MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
7/14 MUJI×UR トークセッション 「住まいと暮らしのセッションによる豊かさ」

※このレポートは、2024年7月14日(日)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

part4:住まい方すごろく
長谷川
先ほど「住宅すごろく」とおっしゃっていただいたのですが、実は1973年に新聞に出た住宅すごろくがこちらの資料になります。「住宅すごろく」というワードをお聞きなったことある方いらっしゃいますか?あんまりいらっしゃいませんよね。
長谷川
右下に振り出しと赤ちゃんの絵が書いてあり、真ん中があがりになっています。さきほど千里さんにおっしゃっていただいた郊外一戸建ての住宅が、住宅の最終目的地となっています。
右上の、右から2つ目ぐらいに、公団単身アパートなどもあります。右下から外回りでだんだん中に入って行きます。その上がりの右下の辺りに公団マンションに「当り」と書かれていますが、当時は倍率が高かったこともあり、華々しく書いていただいています。公団なり賃貸住宅は一通過点でしかなく、最終的には郊外の一戸建て住宅が上がりという考えが、1970年頃の高度成長期時代にはありました。
今の時代だと、住宅すごろくの上がりは色々あるのではないかと考えています。
大江
多様になっていますよね。
長谷川
URでは賃貸住宅を展開しているのですが、賃貸住宅も上がりの1つとなれるのではないかという議論をしています。団地に住まわれる方が「着替えるように住み替える」ことをURの賃貸住宅の中で行うことができるのではないかと思っています。
長谷川
例えば、1つの団地やエリアで、結婚から始まって2人住まいだったのが、お子さんができたりして家族が増えていく。50・60代になってお子さんが独り立ちをして、1・2人になって行く。そこを全て賃貸住宅で賄えるという時代がもうすでに来ているのではないかと考えています。
広告などで「保証人なし」と伝えていますが、ちょっと極端な話ですが、もっと簡単に、例えば1ヶ月間住んだら次新しいとこに住むことができるくらい、「着替えるように住み替える」ことが、 あと数年したらできるのではないかと。
大江
日本に住む海外の方も増えているので、意識をオープンにすることでいろいろな人が共用のスペースでいろいろな国の食事を一緒に楽しんでもいいですよね。ナンを焼いてカレーを食べたりお寿司をプレゼントして一緒に食べたりと、そういったことができるようになると楽しいですよね。
長谷川
そうですね。
千里さんがおっしゃっていただいたように、国籍を問わず住んでいただくということにも、今まで以上にどんどんチャレンジしていかないといけないと議論しています。
松枝
住宅についてのお話が出ましたが、今後変わっていったらいいなと思うことを千里さんとお話をしたいと思います。

先ほど集会所について千里さんからもご意見をいただきましたが、住んでいる方が集まって住んだり、地域にオープンにして行くことなどをポイントとした場合のアイディアとして、集会所に大きなシェアキッチンを用意して住戸には最小限のミニキッチンにしてみたり、お風呂も、集会所に大浴場があり住戸にはシャワールームだけにするなど最小限でよいのではないかという意見が、1回目のトークイベントで出ました。

今まで個々で分けなくてはいけないと考えていたことを全て取っ払って、新たな視点でリノベーションを考えてもいいのではないかと話していました。
松本
具体的な例を紹介します。
松本
こちらは東京にあるURさんのベルコリーヌ南大沢団地の集会所をリノベーションした写真となります。ハードとして、 使う方のモチベーションが上がるように、無印良品の店舗のような雰囲気を出しました。
実際に使用してくださっている時の写真が右の写真となります。
大江
いいですね!
長谷川
私は担当ではなかったのですが、写真やMUJI HOUSEさんからお話を伺い、住戸も共用部も使いやすさがとても大切であるのと同時に、この写真のように空間全体がおしゃれだということも大切だと思っています。
先ほど千里さんから紹介していただきました、ウォールアートのインパクト・おしゃれ感と同じように、若い方だけへの訴求ではなくて、50・60代の方も雰囲気がいいから行ってみたい・使ってみたいなと思っていただけることを目指すことも重要だと感じています。 そういったことを踏まえると、「こういった使い方をしたいのでキッチンの流しはこっち向きがいいね」などという議論が出来るようになると、もっと良いと思いながらリノベーションを考えています。
大江
この間、ボストンのホテルに泊まった時に、若い方や宿泊にあんまりお金をかけない方向けに共用スペースが用意されていて、キッチンに中華系の男の子がもやし炒めとか作っていたり、共用の冷蔵庫に残ったもやしを取られないように「ジェイムス」とか名前を書いてきれいにしまっていました。
食事をするところで、若い女の子とかとコーヒーやパンケーキとか、サラダやヨーグルトなどをみんなで食べていて、「バナナいりますか?」とかコミュニケーションが生まれているのとすごく似ていて。長谷川さんがおっしゃっているように、やっぱり「おしゃれ」っていうのは馬鹿にできないですよね。宿泊したボストンのホテルでは「みんなでボストンの遺跡を訪ねにいきます!」と1階に集合してバスツアーも行っていたのですが、若い人ばっかりでした。
みんなが集まるとおしゃれな感じなので、ふつうのバスツアーでも全然違うなと思いました。


ライフイベントをどういう音色・音階でアレンジするかによって全く違って見えてきますよね。 このシェアキッチンの天井は突き抜けていて、木の部分も生かしていて、先ほどおっしゃっていましたが、キッチンでこっち向いて大根刻むか、あっちを向いて刻むかによって全く意味が違いますね。
これはみんな楽しそうでいいですね。
これ、写っているのはエキストラさん?違いますよね?
松本
実際の利用者の方です!
松枝
いろいろとご意見をいただきありがとうございます。
最後に、千里さんにぜひお伺いしたいなというポイントに移りたいと思います。
団地から始まり、日本にお住まいの時も賃貸暮らしをされていたということで、現在のニューヨーク・ブルックリンでの暮らしも含め、家賃、交通や買い物、利便性、広さなどの要素以外に、住居を決める際に大事にされているポイントを教えていただきたいと思います。
大江
そうですね。先ほど「風が抜ける」というキーワードが出ましたが、風が抜けて部屋の空気が変わるのは大切なポイントですね。
やっぱり人って天気が良くなると外に出てきますよね。そうすると、コーヒーがこぼれて「ごめんなさい」みたいな会話が生まれて、空気が動いて変化していく。
それが当然になって、人と人がコミットメントしていくのかなと。

利便性、買い物、交通、家賃などありますが、全部を希望通りにすることは難しいと考えた時に、ちょっと駅から遠い、遠いのだったら暮らし方を変えて、少し早起きをしてバスに乗り継ぐ時間を楽しもうかなとか考えますね。
不便と思っていたことを反転させて、生活の楽しさのアイディアにするのはありだなと僕は思っています。
駅から近いだけじゃなくて、駅から4時間半ぐらいかかって、腰が曲がりながら、もうね。携帯で映画の「砂の器」が2回見れるぐらいの勢いで駅まで行くっていうのも、もしかしたら極端な話あるかもわからへんし。
ってそんなことないわ!だれか止めて!笑
駅までは20分くらいまでが許容範囲ですかね。