MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
6/2 MUJI×UR トークセッション 「モデルルームから考える団地の暮らしと収納」

※このレポートは、2024年6月2日(日)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

part3:MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト
松本
MUJI×URのプロジェクトが始まったのが2012年になります。
MUJI HOUSEもURさんも同じく「暮らしのスタンダード」を目指していました。
それ以外にも共通点があり、奇をてらったものを作るのではなく、まずは暮らしのレベルの底上げをしていこうという思いがありました。
このプロジェクトは2024年までに全国71団地までに広がり、現在リノベーション住戸は約1200戸以上、北は北海道から南は福岡まで展開をしています。
プロジェクトを続けてきたことで、確認できたことが3つあります。
松本
1つ目は、若年層のお客さんに選んでいただいているということです。
MUJI×URにお住まいの方の70%が40代以下となるため、若年層のお客さまに選ばれているというのは数字でも出ています。

2つ目は、発信効果が高いことです。TVなどのメディアに取りあげられることも多いため露出が増えていたり、SNSなどでもMUJI×URにお住まいの方に発信をしていただいたりしています。

最後の3つ目ですが、団地との関わり・興味がなかった方が、MUJI×URをきっかけに団地に関心を持っていただけているところです。
松本
団地の魅力につきましても、プロジェクト開始時からずっと発信し続けているのですが、団地は、とても豊かな敷地の中に、ゆとりを持って住戸が建っているので、日当たりもいいし、風通しがとてもいいのが魅力です。
また、50年前に建てられている建物となりますが、「古い」ということをネガティブに捉えず、新しくするべきところはしっかりとリノベーションをしつつも、「古い良さ」を生かした設計をしています。

実はURさんは全国に72万戸の住戸を展開している、日本一の大家さんです。
72万戸の住戸を展開されていることも我々としては非常に魅力でした。MUJI HOUSEとURさんで考えたリノベーション住戸が全国にたくさん展開することができるので、新しい暮らしのスタンダードに繋がっていくだろうと思っています。
荻野
「日当たり」と「風通し」が良いのは、団地が建てられた50年前はエアコンが一般的ではなかったので、自然の風で夏を乗り切るという考え方だったからです。
松本
補足ありがとうございます。
MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトは、全てを壊すのではなく、使えるものは残す、「こわしすぎず、つくりこみすぎない」ことを基本としています。
松本
さらに「生かす」「変える」「自由にできる」という3つのコンセプトを作りました。

「生かす」についてですが、新しい方が良いとされている傾向が強いと思うのですが、若い方にとって、この「古さ」が逆に新鮮に感じられ、魅力になるのではないかと考えました。
フルリノベーションでは「古い良さ」が表現できないので、できる限り今のままの状態を残し、作り込みすぎずにあるものをできる限りそのまま使っています。
松本
例えば、40~50年経ったことで木部がとてもきれいなあめ色に変化した敷居や鴨居などはそのまま残しています。
松本
また、団地のお部屋には押入れがたくさんあるのですが、押入れを全て壊さず、一部残しています。押入れとして、もう1度収納として使うこともできますし、お部屋の延長としても使うことができます。

次に「変える」についてですが、団地のよさをしっかり生かしながらも、変えなくてはいけない部分もありますので、そこは柔軟に変えています。特に水回りなどは現代の暮らしに合うようにしっかり変えています。
松本
例えば、写真にあるように新しく団地に合うキッチンや洗面台をURさんと開発しました。
お風呂も技術的にユニットバス化できる団地では、積極的に変更しています。
松本
変える部分の代表的なものとしてもう1つ、畳があります。
先ほど萩野さんからもお話がありましたが、団地のお部屋には和室が多いです。
URさんの通常の住戸では、い草の畳を入れているのですが、MUJI×URのお部屋には麻でできた「麻畳」を導入しています。
和室を洋室のように使うことができる畳があれば、和室をそのまま残せるのではないかと考え、URさんと共同開発をしました。グランフロント大阪のモデルルームでもご覧いただけます。

最後の「自由にできる」ですが、MUJI×URの場合、なるべく一室空間にすることを意識して設計をしています。賃貸住宅であっても住む方が、自由に間取りを変えていけるように、なるべく作り込みすぎないように設計をしています。
松本
先ほど触れさせていただきましたが、新しい暮らしのスタンダードを目指して、団地の暮らしに合うパーツをURさんと開発し続けています。
団地は和室が多いため、ダンボールでできた「ダンボールふすま」なども開発しています。クラフト地のダンボールの風合いが、MUJI×URの空間になじみが良く、また非常に軽いので間取りを変化させたいときに簡単に取り外すことができます。
松本
実は昨年もたくさんのパーツを開発しました。開発に至る背景やストーリーを大切に作られてたパーツもたくさんあるので、ぜひホームページでご覧いただけると嬉しいです。

そしてMUJI×URでは2022年より、住戸のリノベーションだけではなく、団地の外観や普段あまり使用されなくなった広場、集会所・商店街などの共用部のリノベーションを行う「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」もスタートしました。
団地を拠点とした地域の生活圏の活性化を目指し、コミュニティ活性化も含め、現在は関西と関東の4つの団地で展開しています。

関東では2か所で展開をしており、今年の3月には千葉県にある「花見川団地」の商店街のリノベーションが完成しました。神奈川県の横浜にある「港南台かもめ団地」では、集会所のリノベーションに現在取り組んでいます。

大阪でも現在2つの団地で展開をしていますので紹介させていただきます。 こちらは「泉北茶山台二丁団地」で行っている取り組みです。団地の広場のハードの改修を行い、コミュニティ形成の一貫として、マルシェなどのイベントを開催しています。
松本
こちらもURさんと共同で開発をしたベンチとテーブルを広場に置き、団地にお住まいの皆さんがどのように利用されるのかなどの実証実験を行っています。
地元のキーマンの方や元々地域で活動されている方もお呼びして、改修した広場でイベントを行うことでコミュニティ活動につながるような取り組みをしています。
松本
もう1つが、枚方市内にある「中宮第3団地」での取り組みです。
左側の写真はイベントを行った際のチラシですが、ここに書かれている六角形が繋がったものと同じ形をした「プールの跡地」が団地内にあります。
実は意外と、団地内にプールがあるんですよね。
荻野
プールありますね。
今は水を入れていないところがほとんどです。
松本
プールと言っても、小さいお子さんが遊べるような浅いものです。
荻野
そうですね。
50cmとか、あったとしても膝下ぐらいまでのプールですね。
松本
昔はこどもたちが遊んでいたと思うのですが、だんだん管理するのが難しくなっていったのかなと思っています。
荻野
ちょっと心苦しいところもあるのですが、時代が変わり、水場が社会的に受け入れにくくなっているのかなと思います。
松本
団地にはそういったものがまだまだ残っているので、違う形でコミュニティの場として活用できるのではないかと考え、先ほどの団地と同じくハードの改修とコミュニティ活動の取り組みをしています。

実証実験として、プールの底面全体に人工芝を敷き、屋外リビングのようにして無印良品のクッションなどをおいて自由にゴロゴロしてもらったりしています。
無印良品 グランフロント大阪ではコーヒー豆の焙煎・販売を行っているので、そういった商品を提供したりしています。
白水
先日イベントでコーヒーを皆さんに試飲いただいたと聞きました。
松本
コーヒーを振る舞いながら、木陰の下にもベンチを設置することで、この空間をどのように使ってもらうことができるのか実証実験を行い、繰り返すことでコミュニティの活性化を目指しています。
お近くにお住まいでしたらぜひ、遊びにきてください。

次は白水さん、お願いします。