MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
6/2 MUJI×UR トークセッション 「モデルルームから考える団地の暮らしと収納」

※このレポートは、2024年6月2日(日)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

part2:UR デザイン企画住宅の間取りと収納
松本
では荻野さん、URさんについての説明をよろしくお願いします。
荻野
はい。UR都市機構のお話からさせていただきます。
UR都市機構は、「都市再生」「賃貸住宅」「災害復興」の3本の仕事を柱としております。
本日は、賃貸住宅のお話をさせていただければなと思います。
荻野
UR都市機構の「賃貸住宅」、いわゆる「団地」と呼んだりしますが、こちらの資料の1番右上のように、同じような形の棟が並んでいるようなものであったり、新しい団地はマンションのような見た目をしているものもあります。
数は少ないのですけれども、タワーマンションのような住宅も我々の賃貸住宅としてご案内をさせていただいています。
これらのお部屋は、新築当初から20年近く経過すると、内装や設備機器が古くなってしまうだけでなく、間取りやしつらえが、収納・家具・家電の考え方が変わってきたことにより、使い勝手が悪くなってしまいます。
そういった時間の経過に合わせ、少し問題点や課題が出てしまっているお部屋にデザインを入れたり、間取りを変えたりしてリノベーションをした住宅を、一部ではありますが、皆さまにご紹介させていただいています。
このようなものをデザイン企画住宅と呼んでおります。今日はこのデザイン企画住宅の中から間取りのお話と収納のお話を中心にさせていただければと思っています。
荻野
まず1つ目ですが、「居間心(いまじん)」と呼んでいる企画住宅です。こちらの企画ですが、昭和40年代の3K、43㎡ぐらいのお部屋をリノベーションしたお部屋となっており、主に43㎡の部屋に1人で住んでもらおうということで企画をしました。
荻野
こちらがビフォー・アフターの図面になります。まず、ビフォーの方ですが、少し小さめのキッチンに和室が2つくっついています。図の右側に独立した和室があるお部屋になっています。
荻野
当初はご家族で住んでいただけるようなプランとして考えていたお部屋なのですが、キッチンも手狭なため、団地の中でも積極的に選ばれる方が少ないお部屋になっております。

畳のお部屋・押入れがあって、玄関を入るとすぐ洗面台があります。洗濯機は洗面台の横に置かれているプランです。
荻野
こちらが改修した後の写真になります。
元々キッチンに繋がっていた2つの和室をワンルームとして使っていただくようにプランを考えて作っています。
元々あった押入れの収納は全てふすまを外して、こちらのスペースは収納としてだけでなく、ワークデスクのような感じで使うことができたり、押入れの上の空間を天袋というのですが、こちらはディスプレイとして使用可能なスペースとして使っています。

また、壁に柱をつけたものを「付け柱」というのですが、棚や板を付けることでちょっとした収納としても使えるようにしつらえた企画住戸です。
荻野
他にも独立した和室があるのですが、この企画住宅は1人で住んでいただくことを想定しているため、寝室としての使用は考えず、洗濯兼クローゼット兼収納部屋として使用してもらえるようにしました。
43㎡のお部屋に1人で住んでも、思っているより余裕があるわけではなく、団地は畳のお部屋が多いこともあり、家具の配置に困ったりするんです。
大きな家具を置くよりは、収納部屋を1つ作り、そこを自分の好きなように収納部屋として自由に使用してもらうような考え方で作ったお部屋になっています。

その分、洗面台の横にあった洗濯機のスペースは何もなくなったので広々としています。こちら資料ではグリーンを置いていますが、無印良品のラックを置いていただくこともできます。

実は団地は収納が限られていて、押入れと天袋しかありません。
そのため、自分で収納家具を用意しなくてはいけないのですが、洗面台周りも収納がない中、洗濯機が来てしまうとストックを置くスペースもなくなってしまいます。
ご紹介したようなプランのように、洗濯機置き場を別に用意してあげると、団地ならではの問題点を解決でき、ストックを置くスペースも生まれるので、より暮らしやすくなると思っています。
松本
本当にたまたまなのですが、紹介いただいたお部屋とグランフロント大阪のMUJI×URモデルルームは、ほぼ同じ間取りですね。
荻野
そうですね。MUJI×URでリノベーションしたプランとURで考えたプランで共通している部分も多いですよね。
松本
MUJI×URのモデルルームでは、縦型の洗濯機を想定して、洗面の横に置いています。多分ドラム式は置けないですね。
荻野
ドラム式はサイズが厳しいですね。
松本
洗濯機の排水についてですが、キッチンの排水系統と繋いでいるんですか?
荻野
そうです。
ちょっと技術的なお話になってしまうので深い話は避けますが、キッチンの排水に洗濯機の排水を活用することで、壁を隔ててキッチンの裏に洗濯機を置けるという発見があり、それを生かして、キッチン裏のお部屋に独立したランドリールームができるのではないかと考えました。
松本
リノベーションの設計をするときどのようなことができるのか、可能性をいろいろと考えますよね。
荻野
もう1つ事例を紹介させていただきます。
大阪市都島区にあるリバーサイドしろきた団地と言いまして、淀川のすぐほとりにある団地です。
荻野
古い団地で耐震性の不足があったので、2年前に、耐震改修工事として鉄骨のブレースを入れる工事をしました。 ブレースを入れるため、内装を全部取らないといけないお部屋がかなりの数出てしまいました。そのため、元の間取りにあまりこだわらずに新しくリノベーション住戸を作ることができたので、ご紹介させていただきます。
荻野
こちらがビフォー・アフターの図面なのですが、リバーサイドしろきたは昭和50年代にできた団地でして、この時代はこういった、部屋が田の字型に配置されているような間取りが多いんです。
先ほど紹介した「居間心」の住戸よりもダイニングキッチンは少し広くなっています。
昭和50年代になると、洗濯機が一般化してくるので、水回りスペースに脱衣所があり、そこに洗濯機置場が設置されました。
荻野
脱衣所に接続してトイレとお風呂場があるという、少しずつ現代に近づいた部屋にはなっています。 居室はまだ和室が一般的だったので、フローリングの部屋はダイニングキッチンだけでした。

58㎡ぐらいのお部屋は、今だとゆとりがある1LDKとか2DK・コンパクトな2LDKになるかなと思いまます。
中古のマンションで言うと、43㎡の部屋だと住宅ローン控除の対象外になってしまうのですが、58㎡のお部屋になると、中古で買ってもギリギリ住宅ローン控除の対象になるため、中古マンションを買われる方でも検討するぐらいの部屋の広さとなります。
松本
間取りは今のマンションに近いですね。
荻野
そうですね。
今のマンションとの間取りの違いについてですが、今のマンションの間取りは図の上側、寝室側に玄関と共用廊下があるケースが多いのですが、この年代は、住戸と住戸の間に階段室があり、玄関が部屋の中心あたりにあるのが特徴です。

これらを活かしたプランを1LDKから2LDKまで、4タイプ作りました。
ここで考えたことの1つが、玄関をしっかりと作りこもうということです。昭和40・50年代の団地は玄関周りが狭く、収納があまりないんです。玄関は靴だけを置くための場所となっているため、ちょっと狭いと感じてしまいます。

もう1つがダイニングキッチンと居室は基本的に洋室で作ろうと考えました。そうした方が家具の配置がしやすいですし、皆さんが持っている収納のレイアウトがしやすいのではないかと思いました。
ただ、せっかく1から作るので、お部屋の中に収納のスペースをある程度作ってしまい、大型の収納家具を置かなくてもいいようにしようと考えました。
荻野
リノベーションしたお部屋の一例がこちらです。玄関周りは土間を大きく広げ、趣味の道具などを置くことができるスペースにしました。
荻野
1人暮らし・20~40代独身男性を想定したのですが、収納はオープンなつくりにしました。収納を多く作った事例になります。寝室にもオープンクローゼットをつけ、洋服をかけて置いておくだけの使い方を想定しています。
荻野
水回りは全体のインテリアに合うような雰囲気に仕立てました。
荻野
その他のプランにつきましては、センターキッチンやワークスペースがある住戸なども作りました。他のプランは、基本的には閉じた収納スペースとしています。リビングや寝室は広く取ったので、自由に収納家具はレイアウトしてもらう想定です。
荻野
企画住戸の説明が少し長くなりましたが、古い住戸を新しくするときには、ある程度URの方でも、収納スペースや家具のレイアウトを考えつつ、お客様に自由にしていただく部分を残すことを考えてリノベーションを行い、住宅を供給させていただいています。
松本
ありがとうございます。
内装を全て取り除いたフルスケルトンに近い状態からリノベーションされるのは、URさんでは珍しいですよね?
荻野
はい、珍しいですね。
大阪市都島区に住んでもいいよ!という方だったら、ぜひホームページを見てもらいたいなと思います。
ホームページに空き室情報が出ても、人気があり入居をすぐに決めていただいている状況です。
松本
ありがとうございます。
続きまして、MUJI×URについての説明をしたいと思います。