MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
8/10 MUJI×UR トークセッション 「うめきたってどうなるの?-今までとこれから-」

※このレポートは、2024年8月10日(土)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

part2:無印良品 グランフロント大阪店舗のコンセプト
坂本
改めまして、無印良品 グランフロント大阪の店長の坂本と申します。本日はよろしくお願いします。
坂本
私は大阪市港区の出身で、今は大阪の南のエリアに住んでいます。
グランフロント大阪の店長になる前は、数十店舗の店長や関西のエリアマネージャーをした後に、本社で店頭販促やオンラインのコミュニケーションのマネージャーを6年間していました。
グランフロント大阪の店舗が、近畿最大の面積で、無印良品の店舗の中で世界的に見ても面積は広く、750坪から1500坪へのリニューアルを行うことが決まり、旗艦店を作る一大プロジェクトに任命され、その時に0からどのようにグランフロント大阪の店舗を考えてつくったのかを本日お話させていただきたいと思います。
坂本
「みんなのライフパーク」がお店のコンセプトとなっていて、住まいに必要な住宅から日々の暮らしに必要な日用品まで全て揃っているお店にしたいと考えました。
先ほど皆さんにご質問をしましたが、MUJI×URの取り組みのことを知らないって方もいらっしゃったり、実は戸建てやリノベーションもやっていることも知られていません。

恐らく無印良品で販売しているバウムやカレー、雑貨は知っているけれど、どこまで商品を展開しているのかは知られていない状況だと思います。
なぜ皆さんに知られていないかというと、無印良品が展開していること全てを体感・体験できる店舗が実はどこにもないということが課題だと思っていました。

東京に行けば銀座など大きな店舗があるのですが、関西圏にはないですし、旗艦店である銀座でも全ての商品を揃えている訳ではありません。ここに行けば全部揃っている・体感できる店舗を作りたいと考えました。
坂本
店舗をつくる時に、3つの役割を考えました。
1つ目は「お客さまにとってどうなのか」です。リニューアルが始まる1年前にグランフロント大阪の店長に着任をしたのですが、店頭に立ちお客さまの声を聞いて分かったことが「売場がわかりづらい」でした。

リニューアル前は今日の会場のあたりにキッチンがあり、その近くに食品の売場を展開していたのですが、まずこの売場にたどり着くことがなかなか難しく、1回店舗の外に出ないと行くことができない動線となっていたため、売場の問い合わせがとても多くなっていました。当時も750坪と大きい店舗でしたが、店舗の空間デザイン性から品揃えが悪かったんです。

ここに来れば全部揃っていると思って来ていただいたのに取り扱いがない商品が多くありました。
その時のお客様のショックの顔やわざわざ来たのにという声があったので、お客さま視点で考えた時に、ここに来れば全部揃っている、ちゃんと売場が分かりやすいようにフロアの構成を考えていきました。

2つ目は「住空間の提案ができる」です。
暮らしは皆さんに平等にあります。ライフステージごとに日々暮らしは変わって行くのですが、どこに行って、誰に相談したら良いのかがよく分かりませんよね。
家を建てるとなった場合は住宅展示場やハウスメーカーに行けばいいですが、リノベーションやリフォームをしたい場合はどこへ行ったらいいのかがわからない。それぞれバラバラのところに相談へ行かないといけないとなってしまうと思うのですが、無印良品は家具から家まで揃っているので、暮らしに必要なものが全て一応揃っているんです。
ということは、無印良品の店舗にいけばそのお客さまに合わせた提案ができます。

例えば、戸建ての住宅展示場に行ったら、リノベーションを勧めてくる人は多分いないと思いますが、無印良品で相談をしていただいたら、それだったらリノベーションもしくはリフォームで大丈夫ですよとか、場合によっては模様替えだけで十分その問題を解決できますよと提案をすることが可能です。本当に0ベースで色々相談できる場所は、これから特に単身の世帯が増えていく中で、とても重要になってきます。
無印良品では住空間事業があるので、店舗にプロがいて、お客様の相談に乗ることができると考えました。

3つ目は「出会いをどれだけつくることができるか」です。
いかにお客さまに店舗の中を歩いてもらうか?滞在してもらうか?という視点だけで考えた過去のマーケティング手法で売場の配置を考えることに違和感があり、スマホでなんでも簡単にモノを購入することができてしまう時代に、お店にゆっくり滞在をしていただくことはとても大切ですが、こちら都合でお客さまに店舗の中を歩かせるのではなく、ちゃんとお客さまが欲しいものを最短で購入することができるようにするなどの工夫を考えました。

また、「出会い」をどれだけ作っていけるかも考えました。この後の話でもあるかもしれませんが、「偶然の出会い」がどんどん減ってきて、「必然的な出会い」が多くなってきた今の時代に、「偶然の出会い」をどれだけ作っていけるかをコミュニケーションから考え、売場を考えました。
坂本
こちらの資料にはテーマが10個並んでいますが、今日お話しをさせて頂くのは、文字に色がついているところになります。まずは、テーマパークのような体感、体験ですが、先ほどお伝えしましたが住宅展示、モデルルームに行くのは敷居が高く、行ったら接客をされるのではないか、勉強をしてから行かないといけないのではないかと思ってしまいますよね。

「暮らし」は、若い方からご年配の方まで、誰にも平等にあります。
気軽に見学ができて自分の理想を考えてもらう。そして理想を実現するための相談ができるようにしたいと思いました。
坂本
日常の暮らしの中にとても大事にしていることが皆さんあると思うので、それを非日常の世界の中で、どう日常を体感、体験できるか?この店舗で何かしらの発見があって、わくわくしていただけるように工夫をしています。

皆さんをはじめにお迎えする2階ですが、衣料品を展開しています。
多くの店舗は、壁面が倉庫になっていて外光が入らないことが多いのですが、グランフロント大阪の店舗は全部の階で外光を採り入れています。衣料品は、外で着るものなので照明よりも外光で見る方がよりリアルな色目を見ることが出来ます。洋服が日に焼けてしまうのを防ぐため、壁面の上や隙間から光が入るようになっています。

3階には、国内で初めて店内で焙煎をしたコーヒーを販売しています。
排煙ができない環境のため、排煙をしなくても良い焙煎機を探し、アメリカから導入をしました。煙は出ないのですが、香りがしっかり出ています。
焙煎したコーヒーを店舗でゆっくり飲んでいただけるようにしています。
こちらについても秘話がたくさんあるのですが、グランフロント大阪の店舗を案内するツアーを定期的に開催していますので、ぜひ参加頂けたらと思います。

店舗で焙煎したコーヒーを楽しめるスペースの他に、香りをフラスコからスポイトのようなものでテイスティングができるようになっていたり、他にも3階ではいろいろと商品を試すことができる環境となっていますので、ぜひ体験してみてください。
坂本
4階は、モデルルームやショールームのような展示を多くしています。今までの無印良品の売場は、どうしても小売の考えで、物からコミュニケーションをしようとしていました。そうなってしまうと、お客さまは必要ないものも買ってしまい、もので溢れていってしまうので、そういうことではなく、必要のないものは買わない、必要なものだけを購入していただく、今あるものは使えるという提案の中でショールームは暮らしからものを見てもらいたいなと思い、8個のテーマで展開をしています。

MUJI×URのモデルルームでは、間取りからしっかりものを見ていただけるようにしています。
無印良品のリノベーションの「MUJI INFILL 0」のモデルルームでは55平米のプランの空間にはどのくらいのものが必要なのかを把握できたり、ものを買わなくても家具などの配置を変えることで生活動線がスムーズになるなど、参考になればと思っています。

本来なら閉店後にショールームで使用している寝具のカバーなどを変えたりするのですが、店舗の営業時間中に「模様替え中」という形で見ていただいて、リアルな模様替えの仕方や家具を組み立てているところも見ていただけますし、模様替えについての質問をスタッフにしていただける、そういった体験もできるようにしています。
坂本
暮らしに関わる専門のプロが、実は無印良品には在籍しています。
シンプル・ナチュラルでいいけれど、無印良品はしっかりしているのかな?と自分がお客さまだったら思ってしまいます。
家も同じで、デザインはかっこいいけれど、住宅について理解した人がいるのかな?家の構造は大丈夫なのかな?と思うのですが、1級建築士の資格を持ったプロが店舗に在籍していたり、家の構造についても実際にご自身の目で見て確認ができるような展示をしていますので、安心してご相談いただければと思います。

4階にあるMUJI×URのモデルルームは神戸市北区にある鈴蘭台第1団地にあるお部屋を再現しています。先ほど松枝さんからもありましたが、新しいものだけに価値があるわけではなく、今まで使用していた柱や鴨居なども、使えるものはそのままに無駄なくちゃんと使う暮らしを、モデルルームの中で感じていただくことができると思います。

その中で無印良品やイデーの家具、ヴィンテージ家具などを置いていますので、そういったものを見ていただければと思います。
坂本
無印良品 グランフロント大阪は、暮らしをテーマにオープンをしました。
今回トークイベントの会場となった「Open MUJI」にも実は秘話があり、リニューアルをする際、このスペースが本当に必要なのかという話もあったのですが、社内でプレゼンをする時には「コミュニティスペース」と伝え「イベントスペース」と言わずに、集会所や社員の休憩所のようなスペースとして使用すると伝えました。

先程もお伝えした「偶然の出会いをどれだけつくることができるのか」が店舗ではとても大事です。
商品を購入しなくてもふらっと来て何かに出会うことができる。それが地域の方やアートだったり、さまざなイベントを開催しています。

ラジオの生放送の配信を行なったり、ミュージシャンの方に来ていただいて暮らしについて語っていただくイベントや、お店が広く、隠れるところがたくさんあるので、お笑い芸人の方に店舗の中に隠れてもらい、営業時間中にかくれんぼをやってみたり、いろいろな形でお客さまに暮らしを見ていただく・体験する場所になるようにイベントも開催しています。
坂本
こちらのOpen MUJIはラジオブース、配信スタジオも設置されています。
偶然の出会いやコミュニケーションをどう伝えていくかを考えたときに、耳から自然と情報が入ってきて、その会話の中からヒントが得られるようにできたらと思いました。
接客されることが苦手な方もいらっしゃると思うので、新商品や開催されているイベントの情報が自然と聞こえてくるっていうのがいいなと思い、店舗内で配信を行なっていますので、楽しんでいただけたら嬉しいです。
松枝
坂本さんありがとうございます。
MUJI×URのモデルルームはこちらの会場と同じ4階にありますので、ご興味がありましたらぜひ体験をしていただけたら嬉しいです。
また、今回のようなトークイベントを、モデルルームの前のスペースでも定期的に開催しています。
松枝
今までのトークイベントでは「防災」をテーマに、無印良品とURさんがお互いに持っている知見やノウハウなどについてお話をさせていただきました。

ここまでは、無印良品とURさんが出会ってからの取り組みについていろいろとご紹介をさせていただきましたが、本日は、住まいでの暮らしをより大きな範囲で俯瞰して、「まち」という視点から見たときに、どのような取り組みを行なっているのか、共通するお話をしたいと思います。

安田さんから、URさんのまちづくり、グランフロント大阪、うめきたについてお話をお願いします。