んで行くのかを決めて行きました。
大江
今だとSNSのライブ配信などを上手く使い、商店街のお店などをシリーズで配信をすることで団地好きが集まって、ムーブメントが起きるかもしれません。
オリジナルのダンスを考えて毎回踊ってみたり、世界中の人が楽しむことができるかもしれませんよね。

建物って箱でもあるわけじゃないですか。
人間は常に動いて変化しているので、出会いがあり、その動いている僕たちが今日出会ってこうやって話している会話の中から生まれてきたアイディアがどんどん発信されていくのも面白いですよね。
松枝
このトークイベントの目的ですが、千里さんのおっしゃるように、一緒に何か次のものを生み出したいという思いもあり開催をしていますので、出てきたいろいろなアイディアを次に活かしたいと考えています。
大江
コンサートをやるんだったら、商店街の真ん中でスポンといなくなって、衣装が変わって給水塔に再登場して、そのまま宙づりで商店街に降りてきて、ピアノの前でバラードやるとか、もうじゅわーってアイディアが出てきます。

今のお話しって、冒険・探検を感じる物語がありますよね。
昔の絵本じゃないけれど、これより先に行ったら危ないよって思うんですが、でもちょっと冒険したくて。何かがこの団地から始まっているような気がして。やっぱりキーステーションですよね。
さっきもおっしゃっていたけれど、可能性が詰まっている。変化を示していけるデバイスだっていうね。
高度成長期のすごろくではないけど、ニュータウンに家族で建売の戸建に移りましたが、 今は希望のニュータウンがオールドタウンになっていますよね。
近所のスーパーで会う鈴木さんのおばちゃんも自分が年を重ねると同じく歳をとっていて。社会全体がそうやって、歳をとった人は歳をとった人で生き方を模索する時代になっているじゃないですか。

この団地のプロジェクトの中から、そういう経験値のある人が求められて、若さのエキスを吸わせてもらって、循環じゃないけどふれあいの場所が出来てくるといいなと感じました。