MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
トークイベント「MUJI×URで考える団地の未来」
※このレポートは、2017年1月15日に無印良品 グランフロント大阪Open MUJIスペースで行われたトークイベントの模様を採録しています。
- 長谷川
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はじめての団地暮らし
ここからは、団地暮らしという話にシフトさせていただきたいと思います。先ほど、アーリーから“コンクリートの塊”という言葉があがったと思いますが、こちらの航空写真をご覧いただくと、まさに文字通りの光景です。約60年前につくられている団地で、いわゆる中層階段室型の5階建て。何千戸という住戸が並んだ写真です。
- 長谷川
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URの前身となる日本住宅公団が、約60年前に都市勤労者の住宅不足解消のため次々と団地をつくっていったのですが、その原点にある思いは一体何だったのかという点について、お話していきたいと思います。
まず、着目したいのが「食を通じた人のつながり」です。先ほど川内さんからご説明があったように、ちゃぶ台を囲むスタイルが主流だったかつての日本に、ダイニングキッチンという新しい文化を取り入れ、食を軸にした新たな家づくりを提案しました。
当時の団地は、その生活様式を普及させようと、テーブル付きで住戸を貸し出すこともありました。退去時に持っていかれないようにと、あらかじめテーブルを鎖で固定するといったこともあったといいます。コンパクトな面積の中で、より合理的に住んでいこうという思いから、このような生活スタイルを推進していきました。
- 長谷川
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昭和30年、発足当初の日本住宅公団は、団地生活の定着と発展を進めるため、各団地にヘルパーという相談員を配置していました。困ったときはすぐに駆けつけてくれ、窓口に行けば相談に乗ってくれるのです。それまで日本人は縦に重なって住むという経験が少なく、上下階の隣人に対してどう配慮すれば良いかなどもアドバイスしていたそうです。
他にも集会所や広場を設けるなど、新しいコミュニティの形成を大切にした設計思想が伺えます。当時は、「人間融和」という言葉がつかわれていました。昭和40年代後半になり、住宅の数がそれなりに充足されてくると、大量生産されたものが均質的・画一的などと言われたり、ウルトラマンの怪獣が団地を壊したりするなど、明るい印象が少ない時代もありました。それらの遍歴を辿った団地ですが、ここからは今まさに起きている現在の変化をご紹介できればと思います。
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今、団地では
5年前からMUJI×URでは、団地の良さを見つめながら、住戸の中のリノベーションを川内さんとご一緒に考えてきました。そこで、もう一歩広げて、住宅の外側にも展開できるのではと各所で取り組みを実施していますので、いくつかの事例をご紹介したいと思います。
まず、アーリーが住んでいる新千里東町団地。ここでは、集会場を活用して、UR主催で「パン祭り」を開催しました。1,500個のパンを用意して、Facebookなどで告知をしたところ、10時から16時の開催予定が、開始2時間で売り切れるほどの大盛況となりました。
- 長谷川
- 続いて、千里青山台団地で開催された「住人祭」。自治会さん主体で、無印良品さんとURも少しサポートをしながら、桜の開花時期にピンクの風船をあしらって、一足早い春の訪れを感じるようなイベントとなりました。
- 長谷川
- また、「伊東豊雄 × UR みんなの庭 in 青山台」という企画も開催。団地の屋外をみんなで使えたらいいねという声から、建築家の伊東豊雄さんとURがコラボして企画。住人さんと共に小さな庭をつくり、その後は自主運営していくような仕組みができればと、現在取り組んでいるところです。丸いレンガの花壇をつくって、ハーブの収穫などを楽しみました。
- 長谷川
- さらにBBQコーナーもつくりました。通常のURではBBQは禁止されているので、かなり特殊な事例ではありますが、住人さんとご一緒に、新しい挑戦も進めています。
- 長谷川
- 大正区にある千島団地では「TAISHO★UP」というイベントを開催。大正区さん・壁紙屋本舗さん・URがコラボして、DIYの拠点を団地につくろうというもので、イベント当日は団地内が雑貨村のような雰囲気になっていました。また同日、ライブペイントを実施、壁紙屋本舗さんの商品を見られるスペースや、DIY工具が使用できる工房、DIYブロガーさんのつくったモデルルームを設置するなど、自分らしい暮らしが実現できるという団地の新たな印象を届けていきました。
- 長谷川
- 続いて、箕面粟生第三団地。あまり使用率の高くない集会所に工具を常設して、DIY工房をつくりました。せっかくつくるならDIY工房そのものも自分たちでつくろうと、URの若い衆が集まって、工房づくりを行いました。
- 長谷川
- こちら、森之宮団地。耐震補強のため、壁に大きな鉄骨ブレスを入れることになり、住宅として使用できなくなった部屋がありました。もともとこの団地はカラオケクラブの活動が活発だったため、防音ルームをつくり、住人たちで使える音楽スタジオとして活用することに。今では、この部屋の利用率が非常に高く、想定していたカラオケクラブの方々の利用だけでなく、若い方が楽器演奏の練習場としても活用してくださるようになりました。
- 長谷川
- さらに、ママさんやキッズにも優しい集会所の使い方ができればということで、泉北城山台二丁団地では、ママとお子さんたちがDIYしてみんなで楽しめる空間をつくりました。
- 長谷川
- 先ほど、団地の中ではBBQができないという話をしましたが、当然ながら通常は焚火をすることもできません。しかし東京の町田山崎団地では、防災訓練の一環として、団地内で焚火や炊き出し、テント泊などを経験する「団地キャンプ」という企画が実施されました。こちら「わたしの備え。いつものもしも」というものも、無印良品さんと連携したものです。今後、関西でもこういった活動ができればと考えています。