MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
団地リノベーション完成 ここだけの話 2013

※このレポートは、2013年2月14日に無印良品 難波で行われた、パネルディスカッション式のトークイベントを採録しています。

豊田
いま長谷川さんからお話いただいたように、プロジェクトとして動くにあたって、まず何を大切にするかを考えたわけです。URさんはもう50年以上の歴史を持っていて、今回リノベーションをする団地も築30~40年ほどになりますから、そうした団地の歴史を大切にしたいなと。
リノベーションって、「コンクリート部分だけを残して、あとは壊してしまってつくり直す」という手法はよく見かけるんですが、古いからといって全部壊すのではなくて、もう一度新しい価値観で見直して、いいものは残していこうと考えました。

無印良品の家のWEBサイトでアンケートをとってみたところ、「間取りを変えられるといい」という問に対しての共感度は80%以上でした。これは「無印良品の家」の考え方も同じなのですが、お仕着せの間取りにするのではなく、住んでいる人が自由に編集できるような、自由にできる余地を残すということを大切にした家づくりをしていきたいなと。そんな思いで、設計を開始しました。
実は今回、コストが厳しかったのですが、新しいものをつけるにしても、コストが厳しいからといって安物を使うのではなく、安くていいものを探し出して使うということにこだわりました。

「生かすところ」ですが、まずは鴨居です。
今回は、鴨居、柱などの経年変化をした木の部分をそのまま残しました。年月を経た木の質感には趣(おもむき)がありますし、全体が白いシンプルな空間としましたので、アクセントにもなるかなと。また、自分でカーテンをつけたり、ふすまをつけたりすることもできる“手がかり”にもなっていきます。
豊田
次の「生かすところ」は押し入れです。
ふすまを外して、大きな収納としました。押入れの壁を、室内と同じ白く仕上げて、部屋が広々と見えるようにしました。もし、やはり収納が必要だという場合には、鴨居は残してありますから、カーテンなどで仕切って収納として使うこともできます。仕切りがなければ部屋として使うことができますし、必要であればカーテンで仕切ってクローゼットとして使うことも自由にできるようにしました。
豊田
3つめの「生かすところ」は取っ手です。
これもこのまま生かすことにしました。とてもシンプルで、今の時代は逆にあまり見ないですね。このような端正なかたちは、年月を経ても変わらない普遍的な良さがあります。このように、新しい価値観で見てもいいものは積極的に残しました。
豊田
4つめの「生かすところ」。これはトイレの扉です。
角が丸くなっていて、近未来的なデザインですよね。おそらく当時の設計の方が“遊び”でつくられたんだろうと思うのですが、現在のコスト重視の世界ではなかなかできないんです。これも残したところです。
長谷川
このトイレの扉ですが、UR社内では通称“潜水艦扉”と呼ばれています(笑)。
豊田
この“潜水艦扉”(笑)のガラスも残しました。当時の流行もあったのかもしれませんが、なかなか今では見られないよさがあると思います。