トークイベント「MUJI×URで考える団地の未来」 | MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト | 無印良品の家

MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
トークイベント「MUJI×URで考える団地の未来」

※このレポートは、2017年1月15日に無印良品 グランフロント大阪Open MUJIスペースで行われたトークイベントの模様を採録しています。

川内
共同開発パーツについて
今回のプロジェクトに留まらず、団地の各住戸でも活用していただけるよう、MUJI×URとして様々な共同開発に取り組んでいます。それでは具体的にいくつか紹介していきます。

まずは、持出しキッチン。壁からキッチン台が突き出すようにつくられたもので、下には何もありません。台の下に、お好みのサイズの棚を置いて収納スペースとして使ったり、ゴミ箱を配置したりと、使う方が自由に配置できるようになっています。
川内
また、先ほどご紹介した、組合せキッチンも共同開発したものです。頭上にある露出型のレンジフードもオリジナルデザインになります。

続いて、洗面化粧台です。コの字型の土台に洗面ボールが乗っているだけという、シンプルなデザインにすることで、メンテナンスがしやすいつくりにしています。
川内
同じく水まわりで、今度はお風呂について。ユニットバスではないケースが多く、狭くて使いづらいものも多かったため、スペース的に対応可能なところはユニットバスに変更するようにしています。世間一般的なユニットバスのデザインは、模様や色の付いたものがほとんど。そこで、余計なことはしないという提案の1つとして、私たちは真っ白なユニットバスをデザインしています。
川内
こちらは、麦わらパネル。フローリングを変える時に用います。これまで廃棄されていたわらを、ギュッと樹脂で圧縮してパネルにしたもの。ビスは脳天打ちすることで、打ち所がわかり、汚れたらビスを外して1枚だけ取り換えるということもできるようにしています。こちらも同様に、汚れが染み込みにくいコーティングをしています。
川内
こちらは先程も紹介しましたダンボールふすまです。
川内
実は開発には一苦労ありまして。実施してすぐの頃、1年経つと側面が反り返ってしまうという問題が発生しました。ダンボールは水分を吸いやすいため、日々の暮らしのなかで面する2室の湿度が異なると、反ってしまうことがわかり、即改良。写真は、旧タイプのものです。湿度の異なる2室をつくって、何度も実験をしました。結果、段ボールの素材感を殺さないコーティング方法に辿り着きました。さらに、強度も調整。最終的にはアルミフレームで囲むことで、URさんの規定に適したダンボール襖を開発することができました。

続いて、半透明ふすま。手を添えれば、うっすら透けて見えるような素材感です。“視線を通さず、光を通す襖”として開発しました。一見コストが掛かっていそうに見えますが、実は梱包材などでも使用される半透明のアクリル板を両側面に貼っているだけ。こちらも強度の調整を行いました。どうしても暗くなりがちな玄関まわりに、半透明のふすまを用いることで、玄関も明るくなるという仕掛けです。
川内
プロジェクトの実務実績
これらの共同開発を行いながら、2012年にMUJI×URリノベーションプロジェクトが実現しました。URの長谷川さんと一緒に、当初は「本当に受け入れられるだろうか?」と反響を心配しながら、大阪の22戸でスタート。一斉募集をして、蓋を開けてみると、最大の倍率で19倍に上るほどの人気となりました。

おかげさまで、対象となる団地数も戸数も年々増加。当初掲げた目標である“日本の新しいスタンダードをつくる”という未来も遠くないと感じています。

大阪からはじまり、今では九州から埼玉まで拡大、今後も展開できればと思っています。マスコミへの露出も多く、テレビや雑誌などで多数取り上げていただきました。 2013年度にはグッドデザイン賞をいただきました。リノベーションのデザイン性だけでなく、古いものを活かして、現代の需要と組み合わせるという発想が高く評価されました。

以上、「プロジェクトの概要」でした。ここからは、URの長谷川さんにバトンタッチをさせていただき、団地の現状から生い立ちにも遡って語っていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。